2007年8月24日金曜日

矢部正秋『プロ弁護士の思考術』PHP新書

私は自分自身大学教育の現場で判断をしなければならないことも多いですし、小・中・高の現場での実践的な判断の助言を求められることもよくあります。そのような時に、私が決してやらないように努めているのが、自分の考えだけに拘ることです。いわば理性的態度をできるだけ崩さないようにしているつもりです(実際はどうなのかはわかりませんが)。

現実は、理性的な態度より、声高あるいはヒステリックに自分の主張だけを語り続け、異なる意見には揚げ足取り的あるいは無駄に言葉数多い反論ばかりをして、他の人間に議論を続ける気を失わせてしまうような人の意見が通ることが多いのかもしれません。ですが、そのような人の意見ばかり通してしまえば、その組織あるいは共同体は早晩駄目になるだけでしょう。

自らきちんとした現実的思考をし、意見はどのように非現実的になるのかを分析できることは、「現場」できちんとした実践をするためには不可欠なことのように思います。

そういう問題意識が私にはあったので、出張先のコンビニでこの本を見つけたらすぐに購入し、その晩、ホテルで読みました。読みやすく、さまざまな洞察を得ることができた本でした。この本の内容は、目次が明瞭に語っていますので、ここではそれを紹介します。アンダーラインを引いた箇所が、著者が言う、「ビジネスや私生活に共通する『考え方の基本』(3ページ)」です。⇒の後の言葉は、それぞれの章の中の印象的な言葉です。


第1章 話の根拠をまず選りすぐる―具体的に考える
⇒時間の許す限り具体的事実を解明しよう(24ページ)


第2章 「考えもしなかったこと」を考える―オプションを発想する
⇒私は、依頼者からの相談には、最低三つのオプションを提示するようにしている。(56ページ)

第3章 疑うことで心を自由にする―直視する
⇒直視思考は、しばしば社会から危険視され、誤解されるから、懐深く隠しもち、時と場所に応じて用いることが大切である。(114ページ)


第4章 他人の正義を認めつつ制する―共感する
⇒若いときには「私の考える自分」と「他人の目に映る自分」のギャップに気がつかない。(138ページ)


第5章 不運に対して合理的に備える―マサカを取り込む
⇒いかに正しい判断をしたところで、偶然が介入する余地が30パーセントはある。(165ページ)


第6章 「考える力」と「戦う力」を固く結ぶ―主体的に考える
⇒(1)関連する事実(証拠)を確認する。(2)自分の判断の「根拠」を吟味する。(198ページ)


第7章 今日の実りを未来の庭に植える―遠くを見る
⇒「局所最善」が「全体最悪」になることがあるのが、ビジネスの難しさである。(225ページ)


私も少しでもこのような「考え方の基本」を徹底し、自らが参画する組織に良い貢献ができるように努めたいと思います。「現場での判断」をする必要がある方にはお薦めします。少しでも興味がわいたらぜひお買い求めください。


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