サンデル教授風に言うならこうなります。
社会を危機から救うために、仕事から引退した世代の市民が明らかに危険な仕事に志願するプロジェクトを作った。
「若い人にこのような事はさせられない。志願してくる60歳以上の有志を募る。若い人にはこのプロジェクトを応援してほしい」
あなたはこのプロジェクトをどう考えるか。60歳以上のあなたはどう考え、どう行動するか。若いあなたはどう考え、どう行動するか。
しかしこれは空想上の問題ではありません。
引退した技術者である山田恭暉氏が、実際に行動しているプロジェクトです。
詳しくは上記サイトをご覧頂きたいのですが、要旨は次のとおりです。
最悪のシナリオを避けるためには、どのような設備を作ることが必要か、放射能汚染を減らすためにどうしたらよいか、などなど、数多くの技術的課題があることはもちろんです。この点についても日本の最高の頭脳を結集した体制ができていないことは大きな問題です。
さらにもう一方では、最終的に汚染された環境下での設備建設・保守・運転のためには、数千人の訓練された有能な作業者を用意することが必要です。現在のような下請け・孫請けによる場当たり的な作業員集めで、数分間の仕事をして戻ってくるというようなことでできる仕事ではありません。
身体の面でも生活の面でも最も放射能被曝の害が少なくて済み、しかもこれまで現場での作業や技術の能力を蓄積してきた退役者たちが力を振り絞って、次の世代に負の遺産を残さないために働くことができるのではないでしょうか。
まず、私たち自身がこの仕事を担当する意志のあることを表明し、長期にわたる国の体制として退役した元技能者・技術者のボランティアによる行動隊を作ることを提案し要求していきたいと思います。
当面次のことを提案します。
1. この行動隊に参加していただける方を募集します。
原則として60歳以上、現場作業に耐える体力・経験を有すること
2. この行動隊を作ることに賛同し、応援していただける方を募集します。
これらの方々は、以下の内容をご記入いただきE-mail、FAXあるいは郵便でお送りください。
なお、このプロジェクトは直接的には国会や政府に対する働きかけと、広く人々にこの行動隊が必要であることを訴えることを活動の中心とします。状況が流動的なこともあり、進展に応じて様々な面への活動を広げていくこともありうると考えます。
また、この提案文を多くの方に転送していただくことをお願いします。
2011年4月
山田恭暉
134-0083 東京都江戸川区中葛西5-11-25-707
電話&FAX 03-5659-3063 携帯電話 090-3210-9056
メール bouhatsusoshi@aj.wakwak.com
□福島原発暴発阻止行動隊に参加します
□福島原発暴発阻止行動隊に賛同し応援します
ご氏名
ご住所 〒
お電話
FAX
携帯電話
メールアドレス
http://park10.wakwak.com/~bouhatsusoshi/
この提言は、何より現実的な問題です。もし、このプロジェクトに賛同するなら、今すぐ行動してください。
行動にはいろいろ考えられます。
・このプロジェクトについてツイッターやブログで紹介する。
・このプロジェクトを友人や知り合いに教え、これについて考え議論し、できる行動を起こす。
・山田恭暉氏をツイッターでフォローし、応援・支援する(@officeyam )
・以上に述べられているように、このプロジェクトに実際に参加するか、(後方支援的に)賛同し応援する。(下のインタビューで明らかにされているように、元技術者でなくても参加できます)。
・その他、考えられる様々なこと。
(私は、このブログの公開と共に、上記へ自分の氏名・住所などを告知して、正式にこのプロジェクトに賛同し応援します。理由は、私が年齢を重ねた時に、山田恭暉氏のような人間になりたいからです)
この提唱者の山田恭暉氏と賛同者を、フリージャーナリストの岩上安身氏が約1時間半にわたってインタビューしました(注)。
見ればすぐわかるように、とにかく淡々と語っています。自分を英雄視するような陶酔感などまったくありません(むしろその反対の極地です)。感情の高ぶりも90分間を通してまったくありません。
以下は私なりにまとめた発言の要旨です。
山田恭暉氏
●福島第一原発は、ロボットなどの機械だけでは、きちんとした復旧工事はできないことが技術屋の経験からわかる。
●放射線量被害のことを考えるなら、もう子どもを産まなくてすみ、細胞分裂も少なくなり個体への影響が比較的少ない我々世代がこの復旧工事に携わることがもっとも合理的。また私たちには必要な(あるいは関連した)技術・経験ももっている。
●私一人の力では、実際の復旧工事に参加すらできないから、このプロジェクトを立ち上げた。
●このプロジェクトは、国家プロジェクトにしなければならない。冷却作業は10年間は必要。そのためには予算も必要で、作業員の顔も見える形できちんと行うべきだ。
●悲壮感といったものはない。当たり前のことをやろうとしている。
●あることが正しいと信じたならば、それを行うだけだ。言葉に行動を伴わせているだけだ。
●異なる世代の人は、異なるように反応していただきたい。
●現場に行ってみたら怖くなるかもしれない。そこで止める人がいても責めない。
●できるだけの安全装備もつけて作業に臨みたい。このプロジェクトは「決死隊」や「特攻隊」といったものではない。生命を捨てることではなく、事態を収拾させることが目的。
●自己犠牲とは考えていない。理の当然のことを理の当然として行うわけで、これが技術屋。
●人間相手の戦争ではないので、この戦いに赴くことになんのためらいもない。
●しかしこの原発事故は、天災でなく、人災である。この事に対する思いはある。
●こういった作業には、人々の精神的な支援(心のつながり・支え合い)が必須。現時点で復旧作業している人々に、市民からの充分な精神的な支援が届いているか心配。
●報酬などはまったく目的でない。報酬を目的にすると、このような仕事はできない。
●このプロジェクトはとにかく事態を収拾することに集中する。原発継続や原発中止、脱原発などの話はしない。そのような議論は後でやる。
●政府や東電と対立しては、このプロジェクトは成功しない。政府とも東電とも協力体制を組みたい。
平井吉夫氏
●私は技術者ではないので(元々の本職は翻訳家)現地で後方的な支援をする。
●「世のため、人のため、国のため」とかいうより、「義侠心」。武道家(合気道指導者)ですから「義侠心」という言葉が大切です。
●この年齢になると、死への恐怖は、若い時とは変わっているので、若い時ほどの恐怖はない。
●若い自衛隊員を決死隊にしてはいけない。
佐々木さん
●通訳業を生業としていた。原子力関係の通訳もやった。
●このような志願に男性も女性もない(佐々木さんは女性)。
●若い人が身体を蝕んでゆくのを見るのは許せない。
●自分の世代は戦争責任を直接に問われなかったが、原発に関しては私たちの世代に責任がある。私たちが私たちの手で何かをしなくてはならない。
福島第一原発の復旧作業は今この瞬間も行われています。危険な作業で、実際に重度の被曝者も生じました。
しかし、政府やメディアは、この方々を ― 日本だけでなく、世界に対してもかけがえのない仕事をしている方々を ― 顔も名前もない存在にしています。
上のインタビューで私は知ったのですが、チェルノブイリ事故の時には作業に従事する現場の方々の顔はメディアで報道されました。その作業員の方々の少なからずは後遺症に苦しむことになったかと思いますが、少なくともその方々の顔を社会は直視しました。
ここからは私個人の考えですが、日本政府も、大手マスコミも、私たち市民も、このやらなければならない仕事を私たちの代わりにやっている方々を直視し、そういった方々について思考することを放棄していませんでしょうか。あるいは「日給○○万円」といった風説で、この仕事を金銭の問題に変えてしまっていませんでしょうか。
私見では、このプロジェクトは次のような倫理的な問題、社会・国家に関する問題を呈しています。
個人の利害・生命を越えた行為はあるのか。
社会・国家のための自己犠牲的な行為を、社会・国家はどう考え、処するべきか。
せめて、このプロジェクトのことについて考えてはみて下さいませんか?
そして何かを考えたら、それを言葉にして、行動にしてください。
(注)
このインタビューを行った岩上安身さんとIWJはツイッターをやっています。
岩上安身さん @iwakamiyasumi
IWJ @iwakami_staff
岩上安身さんは、この件に限らず、今回の震災について大手マスコミが伝えないすぐれた報道をしています。岩上さんはフリージャーナリストで、大組織の後ろ盾などなしに報道活動を行っています。ホームページは以下です。ぜひご覧になり、このジャーナリズムを支援したいなら、ぜひ金銭でも支援してください。(私は数週間前に寄付をしましたが、週明けにももう一度寄付をしようと思います)。
岩上安身オフィシャルサイト
http://iwakamiyasumi.com/
サポーター登録(無料)
http://iwakamiyasumi.com/archives/5652
寄付(カンパ)
http://iwakamiyasumi.com/archives/3338
追記
このプロジェクトに関する英語での紹介記事も書きました。下記URLをクリックしてください。
A veteran engineer calls for volunteers from other senior citizens for the repair of the Fukushima nuclear plants
http://yosukeyanase.blogspot.com/2011/05/veteran-engineers-call-for-volunteers.html
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