この記事について
この記事は、学部三年生用の授業「コミュニケーション能力と英語教育」 (火曜5-8限 K208教室)
のためのファイル・リンク集です。内容は、3時間 (180分) 授業制度導入に伴い討議を重視するため精選しました。
授業計画の概要
詳しくは下で説明しますが、ここで授業計画の概要を示しておきます。
第一日目 (12/6) 言語学における個人的な言語観
前半:
導入(考えることについてなど)
後半:
チョムスキーの言語観
第二日目 (12/13) 応用言語学におけるコミュニケーション能力
前半:ハイムズの言語観と応用言語学的コミュニケーション能力論
後半:コミュニケーション能力の三次元的理解
第三日目 (12/20) 分析哲学における共同体的な言語コミュニケーション観
前半:
デイヴィドソンのコミュニケーション論
後半:
ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論
第四日目 (1/10) 身体論からの言語コミュニケーション観
前半:野口三千三と竹内敏晴の言語コミュニケーション観
後半:レイコフとジョンソンの言語観
第五日目 (1/17) ルーマンから考える言語コミュニケーション観
前半:コミュニケーション実践と「客観性」
後半:ルーマンによる意味論
第六日目 (1/24) アレントから考える言語コミュニケーション観
前半:アレントの枠組みで解釈する英語授業実践
後半:アレントによる意味論
※ 2017/1/31は金曜振替授業日ですのでこの授業はありません。
第七日目 (2/7) 異文化コミュニケーションとしての翻訳
前半:翻訳論
後半:英語教育と日本語の関係について
第八日目 (2/14) まとめ
前半:総括討議
後半:ポートフォリオ作成
この記事での凡例
このブログ記事で、記事・論文・書籍の名前の前に付けられた■、▲、★の記号はそれぞれ次のような意味を持っています。
■ 授業の前にきちんと読んで、そのまとめや感想などをWebCTシステム (Bb9) に書いておくべきもの(四角ですから「きちんと読め」と覚えて下さい)。
▲ 授業の前に参考程度に読んでおくべきもの(三角ですから、四角ほど「四角四面に読む必要はない」と覚えて下さい)。
★ S(秀)判定のための課題例。念のためにブログ記事だけは読んでおいてください。この記事で紹介された本を書評したらS評価の対象とします(星印ですから「輝くSを取るためのもの」)と覚えて下さい。
すべての講義についての私の原則
■ 私の講義の原則
遅刻・欠席・参加に関する方針
・甘やかされた内弁慶でしかない「お子ちゃま」や、単位がほしいだけのために受講を希望している人はお断りします。お互いに真摯な学びの空間を育てるためです。しっかり学びたい人だけが受講して下さい。
・遅刻は認めません。最初の点呼の時にいなかったら欠席扱いにします。欠席3回以上は単位認定をしないことを原則とします。やむを得ない理由があった場合は申し出てください。
・私語や居眠りなどは許しません。注意しても止めないようでしたら教室から出ていってもらいます。楽しい学習環境を保つために、最低限のケジメだけはつけます。
・なお教室に入ったら、毎回必ず違う席に座り、違う人の隣に座ってください(お互いに気軽に質問できるようにするため、一人だけ離れては座らないでください)。
授業で使う主なホームページ
・このブログ記事(授業計画など)
※ パスワードは口頭でお知らせします。
・広島大学Bb9(振り返りや課題の提出用)
広大ホームページの「もみじ」からアクセスして下さい。
主に使うのは「教材」の機能です。課題提出はBb9で行ってください。柳瀬の個人メールアドレスへの提出は(Bb9の不調などの仕方のない場合を除いて)避けてください。
なお書き込みは、すべて授業前夜である月曜日の23:59までに行ってください。
授業に必要なもの
・学生証:K208教室でのコンピュータ使用のために必須です。忘れたら授業ができません)。
・USBフラッシュメモリ:ただしDropboxなどのオンラインストレージを使うなら不要。
この授業での評価方法
(1) C判定を得るためには:Bb9にその日の課題(振り返り・動画課題・GR課題・予習課題の四つ)を期日までに出しておき、かつ実際の授業に参加する。
※これら四つの課題を、授業前日だけで行うことは事実上非常に困難です。「この授業は課題が厳しい」ということを覚悟して、授業が終わった日の夜から少しずつ毎日課題に取り組んでください。真面目な努力はあなたを裏切りません。
・振り返り:その日の講義で学んだことを、率直に、しかし他人にも伝わるように書いてください。文体の巧拙は知性の指標ですから、できるだけきちんとした文章を書くように努力してください。また、当然の前提として日頃から読書をしておくこと。
・動画課題:毎週ブログ記事(一般公開)を完成し、Bb9にはその記事のURLと記事内容のコピーを掲載すること。
■ 広大教英生がお薦めする英語動画集
■ はじめに
■ 記事の投稿方法(学生さんへの指示)
■ 注意:フォーマットに即して投稿をしてください。
・GR (Graded Readers) 課題:Bb9にその週までに読めた範囲での感想を書くこと。(この時点での感想は、ブログに投稿しないでください。後の (3) を参照のこと)。GRは教英学部生控室や中央図書館1Fに設置されています。また、広大サーバーに接続されたコンピュータからでしたら、GRのダウンロードも可能です。
▲ 広大生でしたらGraded
Readersを電子書籍として利用することができます
・予習課題:次週の授業内容の■印で示された記事を読んで、自分なりに理解できたこと・理解できなかったことを文章化してください。
(2) B判定を得るためには:(1)に加えて、期末にきちんとしたポートフォリオあるいは「作品」を提出する(「作品」については後で説明します)。
(3) A判定を得るためには:(2) に加えて、GR課題で一冊の本を読み終わる度に、下のブログ(一般公開)に記事を掲載し、かつその記事での「レベル得点」合計が20点以上であること。
■ 広大教英生がお薦めするGraded
Readers
■ はじめに
■ 記事の投稿方法(学生さんへの指示)
(4) S判定を得るためには:(3) に加えて、以下の二つのうちのどちらか(あるいは両方)の課題をこなしていること。
・書評作成:授業で紹介された本、もしくはそれに関連する本を読み、その書評を書いて、Bb9に提出する。
★ 自主性を開拓するために ―書評かプロジェクトに挑戦してみてください―
・昼読参加:「昼読」に定期的に参加し、自主的な読書の習慣を身につけること。
★ 昼読再開 + ハリー・ポッター仏語版を読んだ学部4年生の感想
※ 以上の原則に基いて、タームの最後には成績の自己申告をしていただきます。自己申告には、(1)-(4)の実績を具体的に数字などで示した上で自分が値するべき成績を申告してください。この自己申告に著しい虚偽があった場合は、単位認定を取り消し不合格にしますので、くれぐれもきちんと申告してください。
▲ 2015年度の学生さんのレポートから
「コミュニケーション能力と英語教育」のレポートから
田尻悟郎先生の授業ビデオをハンナ・アレントの哲学の枠組みを通して解釈する試み (学生さんの感想)
身体論的言語論に関する文献(レイコフとジョンソン、野口三千三と竹内敏晴)を読んだ学部三年生の感想
▲ 2013年度の学生さんのレポートから
レイコフとジョンソンによる「客観主義」と「経験基盤主義」に関して寄せられた学部生コメント
第一日目
(12/6)
言語学における個人的な言語観
前半: 導入(考えることについてなど)
■ ダブルループラーニング (double-loop learning 二重ループ学習)についての私的まとめ
■ 実践者として現場で考えるための方法論
■ 想像力と論理力の統合としての思考力について
▲ 和田玲先生(順天中学・高等学校)から学んだこと
▲ 授業の「正中線」?
▲ 教育現場で「よく観察し、よく考える」こと
▲ 岩本茂樹『教育をぶっとばせ --反学校文化の輩たち--』文春新書
▲ 教師と生徒の相互理解と相互認証 ― 広島大学英語文化教育学会での齋藤智子先生の発表
後半: チョムスキーの言語観
第二日目
(12/13)
応用言語学におけるコミュニケーション能力
前半:ハイムズの言語観と応用言語学的コミュニケーション能力論
■ Hymes, Canale
& Swain, Widdowson and Bachman & Palmer (授業用スライド)
■ Hymes, Canale,
Swainの論に関するファイル(パスワード必要)
この短いNTYのエッセイは非常に啓発的です。必ず読んでください。
■ Measurement and
Its Discontents
■ WiddowsonとBachmanの論に関するファイル(パスワード必要)
▲ バックマンのCommunicative Language Abilityの図
▲ バックマンのLanguage Competenceの図
■ バックマンとパーマーの2010年に関する記事
http://yanaseyosuke.blogspot.com/2010/11/bachman-and-palmer-2010-describing.html
■ 教育と生産を混同するな--ウィドウソン、ハーバマス、アレントの考察から--
参考文献
★Hymes, D. 1972. On Communicative Competence. In J.
Pride and J. Holmes (eds.), Sociolinguistics: Selected readings (pp. 269-93).
Harmondsworth: Penguin.
★Canale, M. and Swain. M. 1980. "Theoretical bases
of communicative approaches to second language teaching and testing."
Applied Linguistics, 1 (1): 1-47.(セクション1と3のみ)
★Canale, M. 1983. From communicative competence to
communicative language pedagogy. In J. C. Richards and R. W. Schmidt (eds.),
Language and Communication (pp. 2-27). London:
Longman.
★Widdowson, H. G. 1983. Learning purpose and language
use. Oxford: Oxford University Press.(第1章のみ)
★Bachman, L. F. 1990. Fundamental considerations in
language testing. Oxford: Oxford University Press.(第4章のみ)
★Bachman, L. F. and Palmer, A. S. 1996. Language
testing in practice. Oxford: Oxford University Press.(第4章のみ)
★Bachman, L.f. and Palmer, A.S. 2010. Language
Assessment in Practice. Oxford: Oxford University Press. (第3章のみ)
後半:コミュニケーション能力の三次元的理解
第三日目
(12/20)
分析哲学における共同体的な言語コミュニケーション観
前半: デイヴィドソンのコミュニケーション論
参考文献
★ Davidoson, D. 1973, ‘Radical Interpretation’, Dialectica,
27, reprinted in Davidson, 2001b.
★ Davidoson, D. 1986, ‘A Nice Derangement of Epitaphs’,
in LePore (ed.), 1986, reprinted in Davidson, 2005a.
★ Davidoson, D. 2001, Inquiries into Truth and
Interpretation, Oxford: Clarendon Press, 2nd edn.
★ Davidoson, D. 2005, Truth, Language and
History: Philosophical Essays, with Introduction by Marcia Cavell, Oxford:
Clarendon Press.
★ 森本浩一 (2004) 『デイヴィドソン ~「言語」なんて存在するのだろうか』NHK出版
後半: ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論
参考文献
★永井均(1995)『ウィトゲンシュタイン入門』ちくま新書
★鬼界彰夫(2003)『ウィトゲンシュタインはこう考えた-哲学的思考の全軌跡1912~1951』講談社現代新書
★飯田隆(2005)『ウィトゲンシュタイン』講談社
第四日目
(1/10)
身体論からの言語コミュニケーション観
前半:野口三千三と竹内敏晴の言語コミュニケーション観
★ 竹内敏晴 (2013) 『セレクション・竹内敏晴の「からだと思想」(全4巻)
後半:レイコフとジョンソンの言語観
参考文献
★ ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン(1986)『レトリックと人生』大修館書店、もしくはこの原著Metaphors We Live by
★ ジョージ・レイコフ(1993)『認知意味論―言語から見た人間の心』紀伊国屋書店、もしくはこの原著Women, Fire, and Dangerous Things: What
Categories Reveal About the Mind
★ マーク・ジョンソン著、菅野盾樹、中村雅之訳(1991/1987)『心のなかの身体 』紀伊国屋書店 もしくはこの原著The Body in the Mind: The Bodily Basis of
Meaning, Imagination, and Reason
★ ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン(2004)『肉中の哲学―肉体を具有したマインドが西洋の思考に挑戦する』哲学書房、もしくはこの原著Philosophy In The Flesh
第五日目
(1/17)
ルーマンから考える言語コミュニケーション観
前半:コミュニケーション実践と「客観性」
■ 8/20学会発表:「英語教育実践支援研究に客観性と再現性を求めることについて」の要旨とスライド
■ 論文初稿:英語教育実践支援研究に客観性と再現性を求めることについて
■ 研究の再現可能性について -- 『心理学評論』(Vol.59,
No.1, 2016)から考える
■ 比較実験研究およびメタ分析に関する批判的考察 --『オープンダイアローグ』の第9章から実践支援研究について考える--
■ 「テストがさらに権力化し教育を歪めるかもしれない」(ELPA Vision No.02よりの転載)
後半:ルーマンによる意味論
■ 「言語学という基盤を問い直す応用言語学?―意味概念を複合性・複数性・身体性から再検討することを通じて―」 (応用言語学セミナーでのスライドとレジメ) ←「1 序論」と「2 意味概念に関する哲学的探究」だけで結構です。内容は難しいかもしれないので、直感的に理解してくだされば結構です。
■ 今井邦彦・西山佑司 (2012) 『ことばの意味とはなんだろう』岩波書店 (「第19回応用言語学セミナー 応用言語学を考える」の準備の一環としてのまとめ)
■ ルーマン (1990) 「複合性と意味」のまとめ
■ ルーマン意味論に関する短いまとめ(『社会の社会』より)
■ ルーマンの二次観察 (Die Beobachtung zweiter Orndung, the
second-order observation) についてのまとめ -- Identität
- was oder wie? より
第六日目
(1/24)
アレントから考える言語コミュニケーション観
前半:アレントの枠組みで解釈する英語授業実践
■ 授業投映用スライド
■ アレント『人間の条件』による田尻悟郎・公立中学校スピーチ実践の分析
■ 「人間らしい生活--英語学習の使用と喜び」
■ E・ヤング=ブルエール著、矢原久美子訳 (2008) 『なぜアーレントが重要なのか』みすず書房
■ 仲正昌樹 (2009) 『今こそアーレントを読み直す』 (講談社現代新書)
■ 欠陥商品としての「考える」こと
関連して、バトラーに関する次の二つの記事も読んで下さい。
▲ ジュディス・バトラー著、佐藤嘉幸・清水知子訳(2008)『自分自身を説明すること』月曜社
▲ ジュディス・バトラー著、竹村和子訳(2004)『触発する言葉』岩波書店
さらに
▲ 「現代社会における英語教育の人間形成について―社会哲学的考察」を読んでください。
ついでに
▲ 「当事者が語るということ」もどうぞ
▲ 西洋哲学の寵児の政治的判断
▲ 人間、ハンナ・アレント
および
▲ アレント哲学の枠組みの中での「芸術」の位置づけ:エクセルファイルの概念図
▲ 映画『ハンナ・アーレント』予告編
後半:アレントによる意味論
■ 授業投映用スライド
■ 真理よりも意味を、客観性よりも現実を: アレント『活動的生』より
■ 人間の複数性について: アレント『活動的生』より
■ アレントの行為論 --アレント『活動的生』より--
■ アレント『暗い時代の人々』より -- 特に人格や意味や物語について--
■ アレントの言語論に通じるル=グヴィンの言語論
▲ 人間の条件としての複数性
▲ この世の中にとどまり、複数形で考える
▲ 「政治」とは何であり、何でないのか
▲ アレントによる根源的な「個人心理学」批判
▲ 世界を心に閉じこめる近代人
※ 2017/1/31は金曜振替授業日ですのでこの授業はありません。
第七日目
(2/7)
異文化間コミュニケーションとしての翻訳
前半: 翻訳論
■授業用スライド
■文法・機能構造に関する日英語比較のための基礎的ノート ―「は」の文法的・機能的転移を中心に
■「訳」に関する概念分析
■藤本一勇『外国語学』岩波書店
■内田樹 (2012) 『街場の文体論』 ミシマ社
■オメの考えなんざどうでもいいから、英文が意味していることをきっちり表現してくれ
■伊藤和夫『予備校の英語』研究社
■木村敏(2010)『精神医学から臨床哲学へ』ミネルヴァ書房
▲After
Babel
▲ジェレミー・マンディ『翻訳学入門』
▲山岡洋一先生の翻訳論
▲山岡洋一さん追悼シンポジウム報告、および「翻訳」「英文和訳」「英文解釈」の区別
▲国立国語研究所講演:単一的言語コミュニケーション力論から複合的言語コミュニケーション力論へ
▲国立国語研究所での招待講演の音声と補記
▲ポスト近代日本の英語教育―両方向の「翻訳」と英語の「知識言語」化について
後半: 英語教育と日本語教育の関係について
■授業スライド(英語教育と日本語の関係について)
■水村美苗『日本語が亡びるとき ―英語の世紀の中で』筑摩書房
■「授業は英語で行なうことを基本とする」という「正論」が暴走し、国民の切り捨てを正当化するかもしれないという悲観について
■Dual Language Programmeなどのマレーシア教育事情を卒業生から聞きました
■Vivian Cookの「多言語能力」(multi-competence)は日本の英語教育界にとっての重要概念である
■Some excerpts from the Website
"multi-competence" by Vivian Cook
■"I if become soccer player is play hard" あるいはS V Plusについて
■純粋な「英語教育」って何のこと? 複合的な言語能力観
▲イ・ヨンスク『「国語」という思想』岩波書店
▲イ・ヨンスク『「ことば」という幻影』明石書店
▲橋本治『言文一致体の誕生』朝日新聞出版
▲安田敏郎『「国語」の近代史』中公新書
▲山口仲美『日本語の歴史』岩波新書
▲福島直恭『書記言語としての「日本語」の誕生』笠間書院
第八日目
(2/14)
前半:総括討議
後半:ポートフォリオ作成