海外の学会に行くとそのあたりはすっきりしており、いわゆる「偉い人」の仕事は若い人・新しい人の才能を発掘し育てることだという共通認識があるようにも思える(もちろん学会によっては閉鎖性が強いところもあるのだが)。日本の「偉い人」はやたらとスーツに紅白のリボンをつけたがり、長い挨拶をしたがるが、私はそういう日本的な「偉い人」、あるいはその人達を引き立てることを自らの最重要任務と考えているような人はどうも苦手だ。
大修館書店の『英語教育』最新号である2011年8月号は、そのような日本の英語教育界の通弊から免れているように思える。特集の「夏休みは洋書三昧」では、(すべて敬称略で通すが)池内了、柏木博、小森陽一、福岡伸一、三浦雅士、村上陽一郎などの識者が原稿を寄せている。もちろん(広い意味での)英語教育関連の人々も寄稿しているが、それが黒田龍之助、斎藤兆史、柴田元幸など、おざなりのことを書かない人選であることも嬉しい。私の無知で名前は知らなかったが幅允孝、大原千晴の原稿は滅法面白い。拙稿が掲載されているのはご愛嬌として許して欲しいが、私も私なりに「英語の本を読むのは難しい」と最初に身も蓋もないような言い方で原稿を始めて、紋切り型の文章にならないように努めたつもりだ。まあ、私のことはさておき、執筆者一覧はここで見ることができる。
執筆者の一人の鳥飼玖美子が言うように、
「夏休みこそ、日々の仕事から少し離れ、専門を超えた洋書を読むことで、世界を拡げたい」。
人間関係をできるだけ狭く、しかし濃いものにして、がっちりと相互利権体制を確保しようとする「やぁ、やぁ、やぁ」の人を苦手としていることは上に書いた通りだが、実は「夏休みに少し時間が取れますから、TOEICの対策に励みます!」と顔を紅潮させる英語教師善男善女も私は正直苦手だ。その「真面目さ」が狭隘なものに思えて仕方ないからだ。
英語教育という分野から、もっと豊かで深いものを引き出すためにも、夏休みぐらいじっくり好きな洋書を読みたい。
⇒『英語教育 2011年 08月号』(アマゾン)
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