2013年3月23日土曜日

卒業式挨拶: 生きることと学ぶこと



以下は私が本日講座の卒業式でおこなった挨拶です。卒業生・修了生の皆さんの幸せをお祈りします。



卒業生・修了生の皆さん、おめでとうございます。

皆さんはこれからそれぞれ新しい世界に飛び出してゆくわけですが、人生には思いがけないことが起こりえます。しかし「思いがけないこと」と言っても、東京電力福島原発事故もそうですが、実はいくつかの場合、起こる前からその可能性や兆しを知ることはできます。それでも「思いがけない」ことを引き起こしてしまうのが、私たち人間の性です。私たち人間はとかく無知で傲慢です。無知であるから傲慢になり、傲慢であるから無知になるという悪い循環に、私たちは陥りがちです。

しかし良いニュースがあります。私たちはその悪い循環から抜け出すことができます。私たちは学ぶことができるからです。人類は学ぶことを学んできたからです。 学ぶとは、現実に対して謙虚で正直であることによって、生きるための対応力を自らの中に見出すことです。皆さんは教育学部・教育学研究科で学び、ことさらにこの学ぶということは何かを学びました。この学びは皆さんの中に根付いています。おそらくは皆さんが自覚する以上に。

皆さんは新しい世界の中で新人となりますから、当然失敗もするでしょう。しかし、”What does not kill me, makes me stronger.” という言葉もあります(注1)。正直で謙虚であり、学ぶことを忘れなければ、失敗はあなたをより強くします。

もちろん人間は死すべき存在ですから、やがて力は衰えるに過ぎないと考える方もいるかもしれません。しかし、「力は弱さの中でこそ十分に発揮される。だから、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」(注2)という言葉もあります。東北大震災を始めとして、打ちのめされるような状況に追い込まれた方々の弱さの中に、私たちが人間の尊厳、人間としての偉大さという力を見出すことは決して珍しいことではありません。

だから皆さん、どうぞ学び続けてください。学ぶということは生きることです。生きることは学ぶことです。無知と傲慢にとどまることは、生命を損なうことです。正直と謙虚さを保ち、学び続けることが生きることです。自ら幸福になり、他人をも幸福にすることです。

皆さんが、これからますます豊かに学び続けることを願い、卒業生・修了生に贈る言葉とさせていただきます。 本日は誠におめでとうございました。





(注1)ニーチェが『この人を見よ』で述べた "Was ihn nicht umbringt, macht ihn stärker." (What does not kill him, makes him stronger)という言葉に基づく。(参考: http://en.wikiquote.org/wiki/Friedrich_Nietzsche

(注2)新約聖書「コリントの信徒への手紙2 12章9節」に基づく。(参考:http://www.seiai.net/0507seisyo.html



















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