2011年4月1日金曜日

東広島大学で入試問題漏洩


東広島大学で入試問題漏洩



『英語狂育通信 2011年4月1日号』




今回の災害で被害を受けた方々、そして今なお被害を受け続ける方々に心からのお見舞いを申し上げる。『英語狂育通信』偏執部も我々で何ができるのかを真摯に検討したが、復旧・復興に関しての特殊技能を有しない我々としては、義援金を送ることと我々の仕事である英語狂育に一層励むことが最も日本のためになると考えた。

こういった見解のもとに仕事をしている我々に届いた一報は東広島大学の入試問題がネット上に漏洩した問題である。現在、こういった問題は原発や災害報道に埋もれがちであるが、英語狂育界の番犬を誇る本誌はこの問題を看過せず、渦中の東広島大学への取材を敢行した。

以下は同大学で狂務部長を担当する柳瀬妖介殉教授(英語狂育学博士)へのインタビューである。




偏執部(以下、偏): ネット上に東広島大学の入試問題が漏洩したと言われています。

柳瀬妖介(以下、妖):残念ながらその通りです。しかし、ネット上に流れていたのは来年2月実施を予定していたものであり、試験当日までは十分に時間がありますから、新たに問題を作成し、セキュリティを強化して粛々と実施しますのでどうぞご安心ください。漏洩がなぜ、また、いかにして起こったのかは現在調査中ですので現時点ではこれ以上のコメントは控えさせてください。

: はい。むしろ私たちもその他の問題、つまりは試験問題の内容について主にお伺いしたいと思ってここに来ました。入試問題を拝見するに、そのほとんどは日本語で答案を書かせる問題ですね。

: まったくその通りです。これは私たちの明確な方針です。

: しかし新しい学習指導要領では英語の授業は基本的に英語で行うことを基本方針としています。来年2月の受験生は違いますが、今後、新指導要領で学ぶ受験生にもそのような入試問題を出すつもりですか。

: 当然です。現在の文武省は尊皇攘夷の志士を排してしまい、欧化主義にかぶれた者の巣窟となっております。

: 少し言葉遣いに時代錯誤があるような気がするのですが・・・

: 英語という言葉の通用性が高いのはわかりますが、毛唐の言葉にそこまで肩入れするとは侫臣の企みとしか考えられず・・・

: ちょっと言葉に気をつけられた方がいいかと思います。

: 我が国の言葉を粗末にする輩の非道をこれ以上に許すことは、わが祖国の国体を揺るがす一大事。私も今回の災害で目が覚めました。自衛隊・消防庁・警察庁などの防人が国土と国民の生命を守るのなら、我々言語狂師は日本語を守らなくてはならないのです!

今回の国難に際して元自衛官の方のご尊顔を拝見せんとウェブを彷徨ううちに、私は「チャンネル桜」にまで辿り着きお話を伺うことができました。嘆くべきは、これまで「チャンネル桜」と聞けば敬遠していた我見の狭隘さ、そして民を導くべき社会の木鐸を売文稼業に貶めてしまったAERAの醜態。嗚呼、日本ノ戦後トハ一体何ダッタノデセウカ!

: ああ、よくある英語かぶれから愛国主義者への転身、ハンパ左翼系の右傾化ですね。わかりやすい人だなぁ。でも急に変わると行き過ぎちゃって、後で引込みがつかなくなるので気をつけた方がいいですよ・・・って、聞いてます?

: オーイオイオイオイ、オーイオイオイオイ(号泣)

:あーあ、安全な所にいる人に限って、こうしてすぐに泣いちゃうんだから。あ、ほらハナ出てますよ。これで拭いて。

: (チーン)

: ほらほら、山岡鉄舟を尊敬しているんでしょう。笑われますよ。

: はっ、鉄舟先生、お師匠様!

: あーあ、椅子の上に正座して柏手打っちゃったよ。・・・って拝んでいる写真は西郷隆盛だよ、山岡鉄舟の写真はあっちでしょ。

: (耳を貸さずに)失礼(キリッ)。つい憂国の思いにかられて落涙しまいました。で、ご質問とは英語の入試で、日本語で答案を書かせることについてでしたな。

:(立ち直り早いなぁ)はい。でも偏執部で議論になったのは、日本語を書かせることではないんです。私たちもある程度は妥当だと思っています。

: ててててて、えっ、何ですか。ごめんなさい、足崩しますね。

: (もう足が痺れちゃったのね)。私たちが問いたいのは設問の仕方です。貴学の入試問題では、通常見られるような「下線部の英文を日本語に訳しなさい」ではありません。設問は「下線部の英文を見て適当に思いつくことを書きなさい」です。ちょっとこれはイイカゲンすぎませんか?

: はっ!戯けたことを。現実を見ないタテマエですな。いいですか、現在の多くの受験生はセンター試験対策だけで手一杯です。英語を読むということは、四つの選択肢の中からどれが正解っぽいかを、問題文ではなく選択肢を読んで選ぶということだけなんですよ。そんな狂育しか受けていない受験生に、英語を正しく訳しなさいといっても、できるわけないでしょう。少なくとも私が教えている学生にそんなことができる者はいない!

: いばるところじゃないと思うんですけど・・・。でも四択でも選択肢まですべて英語にすれば、純粋な英語力を測れるのではありませんか?

: わからない人ですね。いくら試験の問題文と選択肢をすべて英語にしようが、与えられたものの中から一つを選ぶだけでは、受身的で、意欲ももたずに「正解」ばかり探そうとする小物しか育たんわけです。

そうするとあなた方は「それでは英語を読ませて、それについて英語で論述させる試験を出しましょう」とおっしゃるかもしれない。確かにそれなら一見よさそうだ。しかし実際に受験生の解答を見てみると、本文の英語表現を切り貼りしただけです。これはウィキペディアの切り貼りレポートの予行練習ですか?

: いいでしょう。じゃあ次の設問についてお尋ねします。これはもっとひどい。設問は、「下線部の英文を読んで何か面白いことを書きなさい」ですよ。

: これもまた現実を知らない机上の空論ですな。いいですか、英語狂師ならば、生徒・学生の生み出す訳の日本語に頭をかかえていることは周知の通りです。覚えている訳語を、彼らなりの文法理解で機械的に当てはめているだけですから、日本語になってないんですよ。無茶苦茶な日本語を書いているわけです。美しい日本語を駄目にしておるわけです。嗚呼、大楠公ガ此レヲ知ラバ・・・

: あの・・・

: 失礼。私たちは、日本語を大切にする英語狂師として、日本語を破壊するような英文和訳が許せんわけです。しかし昨今の受験生の英語力は低く、どうしても機械的な英文和訳しかできない。それならば「英文を読んで何か面白いことを書きなさい」と促した方が受験生はもっと自由に創造的に知性を発揮できます。そもそもメディア生態学の観点からの21世紀というのは・・・

: あ、英語狂育以外のご高説はまた別の機会に。

: そうですか。残念。しかしですな、のびのびと書かせれば、受験生も変な日本語は書かんもんなんです。英語を読ませて「思いついたこと」や「何か面白いこと」をのびのびと日本語で書かせることが、今、最も現実的な入試問題なんです。

: わかりました。そういうことにしておきましょう。最後に、英作文問題についてお尋ねさせてください。入試問題では一問だけ英作文がありますね。

: そうです。いかに日本語が大切とはいえ英語は英語。私たちはそういった事の理を曲げるつもりなど毛頭ありません。

: しかしですね、英作文の問題は「もしあなたがこの大学に入学したら保護者の方はいくら寄付金を払えますか?英語で書いてください。(例 "Twenty million yen.)"ですよ。ちょっとあんまりだ。

: また現実を知らない戯けた小言ですな。いいですか、ビジネスで最も大切なのは究極のところお金なんですよ。小切手を切るときも、金額はアラビア数字ではなく、きちんと綴りで書かないといけないことはご存知ですよね。本学はそこまで見通して入試問題を出しています。グローバリゼーションの先端でがんばっているわけです。

: ちょっと待ってください。設問には続きがあって「どうしても綴りがわからなければ普通の数字でも書いていいです。(例、50,000,000 yen)」とまで書いてありますよ。しかもどさくさに紛れて金額まで上げている。まさか寄付金の大小で合格判定をしているのではないでしょうね。

: 失礼なことを言いなさんな!もちろん、金額が多い方から合格させているに決まっているじゃありませんか。本人が馬鹿なら親が財産でなんとかするというのが、世の常ですよ。そうでなければどうしてブッシュ大統領がイェール大学に入れますか。古今東西の世の常を行い、どうして批判される筋合いがありますか!サンダル教授の講義をあなたは聞かなかったのか!

: 「サンデル」です。

: 話をそらすのではない!そもそもなぜ日本人は下駄や草履を履かなくなったのだ・・・ああ失われた日本の身体操法よ・・・

: もうこれっきりにしたいと思います。ありがとうございました。

: オーイオイオイオイ、オーイオイオイオイ(号泣)










1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

筒井康隆みたいです。