I +URGENT, +IMPORTANT
II +URGENT, -IMPORTANT
III -URGENT, +IMPORTANT
IV -URGENT, -IMPORTANT
ここでの教訓は、毎日の仕事の大半がI(至急やらなければならない重大な仕事)ばかりだと、とにかく急き立てられるだけで、もう自分で何をやっているかわからない状態になってしまうということです。あまり大きな仕事をどんどん引き受けてしまうと毎日がIばかりになりますし、また、本来はたいしたことのないIIの仕事も、溜めてしまうと締め切りの関係でIに転化してしまいます。私たちはIとIIの管理をしなければなりません。
しかしそれだけでは、人生にとって大切ですが特段急を要することではないIIIが、ついついないがしろになってしまいます。例えば私の場合でしたら健康のための運動をすること、教養の深化のための英語および日本語での読書などといったことがIIIにあたります。ですから私は日頃からIとIIの管理は当然の前提として、意識的にはできるだけ毎日の時間の中でIIIを確保しようとしてきました。
しかし、そこには落とし穴がありました。IVの時間を失ってしまうのです。「急ぎでもなく、重要でもないのだから」と私はIVの時間をほとんど皆無に近いような生活をしてしまいました。その結果、私はバーンアウトしてしまいました。この夏はIの仕事を入れすぎたのがバーンアウトの直接の原因ですが、それでもIIの仕事は変わりなくありますし、「自分を高めよう」とばかりにIIIの時間もできるだけ入れておりました(もっとも運動は止めてしまったのですが)。そうしますと、私は忙しさの中で、憔悴してしまい、意欲と感情を大きく失いました。判断力も損ない、必要のないことに躍起になったりもしました。気づく力も大きく後退して、大切なことを見逃したりしてしまいました。疲労困憊してしまっているのですが、かといって仕事以外のことができず、きちんとした睡眠も取れず、ますます自分を追い込んでしまうような状態になりました。
恥を忍んで申し上げますと、私はこのようなバーンアウトを就職して二、三年目に最初に経験して以来、何度か経験しています。いずれも自分を追い込み、しばらくは自分でも信じられないぐらいに仕事がはかどり、調子づいているうちに、バーンアウトしてしまうというパターンです。なんとか私も学習して、このパターンを繰り返さないようにしなくてはいけません。
そんなことを思いながらの盆休みに、長い間本棚においてあったデイヴィッド・クンツ著『急がない!ひとりの時間を持ちなさい』主婦の友社を読みました。とても啓発的でした。次の逆説的とも思えるような引用を読んだとき、私は膝を叩かんばかりに得心し、この本を読めたことを感謝しました。
わたしはとても充実した多忙な生活を送っているが、時にこう尋ねられることがある。「スコットさん、どうしてそんなにいろいろなことができるのですか」。それに対して、私はこう答えることにしている「一日に少なくとも二時間は、何もしないでいるからですよ」。
M.スコット・ペック
この本では「立ち止まる」ことを次のように定義しています。
「立ち止まる」ことは、自分本来の姿を十分に自覚するために、一定期間(一秒間から一ヶ月間)できるだけ何もしないことである。(24ページ)
立ち止まることが必要なのは、IやIIのための休息のためだけではありません。立ち止まるためのIVの時間を持つということは、むしろIやII、あるいはIIIの意味を問い直し、日頃自分が"URGENT", "IMPORTANT"と信じて止まないことを再吟味することなのです。IVは、IやIIやIIIをひっくり返すことや大きく修正ができるぐらいの偉大な意味をもった行為なのです。
立ち止まってみれば、あなたは自分本来の姿に目覚め、現在という瞬間を意識できるようになる。同時に、自分の一生を貫いている糸を見つけるのも容易になる。自分がどういう人間なのか、どこから来たのか、どこへ行こうとしているのか、そしてどこへ行きたいのかを思い出すのにも役立つ。さらには自分が求めている目標、理想、夢を思い出し、自分がいま実際にやっていることをなぜ始めたのか、それを思い出すのにも役立つ。その結果、いまやっていることが本当にやりたいことなのか、その見きわめがつくようになる。たとえこうした大問題すべてに明快な答えがでないとしても、自分が疑問に思っているのが何か、それを頭においておくのは大事なことだ。自分の疑問を忘れるのは、自分の生きる道を失うに等しいのである。(59ページ)
ただ気をつけておかなければならないことは、IVがすべて「立ち止まること」ではないということです。テレビをだらだらと見たりすることや酒を飲んで酩酊することは、IVであり気分転換でもあるとはいえましょうが、上のような意味での「立ち止まる」ことではありません。IVの時間は、ミヒャエル・エンデの小説『モモ』岩波書店に描かれているような世界では、とても豊かに過ごされていますが、現代社会では消費文化や競争心によって、IVの過ごし方はずいぶん歪められてしまっているように思います。私たちはIVの過ごし方、「立ち止まる」ことの大切さを意識的に学習する必要があるでしょう(そう考えますと坐禅なんて、すごい文化ですね)。
仕事のためのタイムマネジメントでは、I>II>III>IVの順で考えるべきでしょう。しかし生きるためのタイムマネジメントでは重要度はIV>III>II>Iであるべきでしょう。これら二つの正反対の重要度をバランスよく暮らしの中に統合することが職業人にとって必要なことではないでしょうか。
私は、盆休みに上の本を読んでも、それだけでは、生きるためのタイムマネジメントがなかなかうまく習得できていないことがわかったので、このような文章をしたため、自らの学びを少しでも確実なものとしようとしました。おそまつ。
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