一方、日本の新聞メディアは、以下に例を示すように、本文中では南部陽一郎氏の米国籍について言及しているものが多いものの、多くの新聞は「日本人3氏」を強調していました。
また、米国のThe New York Times、パリに基盤をおくInernational Herald Tribune、英国のThe Guardianは、やはりそれぞれの背景を反映したような見出しと記述になっていました。
「日本人」という言葉は、日常語ですから、ウィトゲンシュタインの家族的類似性が教えるように、多様な用法の間には、特段一本の本質的特徴が共有されているわけでは必ずしもなく、状況によってさまざまに使い分けられているわけなのでしょう。
ですからここで「日本人とは何か?」という日常語に関する議論を行なうつもりはありません。
ですが、日本語使用場面の多くで「日本人」と呼ばれている人物が、英語使用場面の多くで必ずそのまま"Japanese"となるわけではないことは事実として認識しておく必要があるでしょう。
また、ある人がまなじりを上げて「日本人は・・・!」と主張をする際、彼/彼女はいったい何を意味しているかを問い直す習慣もつけておくべきではないでしょうか。
ちなみに、皆さんは、以下の見出しと言及を比べて、どの新聞のスタイルがお好きですか?
朝日新聞
見出し:ノーベル物理学賞、素粒子研究の日本人3氏に
米国籍に関する言及:なし
http://www.asahi.com/special/08015/TKY200810070297.html
産経新聞
2008/10/08 9:12 時点では掲載無し
http://sankei.jp.msn.com/
東京新聞
見出し:日本人3氏ノーベル賞 素粒子研究で『物理学』独占
米国籍に関する言及:南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(87)=東京都生まれ、米国籍=
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008100890071239.html
毎日新聞
見出し:ノーベル物理学賞:益川教授ら日本人3氏に授与
米国籍に関する言及:米シカゴ大の南部陽一郎名誉教授(87)=米国籍
http://mainichi.jp/select/today/news/20081008k0000m040062000c.html
読売新聞
見出し:ノーベル物理学賞に南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏
米国籍に関する言及:米国籍で日本人の南部陽一郎・シカゴ大学名誉教授(87)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081007-4686911/news/20081007-OYT1T00543.htm
The New York Times
見出し:Three Physicists Share Nobel Prize
米国籍に関する言及:An American and two Japanese physicists on Tuesday won the Nobel Prize in Physics ...
http://www.nytimes.com/2008/10/08/science/08nobel.html?_r=1&scp=4&sq=nobel&st=cse&oref=slogin
International Herald Tribune
見出し:2 Japanese, 1 American share Nobel in physics
米国籍に関する言及:The American, Yoichiro Nambu, 87, of the University of Chicago
http://www.iht.com/articles/ap/2008/10/07/europe/EU-Sweden-Nobel-Physics.php
The Guardian
見出し:Nobel prize for physics goes to work on fundamental laws of nature
米国籍に関する言及:Yoichiro Nambu, 87, at the Enrico Fermi Laboratory at the University of Chicago...
http://www.guardian.co.uk/science/2008/oct/07/nobel.physics
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