2017年5月30日火曜日

(続)「公開ワークショップとシンポジウム:英語教育の身体性」の参加者の振り返り



この記事では以前の記事に引き続き、下記のワークショップ・シンポジウムに参加して、感想をわざわざ私にメールでお送りくださった方の文章を掲載しています(必要最小限の技術的修正は加えましたが、文章の趣旨は一切変えていません)。


5/20(土)に広島大学で、演劇的手法による
英語教育の無料ワークショップとシンポジウムを開催。


それぞれの文章の中に、思わず「はっ」とする表現があったりします。これからも小口真澄先生が示してくださった英語教育の可能性を語る的確な表現を探してゆきたいと思います。

お忙しい中感想をお寄せくださった方々に改めて御礼を申し上げます。




■ 英語教師のFHさん

 小口先生のワークショップは,私にとって”未体験ゾーン”でした。実は,演劇の世界には,個人的に密かな興味を持っていましたので,貴重な体験でした。

 ワークショップ後に改めて考えたのは,「役になりきる」「演技する」「その場の状況に応じてふるまう」というのは,実は教師が日常的に行っていることだなあ,ということです。

 改めて,教師には「演技する力」が必要なのではないか,と感じさせられました。

 ただ,そのためには,自分を客観視する力も,強く求められるのではないか,とも思いました。

 そのように考えると,教師という職は,本当に「高度な専門職だな」と改めてしみじみ思った次第です。

 
 是非また体験してみたいです。といっても,初体験の時の気持ちと,二度目以降の気持ちでは,大きく異なるのかも知れませんが。



■ 研究者のTKさん

小口先生のワークショップを通してとても興味深い経験をしました。当日もお話ししましたが、最初は自意識が勝っていて、皆と合わせてウォーム・アップするのさえ躊躇われていたのが、段階を追ってワークショップが進むにつれて、意識の部分が段々弱まっていき、身体が動き始めていきました。ドラマのグループ内での自己が育ち始めた感じです。

それでも歌が苦手なもので、歌えないし体もぎこちない感じでしたが、目をつぶって動く経験の中で、それが吹っ切れる感覚がありました。つまり自己を客観的に見る意識がどんどん低くなり、もう一つのドラマ内自己が仲間の音を探して反応しつつ動いていたように思われました。このドラマ内自己はメロディーに揺さぶられ、演技しつつ涙を流す自己で、ある意味でドラマを生きる自己であったように感じました。

非身体的・意識的な自己と身体的・情意的自己が小口先生の指導の中で入れ替わっていった(?)のかもしれません。ちょっと分裂的であったかもしれません。

いずれにせよ、考えていた以上に揺さぶられ、戸惑い、また考えさせられたワークショップでした。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。同じグループだったK先生のしっかりした歌声がまだ耳の奥で鳴っています。



■ 大学院生のHNさん

 小口先生のワークショップを受けて、「自分もこんな英語の授業を受けたかったな」と思ったのと同時に、「自分は公立小学校の子供たちにこんな英語の授業をしたい」と思ったのが一番の感想です。

 私は、学習開発学専攻カリキュラム開発専修の博士課程前期の1年生です。MN先生のゼミ所属し、小学校の英語教育を専門に研究を行っています。なぜ、私が小学校の教科の中で英語(外国語)を専門に選んだのかというと、英語が大の苦手科目だからです。そのため、ワークショップが始まった時、小口先生は英語を話し、参加者の人も英語に堪能な方ばかりで、私のような英語ができない者が来るべきところではなかったと感じ、「帰った方がいいのかな」とさえ思いました。そして、英語を話す場面が回ってくる度に大きな不安を感じていました。本当は演劇が好きなので、もっと積極的に参加したいという気持ちはあったけれど、英語力や発音に自信がないので、小さな声でしか発言ができず、心から楽しむことができませんでした。

しかし、気付けば不安な気持ちはなくなり、大きな声で歌を歌い、思いっきり役になりきっている自分がいました。そして心から楽しいと感じ、チームのみんなのことが大好きになって、今日この会に参加することができて本当によかったと思いました。そして、この感動を早く誰かに伝えたいと思い、家族や友達に話しましたが、やはり百聞は一見に如かずで、実際に体験した私の感動を相手に伝え理解してもらうことは難しかったです。(私の語彙力、表現力不足がその最たる原因ではありますが。)

ほんの数時間の間に起こった急激な気持ちの変化を自分なりに分析してみた結果、気持ちが変化したきっかけは3つあったと思います。1つ目は、小口先生の「すべて言わなくていい。わかるところだけで大丈夫。大切なのはあなたの感じたことを、相手に届けようとする気持ちだ。」という言葉。2つ目は、暗闇の活動の後、歌ではなくストーリーを演じる場面をチームで行ったこと。3つ目は、小口先生の「どんなことがあっても最後までやり通してください。出来ても、出来なくても一発勝負です。」という言葉で、良い意味での緊張感と責任感を感じた瞬間です。

 私のように英語が苦手な人は、1つ目のきっかけで正確に英語を話さなければならないという不安が少し軽減されます。2つ目のきっかけで「今、この空間ならば英語を話しても大丈夫だ。話してみようかな」という気持ちになります。つまり、安心して英語を話せる集団だと思うことで、不安な気持ちがまた少し軽減されます。そして、3つ目のきっかけで英語ができないということはもはや関係なく、「今日集まったこの仲間と悔いなく最後までやり遂げたい」という気持ちしかなくなりました。そして最後には、感動して涙ぐむ仲間をみて感動したり、グループの人とお互いに今日の演技を褒め合いながら帰ったりと、心から充実した時間を過ごすことができました。

 今回のワークショップ並びにシンポジウムを通して、私自身大きく心が動かされ、たくさんのことを考えました。そして、「今日のような授業を公立の小学校で行うにはどうしたらいいのか」と考えたとき、今日のような授業の存在を伝えるだけでは不十分だと思いました。

 私の少ない経験則の範囲による考えですが、実習やボランティア先で聞いた先生方の声や、私の大学時代の先輩や同級生(現職の小学校教諭)から聞いた話からすると、小学校での英語教育について真剣に深く考え、教材や授業、指導法等について研究しようと言い出すことすらできないように感じます。私が知っている小学校では、英語の授業はALTまたはLTE等の外部講師にすべてを任せ、担任は授業の時に外部講師から今日やることを聞いて、インタラクションの見本をやってみせたり、ALTが英語で説明したものを即座に日本語で訳したり、というような授業がほとんどでした。でも、現場の先生にとっては英語に自信がないので、英語に堪能な外部講師にやってもらったほうが子供にとってもいいと思っている人も少なくありません。また、英語教育を専門に勉強したり、大学で英語教育に関する卒論を書いたわけでもない先生にとっては、英語教育のスペシャリストの先生がどれだけ素晴らしい実践を紹介したり、指導法を提案したとしても、週に1コマ程度の英語の授業に(なおかつ苦手な英語に)他の教科と同じだけの力を注ぐことは、物理的にも気持ち的にも難しいことだと思いました。

 でも、私としては、何もかもが不十分なままの小学校英語教育のスタートだとしても、今までは裕福な家庭の子しか英会話スクールに行けなかったところが、公立の小学校ですべての子供たちが英語を学べるチャンスだと捉えて、この機会を絶対に無駄にしたくないと思っています。私たち指導する側(教師)にとっては、教科化や早期化のスタート時期だからうまくいかなくても仕方がない、という考えもあるかもしれないけれど、子供たちにとっては一生に一度しかない大切な1コマの授業を、なんとなくやりこなす授業にしてはいけないと思います。

 「どうしたら子供たちにとって、また教師にとってもよりよい英語教育になるのか」

 今回の小口先生のワークショップを受けて、自分が目指したい英語教育像のようなものを知ることができたので、この疑問に立ち向かっていく原動力をいただいたように思います。そして、まずは自分自身の英語力を上げることが急務だということも痛感させていただきました。この度は、大変貴重な学びの場をいただき、本当にありがとうございました。


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