日本赤十字社が東北関東大震災義援金を受け付けています
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【今回の災害でお亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈りします。ご遺族の皆様に心からのお悔やみを申し上げます。またご自宅などの多くを失った方々に心からのお見舞い申し上げます。加えていま避難所で苦難を覚えている方のためにお祈り申し上げます。地震も津波も原発もまだ予断を許しません。私たちがなしうることをすべてなしえますように。私は現在このような方針の下、ブログ活動をしています。】
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今回の原発事故ほど、高度なコミュニケーション能力の重要さが痛感されたことはありません。複雑で予測がつきがたいことを、記者会見や公式発表で的確・簡潔に伝えなければなりません。科学技術においては特にそのように精確・簡明なコミュニケーションが求められており、これまでも日本の科学技術者は、自らの研究に邁進する間の僅かな時間に、効率よく英語力を高めようと努力してきました。
私は「英語教師は理系に学ぼう」というシリーズで、理系の方が理系の読者に向けて書いた英語学習・英語使用の本を紹介してきました。そのなかでもここで紹介した『理科系のための英文作法―文章をなめらかにつなぐ四つの法則 (中公新書)』は素晴らしい本ですので、私はこれを学部ゼミ生への課題図書の一冊としました。
以下は、あるゼミ生によるまとめです。英語教師は、この優れた本(著者の杉原厚吉先生は工学者)に謙虚に学び、これからますます必要とされる高度な英語コミュニケーション能力を未来の世代に育てましょう。
0.文法の限界
正確な“文”を書くことにおいて、文法は非常に役に立つ。しかしその文法は、“文章”を書く上ではその力を発揮しない。論文を書く上で私たちに求められているのは、後者の“文章”、とりわけ、分かりやすい(=誤解のない、読者に迷惑をかけない)文章を書く力である。この本では、分かりやすい文章を書く上で必要な点が、大きく三点に分けて論じられている。
1.道標
文章を書く時、自分は書く内容についてよく知っている。どのような内容を、どのような道筋で、どのような例を出して説明しているか全て知っている。しかし一方で、読み手はほとんどその内容を知らない。どのような内容なのか、どのような論理の道筋があるのか、どのような例が出されているか、全く知らない。それは、知らない街を一人歩くようなものである。その不安を少しでも和らげるのが、「道標」である。今どこにいるのか、次にどこに・どっちに行けばいいのか、読者は知ることができる。
1.1接続詞と副詞
道標には、二つの種類がある:
1.1.1接続詞
接続詞には、二つの文を一つにする働きがある。つまり、隣接する二つの文の関係を示す物である。
1.1.2副詞
副詞は、二つ以上の文の間の関係を示す物である。この時、文と文がつながる必要はない。接続詞が、隣接する文の関係を示すのに対し、副詞は、複数の離れた、文・段落・章との関係を示すこともできる。
1.2道標が与える情報
以下に、道標が与え得る情報を15点列挙し、それぞれに例を示す。例には、a)接続詞とb)副詞(副詞句)を一つずつ挙げる。どちらかが欠けている場合、φを使って示す。
①帰結: and, hence
②理由:for, indeed
③逆説・対照:but, however
④焦点:φ, in particular
⑤情報追加:φ, also
⑥仮定・条件:if, supposing that
⑦動機:φ, to this goal
⑧類似:φ, similarly
⑨例:φ, for example
⑩言い換え・要約:φ, in other words
⑪話題転換:φ, by the way
⑫旧情報の確認:φ, hitherto
⑬先のことを指す:φ, in what follows
⑭視点・常識の共有:φ, fortunately
⑮列挙:φ, one… the other…
2.構造とその意味
文の構造は、正確な意味を伝える上で非常に大切である。構造が違うと、その表す意味も違う。構造と意味の関係は、言わば、容れ物と中身である。容れ物は、その形にあった物しか収容できない。自分の示したい意味にあった容れ物を用いることが、分かりやすい文章につながる。以下に、その容れ物=構造を支配する三つの要素について述べる。
2.1語句の結びつき
構造を支配する要因の一つは、語句の結びつきである。ある二つの語句の結びつきは、語句の間の“距離”で決まる。結びつきは、距離が短いほど強く、遠いほど弱い。名詞を例にして説明すると、以下のようになる。
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例)「鳥羽の兄弟船」と「鳥羽兄弟の船」
「名詞①」と「名詞②」とを「助詞」でつないだ形(日本の経済・暇な人)と、その「助詞」を抜いた形(日本経済・暇人)とを比較する。この時、「名詞①」と「名詞②」との“結びつき”は、後者の方が強いと言える。この法則を、先に挙げた例に当てはめると、「鳥羽」・「兄弟」・「船」の三つの名詞の結びつきによってどう意味が変わるかが見て取れると思う。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
2.2動詞の用法
もうひとつの要因は、動詞の用法である。厳密には、「動詞の用法が定める文型」である。文型には、S・V・O・Cの組み合わせによる、五つの種類があるとされている(※1)。その中のどれを選んで使うかは、どの動詞を選ぶか、という点につながる。
※1・・・五文型の限界:目的格の“O”一つとっても、To不定詞・That節など様々ある。SVOの形を取る動詞の中にも、“O”がTo不定詞のもの、That節のものなど様々あるため、さらに細かい分け方が必要であると説く学者もいる(cf. A. S. Hornby)。
2.3ピリオド
2.1と2.2において、語句と語句の結びつきについて述べた。ここではもう少し大きな単位、節・文について述べる。節とは、それだけ取り上げると一つの文になる単位である。言い換えると、接続詞などで複数の文が結びついた時、それぞれの文は“節”になる。節と節との間にはピリオドがなく、文と文の間にはピリオドがあるという言い方もできる。この時、「節と節とのつながりの強さ > 文と文とのつながりの強さ」となる。
3.情報の新旧
1.2の⑫にもあるように、分かりやすい文章を書くには、旧情報の確認をすることが大切である。これは、⑫のような大きな単位においてのみ言える事ではなく、これから述べるように、一文一文の中でも大切なことである。
3.1情報提示の約束事
旧情報の確認や、新情報の提示の仕方には、いくつかのルールがある。
3.1.1旧情報は初めに出す
旧情報は、文の先頭にできるだけ近いところにある方が望ましい。英語には、エンド・フォーカスといって、後に来る情報に価値を置く傾向にあるためである。
3.1.2言及する旧情報を明確にする
旧情報の言及に、代名詞や定冠詞などを用いることがある。この時、定冠詞の後には指し示す対象の名詞が置かれるが、代名詞ではそれがない(定冠詞ではthe BOOK、代名詞ではitφ)。両者を比べると、定冠詞の方が言及する対象が明確である。このように、既出の名詞を繰り返し使うことで、指し示す対象を明確にすることができる。
3.1.3新情報はひとつずつ
一文につき、新情報はひとつずつ提示する。特に科学文章・論文では、理論の積み上げが大切である。一歩ずつ着実に結論に向かって論じ進めていかなければならない。
3.2文の視点
情報の新旧に関連して、文章の視点という問題がある。視点とは、誰の・何の立場から論じていくか、という点である。言い換えれば、その人や物などに対して、どれだけの共感度を書き手が持っているか、ということである。そして、その共感すべき人・物は、既出の旧情報であるのが普通である。共感度の大きさは、能動態・受動態と、以下のような関係がある:
①能動態(S≧O)・・・主語よりor中立
②受動態(S>O)・・・主語より(中立には成りえない)
このことから、「視点は主語に近い」ということが言える。これを踏まえて、視点に関して注意すべき点を以下に述べる。
3.2.1視点をそろえる
視点が中立である場合は問題ないが、文章中の視点は、できるだけ固定されている方が読みやすい。ここでは、視点がずれやすい点を三点指摘する。
①意味上の主語
To不定詞・分詞構文などには、意味上の主語が含まれる。文の主語と、これらの意味上の主語が違うと、それだけ視点がずれることになる。
②重文複文
文中に二つ以上主語がある場合、それらが一致している・中立を保っていることが大切である。
③文章を通して
文には視点がある。つまり、文章には、視点のある文がたくさん存在する、と言える。これらの視点は、できるだけ揃えなければいけない。
3.2.2共感度との矛盾
主語の中には、特殊な共感度を持つ物がある。それらを使うときは、3.2の①・②の法則と矛盾しないように気を付けるべきである。ここでは、二点に分けて説明する。
①所有格における視点
所有格は、それ自体に視点がある。his dogとくれば、視点はdogではなく“he”にある。つまり、he>dogと言える。したがって、*His dog was hit by him.とは言えない。3.2の②:受動態の時の共感度の大きさと矛盾するからである。
②一人称の視点
一人称主語:Iは、最大の共感度を持つ。世界で最も共感することができる人は、自分だからである。つまり、「私いがい>私」の不等式は成り立たない。よって、*The dog was hit by me.とは言えない。
3.2.3例外
動詞の種類によっては、視点の取り方に例外がある。以下にその例を示す。
①S<Oの形を取る(Come)
能動態で使っても、Oに視点を持たせる動詞がある。
②中立を表せないもの(Meet)
能動態でも、中立を表せないものがある。例として、meetが挙げられる。A meets Bでは、視点が「A>B」になる。中立を示すには、A and B meetとしなければならない。
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