2009年8月3日月曜日

「ナラティブが英語教育を変える?-ナラティブの可能性」(2009/10/11-12、神戸市外国語大学)


関西英語教育学会:KELES 第17回セミナー(兵庫地区)ご案内

より転載した原稿に一部加筆修正


日程 2009年10月11日(日)・12日(月)
会場:神戸市外国語大学 大学共用施設ユニティ

テーマ:ナラティブが英語教育を変える?-ナラティブの可能性

要予約 申込受付開始 8月24日(月)



 本セミナーは、関西英語教育学会地区セミナーと柳瀬陽介(広島大学)の科研、吉田達弘(兵庫教育大学)の科研の三者が共同して企画したものです。1日目は異なる立場から教師、研究者が今の英語教育について発言する形式、2日目は教師が自身の内面の声を言語化することの意味を考えるセミナー形式で行われます。皆様のご参加をお待ちしています。

◆ 日時: 2009年10月11日(日)13:00~17:00、10月12日(月・祝)10:00~15:00 受付: 11日12:30開始、12日9:30開始

◆ 場所: 神戸市外国語大学、大学共用施設ユニティ TEL: 078(794)4970
〒651‐2103 神戸市西区学園西町1丁目1-1 ユニバープラザ2F(神戸市営地下鉄「学園都市駅」南隣接)


◆ プログラム
第1日目 「学校英語教師の語りのパワー」  午後1:00 ~5:00

■ 趣旨
学校英語教育の主要な担い手である教師は、十分に語り得ているのだろうか。教師の語りはパワー(power, 権力)を奪われていないだろうか。今回のシンポジウムでは学校英語教師の語り(narrative, ナラティブ)について考察し、議論する。発言者は、
(1) 科学者・市民として英語教育を支援する者
(2) 批判的研究のスタンスから英語教育を研究する者
(3) 中学教師-指導主事-大学人のキャリアの中で発言を続けている者
(4) 日本の英語教育界ではまだ珍しい社会学的研究アプローチをとる者
(5) 積極的に発言する現職高校教師
(6) 積極的に発言する現職中学教師

である。
 学校英語教育を担う教師たちの語りに正当なパワーを与えるにはどうしたらよいかを考えることを、このシンポジウムの究極の目的とする。自由な考察、忌憚のない討議を目指したい。英語教育実践に関わる現職教師、研究者、行政関係者、大学生・大学院生、メディア関係者などの広い参加を求めたい。

■シンポジウムの目的
学校英語教育を担う教師たちの語りの正当なパワーとは何かを考えることを、このシンポジウムの究極の目的とする。教師の語りの、過小でもなく、過剰でもないパワーとは何かを考えたい。

したがってこのシンポジウムは、上記の「英語教育を担う教師たちの語りの正当なパワーとは何かを考えること」を総合的な目的とした上で、以下の4つの問いを立てる。各参加者がそれぞれの立場からこれら4つの問いに答え、それを受けて全体で討議する。

総合的な目的: 
英語教育を担う教師たちの語りの正当なパワーとは何かを考える
具体的な4つの問い:
(1) 日本の学校英語教師が潜在的にもっている語りのパワーとは何か
(2) 日本の学校英語教師は (1) のパワーを発揮できているか
(3) 語りのパワーに関する (2) の状況は正当なものか
(4) もし (3) が正当でないとすれば、その状況を改善するために何ができるか


■用語の定義

 a 「語り」: 各種の研究や実践で「ナラティブ」(narrative)と称されている行為を意味する。ある者が、その者の観点・問題意識・認識から、特定の他者に向けて出来事を描写すること、あるいはその描写の結果できあがった物語(ストーリー, story)を指す。

 典型的な語りは、ある者が一人あるいは少人数の出来事への関心を共有する他者に向けて、時空を共にしながら語ることによって行なわれる。したがって聞き手の反応なども語りに影響を与え、語り手と聞き手は相互作用的に語りを紡ぎ上げるともいえる。

 典型的ではない語りとして、時空を共にする比較的多数の者を聞き手とする語り、時空を共にしない不特定多数の者に書き言葉を通じて語りもある。

 このシンポジウムでの「語り」とは、学校英語教師がそれぞれの観点・問題意識・認識から様々な他者に語るものを意味する。その「語り」は、実証主義的な研究のように「客観的」とされる無人格的な視点を標榜するものでは必ずしもない。

 b 「パワー」: 政治学的概念としての “power”の訳語。一般的には、他人に対する影響力を意味する。しかし、「パワー」はしばしば、(1)「パワー」を所有する制度的・物理的実体としてのWHO、あるいは(2)「パワー」が作用する有様としてのHOWのどちらかを主に意味する用語として使われる。

 (1) のWHOの意味としては、例えば政治家、政府、財界人などを指し、この場合は「権力」という訳語がよく使われる。

 (2) のHOWの意味での「パワー」概念は、例えばフーコーやアレントが彼/彼女の分析で使うものである。この理解による「パワー」は、言説(discourse)や発言(speech)、あるいは語り(narrative)がいかに人々に共有され、検討され、多くの事柄に対して影響力をもつにいたるかということになる。

 この (2) の意味での「パワー」に「権力」という言葉を充てることは現在の日本語文化ではやや異質かもしれないが、アレントの見解なら、そういった複数の人々の間で自由に、しかし理性的に語られることばこそが民主的な「権力」の根源であり、制度的な「権力」の正統性の基盤であるということになる。

 このシンポジウム趣旨説明での「パワー」は主に(2)の意味で使われている。

 c 「学校英語教師の語り」: 上記の「語り」と「パワー」の定義を組み合わせたテーマをもつ今回のシンポでは、「パワー」関係の刷新のためになされる「語り」を主に扱う。

 学校英語教師は、既にさまざまな種類の言説・発言・語りによって他者からの影響を受けているが、そのパワー関係のすべてが正当であるかどうかは検討の余地がある。健全な社会的発展のために、教師は自らのパワーを、どのような言説、発言、語りの形で、誰に向けて発揮しようとするべきなのだろうか。

 教師は、例えば教師をさまざまな形でコントロールする研究者や教育行政者に対して、どのような対抗言説を語れるのだろうか。研究者や教育行政者のコントロールがすべて不当だなどとは言わない。しかし教師にはそれに対抗する語りは必要ないのだろうか。必要だとしたらどのような語りがパワーをもちうる語りとなりうるのだろうか。

したがって、本シンポでの「学校英語教師の語り」とは、「学校英語教師が、自らの正当なパワーを実現するための語り」を主に意味し、それが (1) どのような形の語りであり、(2) 誰に向けての・何に向けての語りであるべきか、を検討することも考察・討論の課題とする。



■スケジュール
12:30~ 受付
13:00~13:05  開会のあいさつ:吉田信介(関西大学、KELES会長) 総合司会:柳瀬陽介(広島大学)
<第1部>
13:05~13:20 「イントロダクション」柳瀬陽介(広島大学)
13:20~13:50 「科学者・市民からみた学校英語教師の語り」 大津由紀雄(慶應義塾大学)
13:50~14:10 「批判的研究者からみた学校英語教師の語り」 寺島隆吉(岐阜大学)
14:10~14:40 「中学教師-指導主事-大学人からみた学校英語教師の語り」 中嶋洋一(関西外国語大学)
休憩
<第2部>
15:00~15:30 「社会学研究者はこう問いかける」 寺沢拓敬(東京大学大学院博士課程)
15:30~16:00 「高校教師はこう問いかける」 松井孝志(山口県鴻城高等学校)
16:00~16:30 「中学教師はこう問いかける」 山岡大基(広島大学附属福山中・高等学校)
16:30~17:00  フロアーからの質問  全員
17:00 閉会
17:30~ 懇親会



第2日目 「教室でのTeacher-Researchを考える」 午前10:00~午後3:00

■ 趣旨: 
授業研究におけるナラティブの意味についての検討と、アクション・リサーチやリフレクションという言語化のプロセスを通して自身のティーチング理解を進める授業研究法の紹介と体験をおこなう。

■スケジュール
9:30~  受付
10:00~10:05  開会 総合司会:今井裕之(兵庫教育大学)
10:05~10:45 オープニング・トーク 「ナラティブ・アプローチから考える」 吉田達弘(兵庫教育大学)
10:45~10:55 休憩・準備
10:55~11:45 ポスターセッション(8本ほど予定)
11:45~12:45 昼食
12:45~14:15 ワークショップ(参加申込の時、お一つをお選びください)
ワークショップ① 「アクション・リサーチとメンタリング」 横溝紳一郎(佐賀大学)
ワークショップ② 「明日からできるリフレクション-はじめの一歩」 髙木亜希子(大坂教育大学)
ワークショップ③ 「言葉にするリフレクティブ・プラクティス」 玉井 健(神戸市外国語大学)
14:30~15:00 共有の場としてのフォーラム 「授業研究について-本日のセッションをふりかえって」
パネリスト:今井裕之、横溝紳一郎、吉田達弘、髙木亜希子、玉井 健
ポスター発表者、フロアの交流
15:00 閉会のことば:本田勝久(大阪教育大学、KELES副会長)




◆ 申込方法: 関西英語教育学会ホームページで受け付けます。入力フォームにて「氏名、所属、会員・非会員の別」等を送信してください。
http://keles.hp.infoseek.co.jp/seminar/17/

申し込み開始: 2009年8月24日(月)午前9時から。

1日目と2日目は別々に募集いたします。両日申し込みいただけます。1日目は入場者数に制限はございません。2日目はそれぞれのワークショップの人数を最大25名とします(合計75名参加可、人数に達し次第締め切らせていただきます)。

◆ 参加費: 会員(無料)、非会員(1,000 円)
備 考: 昼食は外大近辺のキャンパスプラザをご利用いただけます。駐車場は神戸市外国語大学構内駐車場をご利用ください。









1 件のコメント:

よしやす さんのコメント...

以前、お話しをお伺いした折りに想像していた
以上に豪華な布陣ですね。
びっくりです。

7年後にお会いする前に10月にも
ぜひぜひお会いしなくては(笑)。

爽健美茶、ご馳走していただく約束でしたよね。
お忘れなきよう(笑)。