広大教英に限らず新入生の皆さん、おめでとうございます。お互い、謙虚に学びましょう。
学部新入生への挨拶
新入生の皆さん、教英へようこそ。
で、いきなりお尋ねしましたが、みなさんは何のためにここに来たのですか?
勉強するため、学ぶため?
それなら学ぶって何のことですか?
皆さんが高校までやってきたことですか?
皆さんやっていて楽しかったですか?
楽しかったとしても、それはみなさんが結果的に大学に合格できたからではないですか?あるいはよい成績を取ると、先生や親からほめられたからではありませんか?
皆さん自身、心から学ぶことを楽しいと思っていましたか。学ぶ喜びを身体全体で感じていましたか?
もしそうだとしたら、学んだことは身につきましたか?
ひょっとしたらセンター試験のために勉強したことを、今もう既に忘れかけているのではないですか。あるいは入試が終わって、皆さん、入試のために学んだことを改めて勉強しようとしましたか。入試以降、英語を読もうとしましたか?
しなかったとすればそれはなぜですか?本当の所は、みなさんは学ぶことをまだ楽しいと感じていないのではないですか?
皆さんの多くは将来、教師になることを考えているのだと思います。
でもそんなままで教師になっていいのですか?
自分では本当はそれほど面白くないと思っていることを、子どもたちに強要し、脅したりすかしたりおだてたりして、とにかく入試に合格させ、合格させたら「後は知らないよ」というのはあんまりではありませんか?
人間は食べてゆくには何か仕事をしてお金を稼がなければなりませんが、もし教育という仕事が、若い人を脅し、不安がらせ、あるいはちやほやして、自分でも価値がよくわかっていないことを強制することだとしたら、それはひどい仕事だと思いませんか?
ちなみに私は教育という営みを、そんなものだとはまったく思っていません。
「学ぶ」ということについての考えが、おそらく皆さんとは大きく違うからです。
それでは改めて「学ぶ」とは何か?
大学の教育学部では「学ぶこと」を学んで下さい。
この新しい学びは高校までの受験勉強の延長ではありません。
これまでの自分の考えが、がらがらと崩れるような経験となるでしょう。
どうぞ大学では深く、そして広く学んで下さい。
四年間よろしく。
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大学院新入生への挨拶
大学院生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
最近歳を重ねてつくづく思うことの一つは、当たり前のことを当たり前にやることが難しいということ、しかしそれこそが最も大切だということです。
それでは教育において当たり前のこととは何か。
その一つは、「自分がよくわかっていないこと・よくできないことは、教えない」ということです。
大学院では英語教育についての専門的な研究を行いますが、いくら大層な理屈を述べても、自分自身英語がよくわかっていなかったら、あるいは使えなかったら、それは駄目です。そんな人が論文で展開する理屈もおそらくは机上の空論に過ぎないでしょう。
それでは「英語ができる」とは何か。
ここでの私の定義は「英語が書ける」ということです。「書ける」といっても、単に綴りと文法の間違いがないということではありません。それなりの文体をもって書けるということです。(この点は私もまだ修行中です)。
では書けるようにためには何が必要か。読むことです。徹底的に読むことです。精読も多読も含めて圧倒的に読むことです。英語を読む習慣を身につけて、毎日毎日読むことです。
そのように読めるようになるためには、心の中で活字を高速に音声化する「話す」技能が必要です。活字から自動的に表情を伴った自然な話し声が聞こえてくるようにならなければなりません。そのためには圧倒的に英語を聞いていなければなりません。英語の声で自分の心と身体が動かされる体験を積み重ねておかなければなりません。
つまり、英語が書けるためには、英語を読み、話し、聞くことの体験の積み重ねが前提となります。そうしてようやく私たちは(ここで言う)「書くこと」を学び始めることができます。
逆に言うなら、英語が書けるようになれば、英語を読むこと、話すこと、聞くことは容易です。
さらに、英語がきちんと書けるぐらいに英語ができるようになれば、つまり書くこと・読むこと・話すこと・聞くことのどれにおいてもあまり不自由を感じることがなくなれば、一気に世界が広がります。心から英語をやっていてよかったと思えます。他の人にもぜひ効果的に英語を習得して欲しいと心から願うようになるでしょう。
どうぞ皆さん、目の前の論文執筆だけに追われることなく、英語が書けるようになることを目指して下さい。そのために英語を徹底的に読み、聞き、そしてそうして身につけた英語で語り合って下さい。
英語ができるということ ― それが英語教師としての「当たり前」の一つだと私は確信しています。
広く深い学びをしてください。
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