2009年2月18日水曜日

田邉祐司、ティモシー・ライト『1日3分 脱「日本人英語」レッスン 』(朝日新書)

英語力という点でも人間性という点でも私が尊敬してやまない先輩である田邉祐司さんが著書を出版されたのでお知らせします。

この『1日3分 脱「日本人英語」レッスン』は『Asahi Weekly』で現在も連載中である「Mind the
Gap」という記事が好評であることを受けて出版されたものです。


この本は、文法的には間違っていないものの、どうも社会的には奇異な感じを与えてしまうし、時には深刻な誤解さえ生み出しかねない日本人の英語表現を具体的に指摘し、どこをどう修正すればよいかを明確に示してくれます。日本人英語学習者のこういった語用論的な理解不足に関しては、多くの識者が指摘する通りですが、本書はそれらを1コラム3分(あるいはそれ以下の時間)で読める楽しくてためになる読み物にして、語用論的な能力の育成を支援するものです。


高校生から大学生・大学院生はては英語教師まで、存外にこのような語用論的な知識あるいはセンスが欠けている場合があります(私も人のことは言えませんが)。どうぞ本書をお読みください。

なおこれは学生さんへのアドバイスですが、こういった本を読んだら、ぜひぜひ英語のテレビ番組や映画も熱心に見るようにしてください。本で読んだ知識や観点がきっかけになってさまざまなことに気づくことができます。できれば同じ番組を何度も見たら(しかも二回目からは日本語字幕を消してみたら)とてもいい勉強を楽しみながらすることができます。



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2009年2月15日日曜日

信じること

以下は、2/15の卒業生・修了生「追いコン」でする予定の挨拶原稿です。

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教育学部で教えるべきことは、結局二つのことに尽きるのではないかと最近思い始めました。

一つは「知ること」です。

知るといっても、それは「単に情報を得る」といったことでなく、「根拠や証拠をもち、他人と共有することによって、よりよい社会を作るのに役立てることができる客観的な知識を得る」といったことです。こういった意味での「知ること」は、卒業論文と修士論文で特に鍛えることができます。私は及ばずながらもこの「知ること」に関しては、皆さんのお手伝いが多少はできたのかもしれません。

しかしもう一つの大切なことに関しては、皆さんの方が私の先生だったのかもしれません。


それは「信じること」です。


私の尊敬する蒔田守先生は、かつてある講演会で、教師として大切なことを次のようにまとめました。

それは

信頼すること 

任せること 

待つこと 

そして、賭けてみること 

です。

これは「信じること」とまとめることができるでしょう。


「信じること」は「知ること」と対照的です。

「知ること」は、根拠や証拠を得られた限りにおいて成立すること、言い換えるなら、根拠や証拠が得られない限りは、決して成立しないし、また成立させてはいけない心の働きです。


ですが「信じること」は、根拠や証拠がないところで、あることを確信することです。


これは「知ること」のマナーからすれば、全くの誤りであり、科学では決して認められないことです。

ですが、私たちが生きるこの世界は、科学がこれまで解明してきた知識よりも、はるかに広く、深く、そして複雑なものです。そんな世界で生きるためには、人間は「知ること」だけでなく「信じる」ことも必要とします。

この点、友人同士お互いを信じ、自らの可能性も信じていた皆さんに私は多くを学ぶことができました。

どうぞ大学・大学院で学んだ「知ること」と、皆さんが周りから自然に受け入れ、自ら育ててきた「信じること」をバランスよく人生の中でブレンドさせ、幸せな人生をお過ごしください。

ありがとうございました。





2009年2月13日金曜日

末田清子・福田浩子(2003)『コミュニケーション学』松柏社

私も含めた英語教育関係者の多くは、言語学・応用言語学から勉強を始めた人間が多いせいか、「コミュニケーション」をもっぱら「言語」の極から考えがちです。

しかしコミュニケーションは言語以外の媒体も多く使うものであり、言語をまったく使用しないコミュニケーションも実際に存在する以上、言語の極からだけでコミュニケーションを考えるのは明らかに偏っていると言えましょう。その点、私などにとっては常識的な意味での言語の存在に根源的な疑いさえかけるデイヴィドソンのコミュニケーション論などは刺激的でした。
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/GlobalError.html
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/DComComp.html

しかし私のような英語教育関係者にとっての関心事は、あくまでも言語を主な手段として使ったコミュニケーション(以下、言語コミュニケーション)です。そうなりますと、言語コミュニケーションを、言語にも、(言語抜きの)コミュニケーションにも偏らずに捉える枠組みが欲しくなります。

末田清子先生と福田浩子先生によるこの『コミュニケーション学―その展望と視点』松柏社は、言語コミュニケーションをバランス良く概説した格好の教科書といえるでしょう。この本に書かれているようなことは、一応まんべんなく知っておくことが、言語コミュニケーションをきちんと考えるためには必須のことと言えるかもしれません。私はこの本を「言語コミュニケーション力論と英語授業」という授業、および私のゼミの副読本として指定しようかと今考えています。


この本は「コミュニケーションの四つの視点」として


機械論的視点
心理学的視点
相互作用的視点
システム論的視点


あげ、コミュニケーションを理論的にも包括的にとらえようとしています。

また「コミュニケーションの要素」としてこの本が掲げている枠組み(20ページ)を私なりに(少しだけ変えて)再掲しますと次のようになります。


1 Verbal messages

1.1 Verbal-vocal messages (spoken languages)

1.2 Verbal-nonvocal messages
1.2.1 Written languages
1.2.2 Sign languages


2 Nonverbal messages

2.1 Nonverbal-vocal messages (vocalics)
2.1.1 Prosodic features
2.1.2 Paralanguage

2.2 Nonverbal-nonvocal messages
2.2.1 Appearance (objectics)
2.2.2 Body touch (haptics)
2.2.3 Body movement (kinesics)
2.2.4 Smell (olfactics)
2.2.5 Space (proxemics)
2.2.6 Time (chromemics)



言語コミュニケーションといった非常に総合的な現象を考える際には、このような枠組みは非常にありがたい。これらの枠組みに即してコミュニケーションを概説する本書は、学部生・院生のみならず、言語コミュニケーションを考えようとする人は手元に置いておきたい本かと思います。


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追伸、
最近は忙しくてブログにも記事が書けませんが、2009年3月6日(金)の10:00-18:00に開催される慶應義塾大学言語文化研究所の言語学コロキアムでの講演だけは成功させなければと思っております。興味のある方はどうぞご参加ください。