2009年11月4日水曜日

金谷憲 『重ね読み式3(トリプル)ループ・リーディング 基礎』アルク

金谷憲先生が大学入試問題を使って、読解力・文法力・語彙力をつけるための本(音声CD付)を刊行されましたのでここでも紹介します。

本はLOOP1からLOOP3の3パートにわかれ、同じ48英文を違う角度から「読む」ようになっています。LOOP1ではいわゆる「和訳先渡し」方式により英語の表現法に気をつけ、2では語彙に注目し、3では簡単なパラフレーズをするようになっています。CDをつかって音読やシャドーイングを行なうことも勧められています。これは「英文を和訳すること」に徹してしまうと英語よりも日本語の訳文ばかりが頭に残るという状況に陥りがちであることから立てられた原則のようです。

幕末・明治においては「近代文明」を日本語では十分に学習できませんでした。ですから外国語文献を五里霧中の中から訳出する(その典型は『解体新書』です)ことが学習の重要な要素でした。文法訳読式はその点で時代に最適の学習方法だったといえるでしょう。

しかし訳出・翻訳の蓄積により、現代では多くの分野で日本語だけでかなりの学習ができるようになりました。そうなりますと外国語文献を読むのは最先端の研究を知るためとなります。最先端の研究ですから新しいのは一部だけで、その文献の中核部分は日本語でも知っている既知のものです。さらに外国語使用としては読解だけでなく発信(書くこと・話すこと)が重要になってきました。本書のような教材はこのような時代のニーズにかなった方針で作られているといえるのかもしれません。

英語教育研究が実践に少しでも貢献することを目指すのなら、このような形で具体的な教材を作り上げることは重要なことだと思います。学習参考書・問題集にもっと英語教育研究者の注目が集まることを願います。


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