この4月から教壇に立った卒業生の一人に先日偶然会った。お互い先を急ぐ用事があったので、短い時間しか話ができなかったが、何とか元気そうだったので、それが何よりだと思ったし、彼にもそう言った。
学生生活から社会人生活への変化というのはものすごいものだ。学生時代は、気に入った同年代友人とだけ気楽に話をしていればよい。授業は単位を取りさえすれば十分で、疲れたら休めばいいだけの話だ。だが社会人生活はそうはいかない。つきあうのは、年上ばかりの教員集団で、その年長者は新人にとっては意味不明の仕事言葉ばかりを話す。授業は生徒を席につかせることから始まり、私語をする者、眠る者、つまんないと公言する者の相手をすることになる。どんなに疲れても休むことは許されない。
黒板を前に見て座っていた学生時代と、黒板を後ろにして立たなければならない教師時代の違いは大きい。まあ、金(授業料)を払う方から、金(給料)をもらう方に変わったのだから仕方ないといえばそれまでなのだが、それにしても予想以上に・・・と多くの新任者は思う。
John Lennonは"Nobody Told Me"で、ちょっとおどけたような調子で次のように歌う。
Nobody told me there'd be days like these
Nobody told me there'd be days like these
Nobody told me there'd be days like these
Strange days indeed
Most peculiar, Mama.
John Lennon- Nobody Told Me (Lyrics)
人生の思わぬ展開に驚くことから人間が逃れることはできないだろうから、私たちは「誰も教えてくれなかったよなぁ・・・」と人生の折々に言うはめになる。しかし、そんな時でもせめてこのJohnのように、どこか余裕を保っていたい。
Johnのように自らを冷静にユーモアをもって見つめるためには、日頃から人々の声に耳を傾けている必要がある。実は人々は自らの人生を折々に語っている。その語りを丁寧に拾っていれば、本当はかなりのことを学べる。そうやって学んでおけば、人生もそれほど驚きの連続とならず、平静を保つことができる。時に避けがたい思わぬ出来事に遭遇してもパニックに陥らないで済む。
だが人々が語り教えてくれる機会に、なかなか遭遇できない。人々は忙しすぎるし、多くの現代人は気のおけない談笑という文化を失ってしまった。語りを聞いておくべき若い人はたくさんいる。ぜひ聞きたいと強く願う若い人もいる。語っておきたいと思っている年長者もいる。しかしそれらの人々が語りを共有する場がなかなかない。
ひつじ書房からこの8月の後半に発刊される『成長する英語教師をめざして ― 新人教師・学生時代に読んでおきたい教師の語り』は、さまざまな学校種・環境・年齢で活躍(そして苦労)する教師24名の声を集めたものです。ぜひ若い世代の英語教師・英語教師予備軍に読んでいただきたいと編者(組田幸一郎さん、奥住桂さん、そして私)は願っています。
この本は8/20-21に開催される全国英語教育学会 山形研究大会のひつじ書房出展ブースでも展示される予定です。よかったらその時にでも手にとって下さい。
アマゾンなどでの取り扱いが始まりましたらまたお知らせします。
というわけで宣伝でした(笑)。
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