「クラスルームの言葉」
「原則授業オール英語」はなし 高校指導要領解説、必要なら日本語OK
2009.12.25 11:19
文部科学省は [2009年12月] 25日、平成25年に実施する高校新学習指導要領の英語解説書も公表した。新指導要領は「授業は英語で行うことを基本とする」としたが、解説書は「必要に応じて日本語で授業することも考えられる」と記述。文科省は必ずしも授業全部で英語を使うという意味ではないと説明した。
(後略)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/091225/edc0912251121006-n1.htm
そうですね。
ちっとも知らなかった(汗)。
新しい学習指導要領の高等学校学習指導要領解説は、
の
からダウンロードできます。
外国語は2010 (平成22) 年1月29日に更新されていますが、今それにざっと目を通したら、確かにその解説43ページには次のようにあります。
「授業は英語で行うことを基本とする」こととは,教師が授業を英語で行うとともに,生徒も授業の中でできるだけ多く英語を使用することにより,英語による言語活動を行うことを授業の中心とすることである。これは,生徒が,授業の中で,英語に触れたり英語でコミュニケーションを行ったりする機会を充実するとともに,生徒が,英語を英語のまま理解したり表現したりすることに慣れるような指導の充実を図ることを目的としている。
英語に関する各科目の「特質」は,言語に関する技能そのものの習得を目的としていることである。しかし,このような技能の習得のために必要となる,英語を使用する機会は,我が国の生徒の日常生活において非常に限られている。これらのことを踏まえれば,英語に関する各科目の授業においては,訳読や和文英訳,文法指導が中心とならないよう留意し,生徒が英語に触れるとともに,英語でコミュニケーションを行う機会を充実することが必要である。
授業においては,教師は,指導内容の説明,生徒が行う言語活動の指示や手本の提示を行い,生徒の理解や活動が円滑に進むように手助けをした上で,生徒の活動を励ましたり講評を行ったりしている。授業を英語で行う際は,これらの
指導を英語で行うことになる。簡単な指示のみを英語で行うのではなく,例えば,説明や生徒の理解の手助けを行う際も,英文の内容を簡単な英文で言い換えるなどすることにより,授業を英語で行うよう努めることが重要である。
英語による言語活動を行うことを授業の中心とするためには,読む活動においては,生徒が,生徒の理解の程度に応じた英語で書かれた文章を多く読み,訳読によらず,概要や要点をとらえるような言語活動をできるだけ多く取り入れて
いくことが重要である。また,書く活動においては,読んだ英文を英語で要約したり,推敲を繰り返しながら主題に沿って文章を書いたりする言語活動をできるだけ多く取り入れていくことが重要である。和文英訳を行う場合も,伝えたい内容を十分整理し,知っている語や表現を用いて,工夫して書くような活動として行うことが重要である。さらに,外国語科や各科目の指導計画全体の中においては,読む活動や書く活動に加え,聞く活動や話す活動もバランスよく取り入れることが必要である。
この文章に引き続いて、43ページの最後の一行から44ページには次のようにあります。
英語に関する各科目を指導するに当たって,文法について説明することに偏っていた場合は,その在り方を改め,授業において,コミュニケーションを体験する言語活動を多く取り入れていく必要がある。そもそも文法は,3のイに示しているとおり,英語で行う言語活動と効果的に関連付けて指導するよう配慮することとなっている。これらのことを踏まえ,言語活動を行うことが授業の中心となっていれば,文法の説明などは日本語を交えて行うことも考えられる。
「生徒の理解の程度に応じた英語」で授業を行うためには,語句の選択,発話の速さなどについて,十分配慮することが必要である。特に,生徒の英語によるコミュニケーション能力に懸念がある場合は,教師は,生徒の理解の状況を把握するように努めながら,簡単な英語を用いてゆっくり話すこと等に十分配慮することとなる。教師の説明や指示を理解できていない生徒がいて,日本語を交えた指導を行う場合であっても,授業を英語で行うことを基本とするという本規定の趣旨を踏まえ,生徒が英語の使用に慣れるような指導の充実を図ることが重要である。
このように,本規定は,生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業を英語で行うことの重要性を強調するものである。しかし,授業のすべてを必ず英語で行わなければならないということを意味するものではない。英語による言語活動を行うことが授業の中心となっていれば,必要に応じて,日本語を交えて授業を行うことも考えられるものである。
なるほど、
「しかし,授業のすべてを必ず英語で行わなければならないということを意味するものではない。英語による言語活動を行うことが授業の中心となっていれば,必要に応じて,日本語を交えて授業を行うことも考えられるものである。」
というのが、「授業は英語で行うことを基本とする」の真意なわけですね。
かくして世の中は円滑にまわるのね (笑)。
かくして世の中は円滑にまわるのね (笑)。
ああ、美しい。
上記に続き、解説の44ページには以下の文章があります。
なお,音声で行うコミュニケーションと文字を用いて行うコミュニケーションでは,指導の重点も変わりうる。音声で行うコミュニケーションにおいては,限られた時間の中で,意味の伝達を行うことが重要であり,生徒が,流れを大切にして発話したり会話したりするよう指導する必要がある。このため,教師は,生徒がコミュニケーションを積極的に行おうとする態度を損なわないよう配慮しつつ,意味が伝わらないおそれがあるものは正しく言い換えるといった指導を行うことが考えられる。一方,文字で行うコミュニケーションでは,正確さや適切さが一層重要となる。このため,生徒が書いた英語に誤りや曖昧さがあった場合は,それを正確で適切なものとするよう,文法や語彙を運用する能力を高めながら,きめ細かな指導を行うことが考えられる。
追記2
ちなみにTom Gally先生の『Web英語青年』ブログ 「ことばのくも」には、上の他にも面白い記事がたくさんあります。
英語教育というか、外国語教育は、肝心なことはきっちり議論せずに百年一日のように同じ議論を繰り返しているのね。新しいことばかり追いかけるのではなくて、良質の古いものをきっちりと読んだ方が学問的なんでしょうね、きっと。
【広告】 学習指導要領やその解説がいくら変わっても古びない『リフレクティブな英語教育をめざして』ををぜひお読み下さい(笑)。
2 件のコメント:
江利川春雄先生は、『英語教育』3月号のp.93で上記文言を文科省の「軌道修正」としておられます。
よしやすさん、
情報提供ありがとうございました。
私は実は3月号はまだ読んでいませんでした(←オメ、本当に業界人か!?)。反省。
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