以下に、私なりに要点をまとめます。
(1) 現在の20ミリシーベルト/年は、子ども向けの国際基準・国際標準(1~20ミリシーベルト/年)の最大値である。
(2) その甘い(危険な)日本政府基準の3.6マイクロシーベルト/時 (年ではありません)を超える放射線量が測定された中学校に対して、文部科学省は屋外制限をかけていない理由は「その測定値は地上50センチのものであり、中学生は背が高いので1m時点の値で決めているから」。
(3) この(2)の文部科学省答弁には、さすがの原子力安全委員会でさえ、「そのような話は聞いていない」としたので委員会は紛糾。
(4) 空間線量ばかりを問題にしている文部科学省は、文部科学大臣が「土壌放射能の吸引による体内被曝の影響は軽微」と答弁。
(5) この(4)の文部科学大臣答弁に対しても、原子力安全委員会は「決して軽微とは考えていない」とし、文部科学大臣は答弁不能になった。
以下に、上記の論点の基となる資料(国会議員ブログ)の文章を引用します。ただし、太字強調は私が加えたものです。
馳浩議員は、今回の福島の放射線量限度量が、子どもにとっては国際基準・国際標準であると最大値であることを明らかにしました。
「子どもたちを、安全な環境で遊ばせてやりたい!」という飯舘町の広瀬教育長の声をもとに、
「では、子どもの年間安全被ばく限度量は、どの程度に設定したか?」
と質問。
すると、こたえは、
「緊急時には、大人も子供も20~100ミリシーベルトの間」だった。
「国際基準と国際標準はどうなのか?」と、再質問すると、
「1~20ミリシーベルトの間」と、答弁された合田局長。
ん?
だったら1ミリシーベルトに設定するのが、政治じゃないのか?
http://www.hasenet.org/の4/27日記
宮本たけし議員は、この「20ミリシーベルト/年」を子どもに適用していいのかという論点を踏まえた上で、文部科学省の調査が極めてずさんで、原子力安全委員会も反論せざるを得なかったことを報告しています。
ところがその4月14日時点の調査結果を見ていると極めて不審な点があるのです。例えばこの調査で「福島市立福島第三小学校」は高さ1m地点で3.6マイクロシーベルト/時、高さ50cm時点で3.9マイクロシーベルト/時で「屋外活動の制限」を受けています。
ところが、その表の一つ上にある「福島市立福島第一中学校」は、1mで3.7マイクロシーベルト/時、50cmで4.1マイクロシーベルト/時と、いずれも第三小学校を上回っているにもかかわらず「屋外活動の制限」を受けていないのです。
なぜかと問えば、小学生と中学生では身長差があるためだというのです。つまり中学生は背が高いので1m時点の値で決める、そこが3.8以下なら、高さ50cmのところで基準を大きく超える4.1マイクロシーベルト/時の放射線が検出されていてもお構いなしということです。
「これ以上は絶対に被ばくしてはいけない」という線量限度を基準にしておきながら、こんなずさんなやり方は許されません。私の問いに、文科省の基準に了承を与えたはずの原子力安全委員会でさえ、「そのような話は聞いていない」と答弁したものですから委員会は紛糾。
しかも文科省が空間線量ばかりを問題にして、土壌放射能を無視していることを取り上げ、たとえば半減期が30年と非常に長いセシウム137でも19の学校・園で土壌放射能が5000ベクレルを超えていることを示し、これをなぜ考慮しないのかと迫りました。
文科大臣の答弁は、「土壌放射能の吸引による体内被曝の影響は軽微」などというもの。ところが、これも原子力安全委員会は「決して軽微とは考えていない」と答弁し、大臣は答弁不能に陥りました。結果として委員会は、たびたび中断。こと子どもたちの健康に関して、こんなでたらめは絶対に許されません。
http://www.miyamoto-net.net/column2/diary/1303894341.html
下村博文議員も、基準値の設定に対しての政府側の「根拠なき楽観的答弁」を戒めています。
児童生徒の年間被ばく許容量が20ミリシーベルトを下回る、例えば10ミリシーベルトともし変更し基準を変えたら、超える地域は大幅に増加するだろう。
危険か危険でないかは、基準値の設定しだいだ。だからこそ文科省は国民から恣意的と不信感を持たれない説明が必要だが、残念ながら明確な答弁でなかった。
政務三役はもっと勉強してほしい。根拠なき楽観的答弁が多すぎる。国民にいらぬ不安感をあおらないためにも、科学的客観的数字に基づいた説明が必要なのだ。
http://hakubun.jp/2011/04/%E6%96%87%E9%83%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%81%AE%E8%B3%AA%E7%96%91%EF%BC%8D%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E9%87%8F%E3%81%AE%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%AB%E3%81%A4/
河井克行議員は、被爆地広島の経験を踏まえ、厚生労働委員会で鋭い質問を重ねています(議事録はこちら)。ブログでは以下のように見解を述べています。
外国政府やメディアから福島第一原発事故に関する日本政府の情報公開と取るべき対策についての不安が募っています。今回の事故は、もはや日本だけでなく、世界の問題になりつつあるのに、正確な情報が発信されていないという不安は不信に変わりつつあります。
(中略)
自国民すら納得させることができない菅内閣が、外国の人々や政府を「日本は安全だ」と説得できるはずがない。いまのままでは、日本の農林水産物や訪日観光だけでなく、工業製品、サービス、いや日本という国そのものに対する「信頼」を毀損してしまいます。先人が長い年月をかけ、汗と涙を流して営々と積み重ねてきた日本への信用が壊されてしまうのです。
こうしている毎日も絶えず放射能が漏れ続けている福島第一原発事故。“収束へ向かっている”などとはとても言えない厳しい状況が続きます。現場の関係者の犠牲的・献身的な努力に為政者たちは報いているのでしょうか。
http://ameblo.jp/katsuyuki-kawai/entry-10840772633.html
原口一博議員はTwitterで以下のように訴えています。
子どもや妊婦を放射能の被害から守るために枝野さんと話しをしました。片山さんや細野さんにも同趣旨の話しをしました。政府が20msvの基準を変えるよう強く要請しました。
http://twitter.com/#!/kharaguchi/status/63755384434855936
命をまもるために皆様にRTのお願いがあります。20msvなどの放射能防護基準を即刻、見直すよう皆様の地域から選ばれた国会議員に働きかけてください。
http://twitter.com/#!/kharaguchi/status/63757528248483840
以上の国会議員への連絡先は以下の通りです。
福島の子どもを放射線から守るために活躍している馳浩議員(石川県選挙区)の国会事務所電話は03-3581-5111 内線5081、金沢事務所電話は076-239-1919 http://www.hasenet.org/
福島の子どもを放射線から守るために活躍している宮本たけし議員(大阪選挙区)の大阪事務所電話は06-6768-7371 http://www.miyamoto-net.net/index.html
福島の子どもを放射線から守るために活躍している下村博文議員(東京11区)の国会事務所電話は03-3508-7084、板橋事務所電話は03-5995-4491 http://hakubun.jp/
福島の子どもを放射線から守るために活躍している河井克行議員(広島三区)@katsukawaiの国会事務所電話は03-3581-5111(内線71208)、広島事務所電話は082-832-7301 http://kawai.fine.to/katsu/
福島の子どもを放射線から守るために活躍している原口一博議員(佐賀一区)@kharaguchi の東京事務所電話は03-3508-7238、佐賀事務所電話は0952‐32‐2321 http://www.haraguti.com/
この他にも福島の子どもを守り、日本という国の尊厳を守るために活躍している議員もいらっしゃると思います。もしご存知でしたら私にお知らせください。
※2011/05/01の国会で、森ゆうこ議員が、鋭い追及をしていました。
追記 (2011/04/29)
この記事を書いた直後に以下のニュースが飛び込んできました(太字強調は私がつけました)。
小佐古・内閣参与が辞任 政権の原発対応遅れ批判
内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授(放射線安全学)は29日、福島第1原発事故をめぐり「政府はその場限りの対応で事態収束を遅らせた」と批判し、菅直人首相に参与を辞任する意向を伝えた。小佐古氏は3月16日に就任。原発施設と放射線をめぐり首相への助言を求められていた。
政府の原発事故対応への不満が顕在化した。首相が「知恵袋」として活用するため起用した参与が抗議の辞任をするのは、極めて異例だ。
小佐古氏は29日夕、国会内で記者会見し、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による測定結果の公表遅れを批判した。
同時に、福島県内の小学校校庭などに累積した放射性物質に関し、文部科学省が示した被ばく線量基準は「国際的にも非常識で受け入れがたい」と見直しを求めた。
2011/04/29 19:39 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011042901000682.html
追記 2 (2011/04/29)
武田邦彦氏はブログで以下の見解を表明しています。ぜひ下のURLをクリックして全文をお読みください。
郡山市は市長の決断で、市内の小学校の校庭の表土を除き、子供達がすこしでも被ばくしないようにと努力した。
その結果、表土を除く前には1時間あたり3ミリシーベルトもあったのに、それが0.6ミリシーベルトに減った.
子供達にとっては素晴らしいことだ.
これが小学校ばかりではなく福島県の全部に行き渡れば、
「汚れた福島」
から
「綺麗な福島」
への転換ができる。素晴らしいことだ。
・・・・・・・・・
でも、これに対して文科省の大臣が、
「3ミリシーベルトで安全なのだから、余計なことをするな」
と言った。
http://news.livedoor.com/article/detail/5527031/
追記 3 (2011/04/29)
新聞各紙が、小佐古氏が、福島の学校での放射線量限度について、どのように伝えたか(あるいは伝えなかったか)を以下に掲載します。
毎日新聞
[小佐古敏荘・東京大教授(放射線安全学)は、]特に小中学校などの屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトに決めたことに「容認すれば学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と異論を唱えた。
http://mainichi.jp/select/today/news/20110430k0000m010073000c.html
読売新聞
小佐古氏はまた、学校の放射線基準を、年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を小学生らに求めることは、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と述べた。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110429-OYT1T00571.htm?from=tw
共同通信は、学校の放射線量限度についてはふれず、
小佐古氏は29日夕、国会内で記者会見し、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による測定結果の公表遅れを問題視。原発作業員の緊急時被ばく線量限度を年100ミリシーベルトから年250ミリシーベルトに急きょ引き上げたことに触れ「もぐらたたき的、場当たり的な政策決定を官邸と行政機関が取り、手続きを無視している」と指摘した。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2011042901000681/1.htm
と述べているだけですが、他紙には掲載されていない小佐古氏の写真を「首相官邸に参与を辞任する意向を伝え、記者会見で涙ぐむ小佐古敏荘・内閣官房参与=29日夕、衆院第1議員会館」というキャプション入りで掲載しています。
※申し訳ありません、毎日新聞も写真を掲載し「辞任会見で、涙ぐみ絶句する小佐古敏荘氏」というキャプションをつけていました! (2011/04/29 23:47)
ちなみに朝日新聞は以下だけです。全文掲載します。福島の学校についての小佐古氏の発言を一つも取り上げていません。
内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授(放射線安全学)が29日、東京・永田町で記者会見を開き、内閣官房参与を辞任する意向を表明した。理由について小佐古氏は、原発事故対応への提言について「いろいろと官邸に申し入れてきたが、受け入れられなかった」などと語った。
小佐古氏は会見に先立ち、首相官邸を訪ねて辞表を提出した。同氏は東日本大震災発生後の3月16日、原発事故について菅政権から助言を求められて参与に就任。首相は3月末までに小佐古氏ら計6人の原子力専門家らを次々に内閣官房参与に任命した。
http://www.asahi.com/politics/update/0429/TKY201104290314.html
正直、私は今回の原発人災で朝日新聞の報道体制にかなり疑問を抱くようになりました(上のような報道姿勢はこれまで何度も見られました)。
私は子ども時代は、親が朝日新聞を購読していたので、無自覚にしばらくは朝日新聞を購読していましたが、20歳代後半頃に、朝日新聞の独善性というか上から目線が嫌になり、購読を止めました。今回感じているのは、朝日新聞は体制べったりでありながら、体制批判的なポーズを取ろうとする偽善的で狡猾なところがあるのではないかということです。体制べったりであるなら、堂々とそのように振舞えば、それはそれで一つの姿勢だと私は思うのですが・・・
よく朝日新聞を、「本の広告が充実しているから」という理由で購読し続けている人がいますが、最近は各出版社がメールマガジンなどを出していますから、別段、朝日新聞を購読せずとも、出版情報は潤沢に得られます。
※今(2011/04/29 23:52)上記の朝日新聞ホームページを見たら、以下の部分が付け加えられていました。私がさきほどこの記事を書いた時には、記事の全文引用をしましたから、書き加えられたのは明らかです(さすがに証拠画像までは取っていませんでしたが)。
新聞というのは、こうして横並びになってゆくのかなぁ。
(ちなみに産経新聞は記事はそのままです。他紙は都合の悪いウェブ記事はすぐに削除するが、産経はきちんとそのまま掲載し続けると聞いたことがありますが、やはりそうなのかもしれません。そのあたりの筋の通し方については、産経新聞を高く評価します。)
会見では特に、小学校などの校庭利用で文部科学省が採用した放射線の年間被曝(ひばく)量20ミリシーベルトという屋外活動制限基準を強く批判。「とんでもなく高い数値であり、容認したら私の学者生命は終わり。自分の子どもをそんな目に遭わせるのは絶対に嫌だ」と訴えた。「通常の放射線防護基準に近い年間1ミリシーベルトで運用すべきだ」とも述べた。
また産経新聞も以下の通りです。(私は産経新聞の主張には少し違和感を覚えることも多いのですが、気骨ある新聞と思っていたので、残念です)。
小佐古敏荘(こさことしそう)内閣官房参与(東京大大学院教授)が29日、官邸を訪ね菅直人首相宛に辞表を提出した。小佐古氏は29日夕記者会見し、菅政権の福島第1原発事故への取り組みについて「その場限りの対応で、事態の収束を遅らせた」と批判した。
小佐古氏は「(自らの)提言の一部は実現したが対策が講じられていないのもある。正しい対策の実施がなされるよう望む。国際常識のある原子力安全行政の復活を強く求める」との見解を報道陣に配布した。
小佐古氏は放射線安全学の専門家で、3月16日、参与に起用された。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110429/plc11042919200015-n1.htm
追記4 (2011/05/02)
既報ですが、記録のためNHK科学文化部が、小佐古氏の会見の全文書き起こしを公開しておりますので、ここでもお知らせしておきます。
NHK科学文化部には感謝しますが、結局各紙報道よりも、会見の忠実な書き起こしのほうがありがたい、というのは複雑な思いです。公共放送は主要会見の動画と書き起こしをウェブで公開し、一次情報を国民に知らせつつ、各種メディアはそれぞれに要約と分析を競いあうというのが健全なやり方だと私は考えます。(独立動画メディアはNHKが追わないような各種会見などを動画公開し報道することに独自性を見いだせると考えます。
追記5 (2011/05/02)
江川紹子氏が、放射線防護学の本間俊充氏も、20mSv/年案に反対していたことを明らかにしています。これが事実だとすると原子力安全委員会は相当にひどいことをやっていることになります。
4月28日の午後、私は前夜の記者会見で、廣瀬研吉内閣府参与(原子力安全委員会担当)から、この値を支持した人の1人として名前が挙がった本間俊充氏((独)日本原子力研究開発機構安全研究センター研究主席・放射線防護学)に確認の電話を入れてみた。すると、本間氏の答えは意外なものだった。
「私は(緊急事態応急対策調査委員として)原子力安全委員会に詰めていたんですが、(子どもについても)20mSv/年が適切か、ということに関しては、私は『適切でない』と申し上げたんです」
http://fpaj.jp/news/archives/2749
追記 6 (2011/05/02)
朝日新聞の批判を続けましたので、公平を期すために、きちんとジャーナリズムを貫徹しようとしているように思える朝日新聞記者の一例を紹介します。
神田大介氏は個人でもTwitterを使用し(@kanda_daisuke )、所属する名古屋報道センター調査報道班としても自身の名前と同僚の渡辺周氏の名前を掲載した上でTwitterを使用しています(@asahi_chousa )。
私は神田氏のtweetを読んで、5月2日の朝日新聞はコンビニで買い、当該記事を読みました。この記事はネット公開されていませんので、内容紹介は控えますが、きちんと取材した記事だったように思います。
私も上記2アカウントにtweetしたら、きちんと返事もしていただけました。
たかだだ一部150円の新聞を買っただけで、偉そうにするつもりもありませんが(笑)、マスメディアとは「第四の権力」(Fourth Estate)とも呼ばれるものですから、一人ひとりの国民は、マスメディア報道を鵜呑みにするのではなく、健全な緊張関係を保つべきだと考えます。
ちなみに"Fourth Estate"についてWikipediaは次のように説明しています(以下の引用は、冒頭部分のみ)
The concept of the Fourth Estate (or fourth estate) is a societal or political force or institution whose influence is not consistently or officially recognized. It now most commonly refers to the news media; especially print journalism. Thomas Carlyle attributed the origin of the term to Edmund Burke, who used it in a parliamentary debate in 1787 on the opening up of press reporting of the House of Commons of the United Kingdom.[1] Earlier writers have applied the term to lawyers, to the queen of England (acting as a free agent, independent of the king), and to the proletariat.
http://en.wikipedia.org/wiki/Fourth_Estate
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東日本大震災:被災地への義援金の主な受け付窓口(毎日新聞によるまとめ)
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