2009年12月16日水曜日

12/19 「慶應義塾大学 言語教育シンポジウム」が訴えてくるもの

2009/12/19 (土) に開催される



のハンドブックがウェブ公開されました。





このように資料が公開されることは、所用で参加できない私のような人間にとって本当にありがたいことです。シンポジウムを運営担当される大津由紀雄研究室および慶應義塾大学出版会、および主催のグローバルCOE プログラム「論理と感性の先端的教育研究拠点」、共催の(財)ラボ国際交流センターから慶應義塾大学言語文化研究所への委託研究 Project Language Teaching( PLT)・慶應義塾大学出版会、協賛の(財)ラボ国際交流センターの各位に心から感謝します。


ハンドブックで私の目を特にひいたのは


実践報告: 自分の声に耳を澄まそう 末岡敏明(東京学芸大学附属小金井中学校)

ワークショップ: 「母語」を耕す 森山卓郎 (京都教育大学)

ワークショップ: 日・英語の基本音韻単位が教えてくれること ― CD のボタンを押す前に ― 寺尾康(静岡県立大学)


です。これらがどれもしっかりとした学術的基盤をもっているからです。


思えばここ10年余りの「小学校英語教育騒動」の大部分は、世間迎合的で学術的根拠の薄い俗論や資本主義的競争にあまりにも無批判的な煽動に動かされてきたといえるかもしれません。

加えて「一端『お上』が決めてしまったことは仕方がない」といった長年の政治的無力感もあり、私も含めた英語教育関係者はとにかく上記の俗論や煽動への対応を、ある人は不承不承、ある人は喜々として、しかし誰もが受動的にやってきたと総括できないでしょうか。

斎藤兆史先生は、大津由紀雄 編著 (2009) 『危機に立つ日本の英語教育』慶應義塾大学出版会の中で「日本の英語教育界に学問の良識を取り戻せ」と訴えていますが、今回のこのシンポジウムは、小学校英語教育という争点に学問の良識を取り戻す試みと理解することもできるかと思います。



学校教育というのは言うまでもなく複雑な問題です。その問題を打開するには、私も含めた風見鶏のような「英語教育学者」だけでなく、しっかりと冷静に学術的見地から教育を考える研究者が必要です。もちろん既成の学問の単なる「応用」として学校教育内容を設計しようとしてもうまくゆきません (ですから、各方面からの風を敏感に感じとる風見鶏が必要なのです)。とはいえ風見鶏ばかりが「学識経験者」として名を連ねると、教育は政治的迎合や経済的利得の発想に押し流されかねません。

今回のシンポジウムが、より多くの言語学者を英語教育に引き込むきっかけになればとも私は思っております。


同時に英語教育関係者も

森山卓郎 (2009) 『国語からはじめる外国語活動』 慶應義塾大学出版会


大津由紀雄 編著 (2009) 『はじめて学ぶ言語学―ことばの世界をさぐる17章』 ミネルヴァ出版

といった優れた著作に学ぶべきかとも思います。



0 件のコメント: