2009年10月26日月曜日

城田真琴 (2009) 『今さら聞けないクラウドの常識・非常識』洋泉社新書

1990年代後半からのインターネットは本当に情報革命を加速させている続けていると思えます。

「クラウドコンピューティング」(cloud computing)は、「Web.2.0」などと同じように流行語に過ぎないという見方もありますが、本書などを読めば、確実に知識やビジネスについての考え方が根本的に変わりつつあることが実感できるのではないでしょうか。

「クラウドコンピューティング」は一説によれば、2006年のEric Schmidt (Google's CEO)の発言に由来するそうです。



The internet is much more than a technology?it's a completely different way of organizing our lives. But its success is built on technological superiority: protocols and open standards that are ingenious in their simplicity. ...

Today we live in the clouds. We're moving into the era of "cloud" computing, with information and applications hosted in the diffuse atmosphere of cyberspace rather than on specific processors and silicon racks. The network will truly be the computer.

http://googlesystem.blogspot.com/2006/11/network-will-truly-be-computer.html



その「クラウド」は、一部の強力な企業によって作られているとも言えます。Financial Timesの記事 "How many computers does the world need?" によれば、全世界で売られているサーバーの約20%はMicrosoft, Google, YahooそしてAmazonといったごく一握りの企業によって購入されているそうです。




現在私たちがネット上で当たり前のようにして使うようになったサービスの多くが、この「クラウドコンピューティング」の波によって引き起こされ、その波はますます大きくなってゆきそうです。

この本はクラウドコンピューティングにまつわるたくさんのエピソードを伝えますが、その中でも笑ってしまうぐらい驚いたのが、グーグルがベルギーにつくったデータセンターのエピソードです。

クラウドコンピューティングを支えるのは巨大なデータセンターですが、その消費電力の約3分の1は冷却のために使われます。そこで電力節約のためにグーグルなどは外気を利用した冷却システム(「フリー・クーリングシステム」)を使える寒冷地にデータセンターを設置します。ベルギーもその理由で選ばれたのですが、それでも年間7日程度は外気温度が上がりすぎてしまうことがある。さあ、どうするか。

グーグルの解決方法は、それらの日々はベルギーのデータセンターの電源をすべて切り、そこで稼働していたワークロードをすべて他のデータセンターに移行してしまうというものです。

この発想の大胆さ。でかさ。これこそは「グローバルに考え行動する」一例といえるかもしれません。

世界はこのようにグローバルな合理性をもつ革新で次々に展開しています。

このことはグローバルな規模での合理性を実行できる超巨大企業だけが世界を革新し、他の人間はそのプラットフォームの上で生き残るだけの時代が到来しつつあることを示しているのかもしれません。マルクスの資本主義に関する予言はやはり当たっているのでしょうか。

それとも一部のプラットフォーム的超巨大企業を除くならば、個人や小企業が中企業や大企業と張り合う力を得られる時代―マルクスの予言を超えた時代―が到来しようとしているのでしょうか。Salesform.comの「SaaS (Software as a Service)と今後の展望」の宣伝文句をそのまま(無批判に)引用すれば、クラウドコンピューティングは


(1) 所有から利用へ
(2) 短期間で構築
(3) 企業規模や業種にとらわれない利用
(4) 投資対効果

といった点で、従来のハードウェア・ソフトウェアへの投資戦略に対して圧倒的な優位性をもちます。


とりとめなくなりましたが「情報革命」は、おそらくこれから数十年にわたって私たちのあり方を変えるものだと思わざるを得ません。


関連記事: ニコラス・G・カー著、村上彩訳 『クラウド化する世界』 翔泳社




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