2011年4月28日木曜日

福島の子どもと教師のために、今、県外の教師ができること ― 政府の放射線量基準は「最も厳しい(安全寄りの)数値」なのかそれとも最も甘い(危険な)数値なのか

■今、福島の教師のことを考える

今、福島の教師、特に第一原発に近い地域の教師は大変な毎日を送っていると思います。子どもも保護者も放射能に怯えているでしょう。なかには怯えを否定する人もいるかもしれませんが、それが心底からの安心から来ているのか、それとも不安を直視してしまうとどうしようもないから思考停止しているのかは、よくわかりません。そんな中、福島の教師は毎日の授業を行っています。

「避難指令がでない限り大丈夫だから、安心してね」と心から言えればいいでしょうけど、そんな教師ばかりではないでしょう。かといって「政府は信じられません。今からみんなで県外脱出しましょう」などとはとても言えません。教師自身迷いながらも、子どもの前では毅然とした態度を保たなければなりません。



■少しだけ「現代国語」の問題にお付き合い下さい。

今、福島県外の教師は、そんな福島の教師のために何ができるのでしょう。

それを考えるために、ここで少しだけ次の「問題」を解いていただけませんでしょうか。問題文は首相官邸ホームページからです。




国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線から人や環境を守る仕組みを、専門家の立場で勧告する国際学術組織です。ICRPは、人が受ける放射線(被ばく)を、1.計画的に管理できる平常時(計画被ばく状況)/2.事故や核テロなどの非常事態(緊急時被ばく状況)/3.事故後の回復や復旧の時期等(現存被ばく状況)---の3つの状況に分けて、防護の基準を定めています。

(中略)

万一事故や核テロにより大量の放射性物質が環境に漏れるような非常事態が起こった場合には、緊急時被ばく状況として、《重大な身体的障害を防ぐ》ことに主眼をおいて対応します。

このため、上記の線量限度は適用せず、一般人の場合で年間20~100ミリシーベルトの間に目安線量(参考レベル)を定め、それ以下に被ばくを抑えるように防護活動を実施します(*4)。

(中略)

その後、回復・復旧の時期に入ると、住民の防護目安は、緊急時の目安線量よりは低く平常時の線量限度よりは高い、年間1~20 ミリシーベルトの間に設定することもあります。

(中略)

*4. 今回の福島での事故に当たり、日本の原子力安全委員会は、このICRPの定める緊急時被ばく状況の国際的な目安の中から、最も厳しい(安全寄りの)数値=年間20ミリシーベルトを基準に選び、政府はそれに従って避難等の対策を決定した。

http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g5.html
※上の太字強調部分は、原文では下線で強調されているものです。



つまり、首相官邸(注1)は、現在の福島は「事故や核テロなどの非常事態」であると考えているわけです。ですから、政府(原子力安全委員会)が定めた20ミリシーベルトは「最も厳しい(安全寄りの)数値」なわけです。20~100ミリシーベルトの範囲のうち、一番安全な数値を福島の子どもを含んだ人々のために選んでくれたわけです。


しかし、もしあなたが、現在の福島は「事故や核テロなどの非常事態」というより「事故後の回復や復旧の時期等」と考えるなら全く異なる結論に到達します。「事故後の回復や復旧の時期等」の放射線量は年間1~20 ミリシーベルトの間に設定することが国際放射線防護委員会(ICRP)の基準だからです。

つまりもし今、福島が「事故後の回復や復旧の時期等」にあるとすれば、政府(原子力安全委員会)は、年間1~20 ミリシーベルトの中で「最も甘い(危険な)数値」である20ミリシーベルトを福島の人々のために基準設定していることになります。

福島の人々の中に被曝の影響を受けやすい子どもがいることは言うまでもないことです。

さあ、考えてみてください。



今の福島は(今は2011/04/28になったばかりです)、
「事故や核テロなどの非常事態」にあるのですか、
それとも「事故後の回復や復旧の時期等」のですか?





■福島の教師の代わりにあなたが声をあげてください

専門家には専門家の解釈があるのでしょう。しかしこれは国民の生命にかかわる問題です。それに、「事故や核テロなどの非常事態」や「事故後の回復や復旧の時期等」といった言葉が、一般市民の解釈を許さない厳密に科学的に定義された専門用語だとも思えません。市民は、今の福島がどちらの状態にあるかの意見を表明する権利はあるでしょう。

しかし、今、福島で子どもを預かる教師は、少なくとも子どもの前では、これに関して率直に意見を表明することができません。

それなら県外のあなたが声をあげてくれませんか?

声を上げれば、いくら政府(原子力安全委員会)が上のような見解をもっていても、郡山市のように独自の行動を起こすこともできます(注2)(注3)。いや、政府の見解すらひっくりかえすことも可能なはずです(ご存知でした、日本は民主主義国家で、主権は国民に由来し、その責任も国民に帰趨するということを)。


もしあなたが今の福島は「事故や核テロなどの非常事態」にあるのだと考えるなら、福島の子どもたちや教師に「大丈夫だ。政府を信じて、今を乗り切ろう」と励ましてください。

しかしもしあなたが今の福島は「事故後の回復や復旧の時期等」にあるのだとしたら行動を起こしてください。



■行動、でもどんな行動?


行動の方法に関しては、昔から脱原発であった河野太郎氏が、政治家としての自分自身の経験を踏まえて、こう助言しています。


デモやファックスもいいけど、
あなたの地域の国会議員に電話してください。
一番いいのは議員事務所を訪問することです。



河野太郎氏の言葉を読んでください。河野氏は、事故の賠償金を国民の電力料金を引き上げてまかなうという、政府の東京電力救済案について反対する方法を書いていますが、この方法は放射線量でも何でも使えます。


地元の国会議員に皆さんの意見をきちんと伝えてください。

どうやって?

あなたは、あなたの選挙区で選出された国会議員がだれか知っていますか。知らなければ調べましょう。衆議院議員と参議院議員がいるはずです。

誰かわかったら、その議員のホームページで、事務所がどこにあるかを調べてください。場所がわかったら、訪ねていきましょう。遠慮することはありません。そのための事務所です。

今、通常国会が開かれていますから、国会議員は平日は国会にいることが多いので、地元の事務所に行くならば、平日なら月曜日か金曜日が狙い目です。

議員がいなくともかまいません。地元の秘書さんにしっかりと、救済されるべきは被災者であって東電ではない。東電が支払うべき賠償金を全国の国民の電力料金を引き上げて、国民に負担させるのは筋違いであると指摘して、現在報道されている政府の案に、議員がはっきりと反対の声を上げることを求めてください。そして、このことを議員に伝えるだけでなく、この件に関する議員の考えをこちらに伝えてほしいとお願いしてください。

具体的に議員がどう動いてくれるのか、それも教えていただきましょう。

事務所が遠かったりして、訪ねて行きにくいならば、電話をしましょう。電話に出てくれた相手の名前をうかがって、同じことを伝えましょう。電話ならば、一週間後にかけ直すので、それまでに議員の考えを聞いておいてくださいとお願いしましょう。

メールやFAXもありますが、やはり、訪問したり電話をしたりしたほうが、皆さんの考えをしっかりと伝えることができます。

よく、署名活動はどうでしょうかと聞かれます。集めた署名をどうするのでしょうか。

国会への請願という手段もありますが、個々の議員には請願は伝わりません。しかもたいていの場合、委員会で保留ということにされて、文字通りお蔵入りです。努力の割に効果がありません。

デモはどうでしょうか。こういう活動をこれから始めるぞという勢いづけにはいいかもしれません。もし百万人が集まって、東電を救済するな、被災者を助けろとデモができれば、意味があると思います。

五十万人ならば? たぶん。十万人ならば? たぶん。どこでやるのが効果的か考えましょう。

しかし、やっぱり効果的なのは、国会議員それぞれに、大勢の皆さんがきちんとそれぞれのおもいを伝えることです。

リビアと違って、政府軍が銃撃してくることはありません。北朝鮮みたいにそのままどこかに連れて行かれて行方不明になることもありません。

声を上げますか、それとも泣き寝入りですか。

http://www.taro.org/2011/04/post-987.php




■Twitterでデモができます。

「いや、私は昼間は仕事で、そんな時間は取れない」とおっしゃるなら、Twitterを使ってください。誰でも無料で簡単にアカウントを作れます。Twitterで路上のデモより俊敏なデモがウェブ上でできます。

「自分の身元が知れるのが怖い」とお考えなら ―ちなみに福島の人々はもっと怖い思いをしていると思いますが、それはさておき― 匿名の(別)アカウントを作ってください。

そして大切なのは、Twitterでは「つぶやく」ことなんてしないこと。鳥のようにtweetしてください。つまり鳥が他の鳥に向かって大空でさえずるように、他人に向けて語ってください。一人でつぶやいて愚痴っても仕方がない。

@マークを使ってください。Twitterのアカウントは@につづく一連のアルファベット記号で表されます。この問題の当事者の@マーク(Twitterアカウント)をつけて語ってください。そうすればまず必ずその当事者は読みます。首相官邸(@Kantei_Saigai)でもよし、文部科学省(@mextjapan )でもよし、国会議員でもよし、とにかく影響力のありそうな組織・個人に直接@マークをつけてtweetしてください。あなたの声を直接届けてください。

くわえて# (ハッシュタグ)も有効利用してください。前の文字から半角だけスペースを空けて(全角スペースでは駄目)、#以下に一連のアルファベット記号をつければ、検索がとても簡単になります。例えば#genpatsuとすれば、あなたのTwitter画面ではその文字が青くなります。そこをクリックするだけで、同じハッシュタグ(つまりは同じ興味関心をもった人)のtweetを見ることが出来ます。

よいハッシュタグを見つけるには、Twitterの上の検索窓に適当な検索語(あるいは@マークのTwitterアカウントから@マークを除いたアルファベット記号)を入れて検索してください。たくさんのtweetsが見られます。その中にはきっとよさそうなハッシュタグがあるはずですから、それを有効活用してください。

そしてよさそうなtweetは積極的にretweet (RT)してください。下にある記号をクリックすればそのままRTされます(「公式リツイート」と呼ばれています)。あるいはそのtweet本文をそのままコピーし、その本文の前にその人の@マークのTwitterアカウントをつけてtweetしてください。そうすれば公式リツイートと違って、あなたのアイコンがついて明確にあなたという人格がその意見に賛同していることを示すことができます。

「そんなに発言やRTなどをしたら、友達の前で格好悪いし、僕のフォロアーが減るかもしれない」というなら ―福島には福島の、福島県外には福島県外の悩みがあるものです― 先程も言いましたが、ぜひ匿名別アカウントを作ってそこで活動してください。ハッシュタグやRTであなたの仲間は増えるはずです。

いや、仲間がいようがいまいが、味方が増えようが敵が増えようが、あなたが正しいと思うことを行ってください。


今発言したくてもできない福島の教師のために。

福島の子どものために。

そして、あなた自身の魂のために。





(注1) この文章は、(社)日本アイソトープ協会 常務理事の佐々木康人氏(前 放射線医学総合研究所 理事長)によって書かれたものですが、この重大な局面で首相官邸ホームページに掲載されたものですから、この文章は首相官邸(および原子力委員会)の見解を表すものと考えていいでしょう。


(注2)

郡山市は以下のような独自の行動を起こしました。


郡山市の小中など28ヵ所 校庭表土を近く除去

 福島県郡山市は25日、福島第1原発事故で市内の小中学校の校庭と保育所の庭から比較的高い放射線量が測定されたとして、一部の学校、保育所の庭の表土を除去すると発表した。国の基準で屋外活動を制限された市内の教育機関は小学校1校にとどまるが、保護者の不安に配慮して市独自で除去を決めた。福島県で初の取り組みになる。
 対象は小学校9校と中学校6校、保育所13カ所。小中学校の計15校は今月上旬に県が実施した測定で、地上1センチ付近の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上だった。保育所は条件を厳しく設定して毎時3.0マイクロシーベルト以上だった施設を対象とした。私立学校や民間の幼稚園、保育園も要望があれば対象に加える。
 除去は重機や手作業で校庭の表土1~2センチをはぎ取る。取り除いた土は市の埋め立て処分場に運搬し、処理する。数日中に作業を始め、5月中旬までに終える。当面の費用は約5000万円。民間の学校を含めて1億円程度を見込んでいる。
 栗山邦城副市長は「放射線量が屋外活動を制限された学校と数値が近い学校があり、保護者が不安に思っている。表土除去によって放射線量を9割取り除けると聞いている」と話した。
 文部科学省は19日、教育機関の屋外活動について、年間の積算放射線量20ミリシーベルトを目安に基準値を算定し、それを上回った県内13校の活動を制限した。その後の再調査で基準を下回った4校の制限を22日に解除している。

河北新報
2011年04月26日火曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/04/20110426t61015.htm



(注3)
しかし、(注2)のような処置をとっても、以下のような問題も生じます。いかに原発事故が、複合的で手に負えない問題を生み出すかを示しています。


校庭表土除去の処分予定地、住民から不満相次ぐ

福島県郡山市は27日、福島第一原発事故で放射線量の数値が高かった小中学校の校庭などから除去した表土の処分予定地の住民に対し、緊急説明会を開いた。

 市内にある予定地の住民からは「事前に説明がなかった」などと不満の声が相次いだ。

 約100人の住民に対し、市幹部は「子供たちが安心して屋外活動を行えるようにするため」などと理由を説明。住民からは「住民の同意を得ていない」「子供はここにもいる」「ここは原発処理場ではない」などと反発の声が出た。市側は「単なる土と考え、事後説明になって申し訳ない」と謝罪し、説明会を再度開く考えを示した。

(2011年4月27日22時37分 読売新聞)






追記 2011/04/28

このブログを書いた後、Twitterで以下のブログを知りました。最初の部分だけ引用します。あとはせめてご自分で下のURLをクリックしてください。


私たち教員は、立場上、大きな声で「子どもを学校に通わせるな」とか「校庭を使わせるな」ということは言えません。なぜなら、国が「年間20ミリシーベルトまでなら子どもが被爆しても大丈夫」と公言してしまったからです。長崎大学や広島大学の教授までもが「外で遊んでも大丈夫」という声明を出していて、そういった資料が私たち教員にも配布されているので、それに基づいて動かなくてはならないのです。でも、校庭の植え込みやや水たまりなどでは、かなり高い数値の放射線量が計測されています。とても、「安全です」と言える状況ではないのです。本当は、「この地を離れて!」と子どもたちに言いたい。でも、公に言うことはできません。せめて新学期の再開を遅らせてくれれば……と願っていたのですが、それもかないませんでした。なんとかしたいけど、何もできない――。教員たちの多くは、罪悪感を抱えながら子どもたちと接しているのです。

http://newenergy-hideinu.blogspot.com/2011/04/twitter.html?spref=tw





必要物資・支援要求マップ 311HELP.com







0 件のコメント: