2007年9月29日土曜日

質的研究のあり方に関する報告8/10

8 フォーカス・グループ研究について

 さてそういったインタビュー研究においては、話の深まりが重要である。したがってあるインタビュイーに複数回話を聞き、インタビュアーはその度ごとに分析や解釈を試みながら、語りをより信頼性があり、妥当性のあるものにしてゆく方が、一回だけのインタビューで終わるよりも好ましい。しかし他方で、特定単独のインタビュイーだけを選定し単一ケース研究を行なう特別の理由もない以上、私たちはより妥当性のある洞察を得るために、複数のインタビュイーに対してインタビューを行なうべきだとも考えられる。そうなると複数のインタビュイーに対して、複数回のインタビューを行なうこととなる。だがそうなれば、例えば6人のインタビュイーにそれぞれ5回の単独インタビューを行なうとなると、合計30回ものインタビューが必要となる。これは明らかに非現実的である。またインタビュアーの恣意的すぎる分析・解釈を防ぐためには複数のインタビュアーがいるべきだとも考えられるが、一人のインタビュイーに対して複数のインタビュアーがいれば、インタビュイーによっては非常に圧迫感を感じてしまう怖れがある。

 こういった諸問題を解決するのがフォーカス・グループによるインタビューである。ウィリグ(2003)のまとめによると、フォーカス・グループという形式では、研究者はグループのメンバーをお互いに紹介し、グループのフォーカス(例:質問、広告・写真などの刺激)を紹介し、ディスカッションを静かに進める議長の役割を果たす。このように進めることでグループの本来のフォーカスを定期的に呼び戻し、グループのメンバーが生み出す論点にお互いに回答するように促す。本研究でも、研究担当者の一名を「議長」とし、その他の研究担当者をインタビュアーとして、複数のインタビュイーに同時に、一種の座談会形式でインタビューを行なうことを複数回繰り返すこととする。だがフォーカス・グループ・インタビューが単なる「座談会」にならないようにするためには、私たちは引き続きフォーカス・グループ・インタビューの方法論に関して学ぶ必要はあるであろう。

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