岡野さんのエピソードは、現代の「指示待ち族」にとって非常に示唆に富むものと思いますので、岡野さんの本のどれで読んだのか忘れてしまったのできちんとした引用ができないのですが、ここでその概要を伝えます。
若き日の岡野さんは新しい技術を習得して事業展開しようと思い、知り合いの先輩職人に教えを乞いに行きます。先輩職人は、日本橋の丸善の洋書売り場に行けば高いけどいい本があるので、それを買って勉強しろと言います。
岡野さんが大枚をはたいてその本を買って開いてみると、どうもその本は英語でなくドイツ語で書いているらしい。どうしましょう、と先輩職人に尋ねると、先輩曰く、
「馬鹿野郎、職人ってのは図面で学ぶもんだ。本の図面を穴が開くぐらい見て自分で考えやがれ」
岡野さんは愚直に図面を見つめいろいろと考えます。考えに考えているうちにその新技術について理解でき、新事業も成功できたそうです。
この愚直さ、一本気、熱心さ、集中力、想像力、思考力、忍耐強さ ―これらが岡野さんの技術を創り上げていったのでしょう。岡野さんにとって学ぶということは、誰かエライ人の説を鵜呑みにすることでなく、自分の頭と手で考えて―extended mind―試行錯誤をしていくことなのでしょう。
こういった岡野さんが、博士号をもった研究者チームを抱える大企業ができなかったことをやりとげたということの意味を私たちはもっと考えるべきなのかもしれません。
現在の学校での学びは「言われたことだけをやる」さらに「やることをできるだけ少なくして、高得点を取ることが勝ち」といった価値観にあまりにも牛耳られているような気がします。生徒・学生どころか、教師までもが、定められた目標への最短時間での到達を自らの仕事と思い込んでいるのかもしれません。私たちは自分の頭と手で考える文化を取り戻すべきではないでしょうか。
岡野さんの数々の本には、上のエピソードを始め、本当に豊かな現場の知恵が書かれています。どれも簡単に読める本ですから、皆さんもどうぞお読みください。
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