概念理解の難しい事柄をなんとかこなす方法の一つに、とにかく丸ごと親しんでしまうというものがある。多くの用例に親しむうちに、なんとなくその理屈が帰納的に体得してしまうというわけである。理屈優先の考え方だと「そんな馬鹿な」となるかもしれないが、私たちは日常生活でこのような習熟と理解をしていることも多い。
「英語教育にもの申す」で有名な組田幸一郎先生が作ったのは、高校入試レベルの英単語をフレーズで覚えようというものです。
フレーズで覚えるというのはどういうことかということを、この本は次のどちらが簡単ですかと問いかけることで説明しています。
8つの単語を覚えてください
・本
・想像する
・耕す
・見る
・将来
・読む
・畑
・テレビ
4つのフレーズを覚えてください
・本を読む
・将来を想像する
・畑を耕す
・テレビを見る
もちろんこの理屈で言うなら、フレーズで覚えるよりはセンテンスで覚える方が効率的だとなるかもしれませんが、センテンスはしばしば低学力の生徒の手に負えません。そのような無理を試みるよりも、フレーズを楽に覚えて、結果的に単語とその組み合わせ方の基礎を学ばせようというのがこの本の狙いかと思います。
実際に本を読み、付属のCDを聞いてみると、細かな配慮がたくさんあってさすがだなと思わされます。赤いシートで日本語や発音(わかりやすくカタカナで表記。発音記号は索引に掲載)を隠すのは当然として、フレーズを(1)名詞+名詞、(2)形容詞+名詞、(3)動詞+名詞、(4)熟語にわけるところ、英語 + 日本語訳 x 10フレーズ → 英語 x 10フレーズというCDの音声配列、各ページに描かれた動物の絵でわかる進度、復習の英→日、日→英テスト、ディクテーション、「英文読解道場」のコンパクトな解説と練習、箸休めのような名言とことわざの掲載など、さすがに学習者の心理をよくわかった教師の作品だなと感心してしまいます。
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