私は翻訳界の人間ではありませんが、山岡洋一先生は、日本で最も尊敬されていた翻訳家のお一人であったことは、先生のお仕事と文章、そしてお人柄、および様々な方の証言から、確信しております。
と言いましても、私が山岡洋一先生のことを知ったのはほんの最近で、翻訳のことを調べているうちに、山岡洋一先生の
を知り、その質の高さと、長年の積み重ねに驚き、英語教育界の方々にもぜひ山岡洋一先生のことを知っていただこうと、このブログでも
という記事も書いたりしておりました。
先生のお話を直接聴ける機会があることを知り、そのセミナーに参加(「翻訳通信」100号記念関西 セミナー)して、懇親会にも参加させていただきましたら、初対面にもかかわらず先生には、率直、真摯に、かつ丁寧にお話しして頂きました。その態度は、懇親会に参加していらした全員に別け隔てなく示されていたもので、私は本当に優れた業績を残す方というのは人格的にも素晴らしいのだなと感銘を受けました。(今からすると、先生の語り口や仕草に直に接することができたのは本当に幸運だったと思わずにいられません。先生の立ち居振る舞いは今でも鮮明に覚えています。)
その後も山岡洋一先生は、精力的にお仕事をなさり、かつ毎月一日には「翻訳通信」を発刊され、私なども大いに学ばせていいただいておりました。
また「日経ビジネス」に掲載された
は上記の「翻訳通信」のエッセンスを凝縮したとも言えるもので、これだけを読んでも、山岡洋一先生がどれだけ広く深く翻訳というものを考え実践なさっていたのかがわかるかと思います。
私を含め、多くの人間が、そんな山岡洋一先生が、いつまでもお元気に活躍されて、私達を引っ張っていってくださることを当然のように思い込んでいたはずです。近代日本を作った翻訳のこれからをさらに考え、日本の翻訳界・出版界の未来を切り開くことは、山岡洋一先生がいらしてくれるなら可能だと思っていたはずです。そこへ突然の訃報で、私も大きな喪失感を覚えています。ご家族やご友人の皆様のお悲しみなどはいかばかりかと思わざるを得ません。
ここに山岡洋一先生のご冥福をお祈りさせていただきます。
追記
先生の代表作の一つは『国富論(上)』と『国富論 (下)』です。私は、この古典を山岡洋一先生の日本語で読めるのならと購入しましたが、まだ未読といったていたらくです。いつか時間を見つけて、山岡洋一先生を偲んでこの本を読みたいと思います。
追追記
翻訳家のブログ"Buckeye the Translator"に山岡洋一先生を追悼する以下のような記述がありました。私もまったく同感です。
実力派でテキトーな翻訳をきらい、このブログのカラムで紹介している『翻訳とは何か―職業としての翻訳』など、翻訳を支えているのは翻訳者だと舌鋒鋭く論を展開されるので、文章を読んでいるとどんな怖い人かと思うのですが、実際に会ってみると、はにかんだような笑い方が印象的で、むしろ人前にあまり出たがらない、そんな方でした。
翻訳通信を出す(昨年は100号記念講演会があった)、ノンフィクション出版翻訳忘年会を毎年開催するなど、お金にならないことでも後進や業界のためになることをいろいろとされていた方で、まだまだ、業界の灯台として多くの後進の行くべき道を照らしていただけると思っていたのですが。
http://buckeye.way-nifty.com/translator/2011/08/post-af79.html
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