2019年1月25日金曜日

「想い」がなければことばは生まれない -- ワークショップの感想から



先日、某所で小学校と中学校の英語担当の先生方のためのワークショップを開催しました。

理論を説明してからワークショップに入るのではなく、ワークショップを最初にやったからか、あるいは少人数のいい雰囲気の中でやったからか、いつも以上によい反応をいただきました。ありがたい限りです。

ワークショップでは中学1年生用のある英語教科書のユニットを音読することをしました。音読の際には、「活字の背後にありありと映像が描けるぐらいに英語をきちんと読もう。教科書の英文が曖昧なら、どんどん突っ込んで英文を改善しよう」といった趣旨で行いました。具体的には冠詞の違い、動詞の選択、可能な意味範囲の特定などについて徹底的に英語に即して考えることを試みました。

以下は主催者の方に送ってもらったすべての感想です。

 『生きた英語』、『使える英語』とよく言われるけれど、自分の生活、感情、意識にどこかで紐づけられた表現を教えるにはどうするか、学び方の一つの手段として子どもたちに上手に提供したいなと思います。想いをのせたことばを(英語を)使うことを意識します。(中学校)

 「あたま」だけを使って「わかった」ことを「わかった」としてしまうことの危険性をひしひしと感じました。英語教育だけではなく、人間教育、人の幸福とは?にかかわる問題であり、教育者のみならず学習者も、その他の人々とも分かち合いたいです。(外国語支援員)

 英語を初めて習う子どもたちは、わかりたくてうずうずしているが、いざ文章が長くなり、書く必要が出てきて、難しいと感じ、コツコツ勉強しないとついていけないことが分かると「どうせ将来、英語なんか使わへんし」と言い訳するようになる。でも、自分の興味のある分野であればしんどいことも頑張れるようになるはずなので、そこに近づけるような授業を考える必要があると思いました。(中学校)

 今まで授業での音読活動で今日ほど意識して読んだことがなかったのでとても新鮮で勉強になりました。自分の生活に引き寄せて音読をしたり、たまに深く読んでみたりしながら、子どもたちが興味を持ちながら授業を受けることができるようにしたいなぁと思いました。今日はありがとうございました。(中学校)

 ありがとうございます。しみ~っとさせられました。「しなくてはならないこと」「やりたいこと」のバランス大切にしたいです。「想い」。。。ことば。。。いっぱい学びました。
Readingの「練習」ってゆったらダメな時もありますね・・・。(中学校)

 教科書の「朗読」がこんなにも奥深いとは・・・。単語ひとつでどんどん深く考えられるなと勉強になりました。次から少しずつ実践してみたいです。
英語を使って自分を表現できるように(生徒が)するのが私の目標です。そこに感情をのせられるように日々しかけを考えていきたいです。ありがとうございました。
(つっこみは大好きです)(中学校)

 今回の講演を聴いて、理論上では分かりますが実際に実践していくとなるとなかなか難しい部分もあると思うので、少しずつ取り入れていけたらと思いました。本日はありがとうございました。(中学校)

 言語形式で終わらせず、ことばまでつなげていける授業をしていこうと改めて思いました。文と発話の違いをすごくわかりやすく教えていただき、そして想いがないと言葉がうまれないということはすごく納得できました。ありがとうございました。(中学校)

 奥の深い教科書の読み方の例を示していただきました。ついつい教科書をそのまま教えてしまいがちになっている自分に反省しました。「教科書がすべて正しい」のではなく、突っ込みどころを探していけたらと思います。
(中学校)

 “「想い」がないとことばは生まれない”
相手の状況(表情)が見えるような言語(ことば)の活動を大切にしていきたい。今、子どもたちは人以外の“もの”と対応したり、”会話“したりすることが多いように思われる(ゲームやその他の機器)。生身の相手を意識しながらコミュニケーションをとることが大切だと思いました。ありがとうございました。(小学校 校長)

 「ことば」は想いを他人が認識できる形式に翻訳したもの。「ことば」は体あってのもの。文字は「ことば」を視覚的に再現できるようにしたもの。どの言葉も「なるほど!そうか!」と納得しながら拝聴しました。広島平和記念公園で平和についてのメッセージを子どもたちがもらうために行ったインタビュー活動では、英語という言葉を介していろんな国の人たちと小学生が平和への熱い思いを共有しました。その文字を通して、実際にその人たちと会っていない中三生がその熱い思いを感じとることができました。(中三が外国の人たちのメッセージを訳してくれました。)ことばって想いを伝えるものなんだ、それが英語を学び始めて日が浅い小学生にも実感できました。「なんとかして伝えようとしたら伝わるものやねんなぁ」「俺らの英語が通じたんやで」「なんで英語を勉強しなあかんかがめっちゃ分かった」「話すって楽しいなぁ」「世界中の人が私たちと同じように考えているのが分かってうれしい」・・・前のめりでほっぺたを赤くして嬉しそうに話す子どもたちを見ていると「からだ」「こころ」「あたま」だ!と実感しました。私たち小学校教員は「言語形式の教育」というよりも「ことばの教育」をしていかないと!と改めて強く強く思いました。(小学校)

 ジェスチャーの話がとても印象に残っています。指導をしていきたいと思うので、心から生まれるものということを大切にしていきたいです。
 すべては心や伝えたい気持ちを大切にして、いきいきと言語活動を楽しむ子どもたちを育てたいです。
 今日は貴重な話をありがとうございました。(中学校)

 本日はありがとうございました。
 途中からの参加になってしまい、前半部分は分からないのですが、、、面白かったのですが難しかったです。
 本当にからだやこころから楽しめる興味のある授業をしたいですが、時間との戦いだなーと思います。(中学校)

 自分の授業ではなかなか内容の表層を触るのみで、内容について深く考えさせることはできていないので、内容を感情で理解し[以下なし](中学校)

 今回のお話を聞いて「想い」があるからこそ言葉が生まれるということを改めて感じました。実際の現場でテスト範囲などにおわれ時間に制限がかかることで、なかなかその「想い」から言葉を引き出す授業展開ができず、悩んでいるところがあります。しかし、その「想い」があって言葉を話すというのは、非常に大切であり、教育にとって必要な部分であるので、今後バランスをとりながら考えていこうと思います。ありがとうございました。(中学校)

 今日のお話を聞いて、教科書をもっと研究したいと思いました。重要な文法、教えるべきポイントのみにこだわらず、文章全体を、英語を関連づけて考えたいです。お話ありがとうございました。(中学校)

 人間の言葉の大切さを教えていただきました。AIにとってかわるかもしれない語学にならないように、本質の言葉を教えることができる小学校英語を作ることができたらと思います。(小学校)

 講義を聞きながら、自分の授業と比べていました。ただ単にRepeatをさせて、ペアReadingを交えて、“棒読み”になってしまう傾向があるように思いました。生徒が思わず体を使いたくなるような方法にするために、英語の奥にキャラクターを深く設定したり、実生活とリンクしながら実践していこうと思いました。生徒に“想い”をことばにする事ができるように努力、挑戦していきます!(中学校)

 教科書を深掘りするのが楽しかったです。普段から授業で取り入れたいです。もっともっと自分自身が英語を勉強しなければと感じました。(中学校)

 自分の授業が『言語形式』にまだまだベースを置いていることを改めて感じさせられました。『ことば』として英語を使えるようにさせていく工夫がまだまだ足りないので、今日聞いたことを参考に授業改善をしていきたいと思いました。また、後半のことばについての哲学的なお話も言語を扱う人間として大事なことを再認識させられました。(中学校)

 学生時代に、おもしろい例文を考えてほしくて実際にありえないけど考えるとおもしろい英文を作ってみると、とても叱られました。その日以来、おおげさに面白くなりそうな場面を英語にすることをやめたのですが、今日は勇気を頂いた気分になりました。また自分の本心から、自分の体から湧いた想いを英文に載せて伝えたいと思います。まずは自分から『ことば』を目の前の子どもに伝えようと思いました。(小学校)

 ご講演ありがとうご合いました。教科書の本文を取り扱うたびに、悩まされます。どうしたら興味を持ってもらえるだろう。楽しんでもらえるだろう。意欲を持たせられるだろうと考えます。今回のUNIT11-1だけでも、自分では全く気付くことができなかったポイントがどんどん出てきて、今までの自分の教材研究の甘さを感じました。(中学校)

 心でキャッチできないからだもあると思うのですが、それも知りたいなあと思いました。言葉を教える仕事にすごい大きな意欲と誇りがあることに「はた!」と気づかされました。(外国語支援員)

 子どもたちが英語に興味を持つには、どのようにすればよいか授業のたびに考えております。今日の先生のお話を伺い、ヒントをいただきました。すぐに授業に生かせるよう、頑張ります。小学生の子供たちが、英語に興味を持ち中学校英語に進んでいけるよう授業の方法を練り考えます。(小学校)

 感情をこめて読む、読ませる意識が低かったと今日のお話を聞かせていただき、気が付きました。aとthe、単語のニュアンス違い等こそを感じるのが英語の楽しみの一つだと思っています。テストで、文法問題などをひたすら解くことではないと思っています。おもしろおかしい英文を作ることから試していきたいと思います。本日はありがとうございました。(中学校)

 私は、英語教育と音楽教育は根っこの部分では全く同じだと感じ、明日からの授業にそれぞれの発想をどんどん生かし合っていけばより素晴らしいものになると、大きな気づきをいただきました。ありがとうございました。(中学校)

 学問とはそもそも必要だから習得するもの。学校で習うから、試験があるからといった目先のことにとらわれ過ぎていたなと思いました。コミュニケーションツールとしての英語を大切にして授業に臨みたいと思いました。(小学校)

 以下は、当日使ったスライドです。ご覧いただければわかりますように、これまで私がいろいろなところで使ったものをまとめなおしたものですが、ジェスチャーに関する図解などは新しくしております。

 

早いもので下の本を出版させていただいてからもう少しで4年になりますが、内容は古びていない、いや、ますます進行する英語学習の形骸化でむしろ重要性は増しているのではないかとも思っています(←親バカ的身びいき 笑)。もしまだお読みでない方がいらっしゃいましたら、ぜひご一読をお願いします。



 



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