2015年5月3日日曜日

2015年5月~7月に行う4つの講演の予定



岩波ブックレット『小学校からの英語教育をどうするか』を出版させていただいたこともあり、今年の5月から7月にかけて4つの講演をさせていただくことになりました。招待してくださった主催者・事務局の皆様に感謝します。

以下にそれらの講演の予定を現時点でわかる範囲で書きます。小学校英語教育に関する(1)と(3)と(4)に関しては、若干内容が重なるところもありますが、基本的には別種の講演です。講演スライドは準備ができ次第、このブログで公表します。

私としては、せっかく岩波ブックレットという媒体で出版させていただいたので、この本をできるだけ多くの方に読んでいただきたいと思っています。著者の一人として講演の機会をいただいたら、できるだけわかりやすく語るつもり(そして可能な限り、本では語りきれなかったことを語るつもり)ですので、どうぞ皆様お越しください。







(1) 日本児童英語教育学会中国四国支部研究会


■ 日時
2015年5月17日(日)10時20分から16時10分までの学会のうち、14時20分から15時50分の90分の講演

■ 場所
広島国際大学広島キャンパス (広島市中区幟町1-5)
http://www.hirokoku-u.ac.jp/access/hiroshima/index.html

■ 講演タイトル
小学校からの英語教育をどうするか
―いくつもの分断を乗り越えるために―

■ 概要
現在の小学校英語教育は、さまざまな分断に苦しんでいるように思えます。教育行政では官邸と文科省の間で、教員養成では実践者の感覚と研究者の認識論の間で、教育界では小学校と中高の間で、小学校現場では担任と専科や外部人材の間で、そして英語と国語や算数などの他教科の間で、それぞれに分断が生じているように思えます。肝心の英語授業では、「あたま」と「こころ」と「からだ」の間に分断があります。これらの分断のうち、「あたま」「こころ」「からだ」の分断が言語教育にとってもっとも本質的であり深刻であると発表者は考えますので、講演では岩波ブックレット『小学校からの英語教育をどうするか』での議論を基に解説します。さらにその分断の克服から、他の分断の克服へとどうつなげてゆくべきかについての方向性を提示します。この提示は、多くの人をがっかりさせたり、いらつかせたりするものかもしれません。しかしこの方向性こそが、もっとも現実的であると発表者は考えます。講演から実りあるコミュニケーションが生まれればと思います。

■ 主催者によるウェブ広報
http://www.jastec.info/2015meeting/20150517.pdf







(2) 「英語教育における質的研究ワークショップ」
JACET言語教師認知研究会外国語教育質的研究会の共同開催)



■ 日時
2015年5月30日(土) 13時~17時45分の中の13時~14時までの1時間

■ 場所
東洋英和女学院大学六本木キャンパス 大学院201教室 (東京都港区六本木5-14-40)
http://www.toyoeiwa.ac.jp/daigakuin/daigakuin-annai/access.html

■ 講演タイトル
質的な実践研究における非合理性・自己参照性・複合性

■ 概要
近現代の認識論は、非合理性・自己参照性・複合性の概念により自らを拡張させ、単純に割り切れない複雑な状況の中で実践という人間的な営みの解明への途を拓きつつある。今後の言語教育研究の(質的)展開について考えたい。

■ 主催者によるウェブ広報
http://www3.plala.or.jp/sasageru/ELTqualitativeresearch0530.pdf







(3) 関西英語教育学会2015年度(第20回)研究大会


■ 日時
2015年6月13日(土) 12時10分~17時45分の中の14時40分から16時05分までの85分
(学会は翌日6月14日(日)の10時~16時25分にも開催されます)。

■ 場所
神戸学院大学ポートアイランドキャンパス (神戸市中央区港島1-1-3)
http://www.kobegakuin.ac.jp/access/portisland.html

■ 講演タイトル
小学校からの英語教育をどうするか
―「引用ゲーム」の限界を自覚する―

■ 概要
岩波ブックレット『小学校からの英語教育をどうするか』の主要なメッセージの一つは、小学校にこれまでの中学・高校の英語教育を押し付けるのではなく、小学校の実践からわかり始めたことを活かして中学・高校の英語教育を変えてゆくべきだ、というものです。今回の講演では、これまでの中学・高校の英語教育の大半が「引用ゲーム」に過ぎないという同書の批判的主張を特に取り上げ、「引用ゲーム」とは何かを確認したうえで、なぜそれでは「言語」と「コミュニケーション」が成立しないのかを、それぞれ、ダマシオの身体論とルーマンの自己参照の議論を援用しながら説明します。そうして「引用ゲーム」の限界を自覚した上で、それをどう克服してゆくかについての大まかな道筋を示します。講演だけでも理解できるようにお話するつもりですが、ページ数の都合で同書では展開できなかった議論を導入しますので、可能ならば同書を予めお読みいただければ当日の理解が進むかとも思います。

■ 主催者によるウェブ広報
http://www.keles.jp/news/2015_20program/




(4) 一般社団法人「ことばの教育」

小学校英語でどんな力を育むか
---あるいは、どんな力を育もうとしてはいけないか---

小泉清裕氏(昭和女子大学附属昭和小学校)
柳瀬陽介氏(広島大学)
大津由紀雄(明海大学、本法人代表理事)




小学校への教科型英語の新規導入、活動型英語の前倒しが世間でも話題となる中、小学校英語の関係者の間では少なからぬ混乱が生じています。そんな中、貴重な分析、提言がたくさん盛り込まれた柳瀬陽介・小泉清裕『小学校からの英語教育をどうするか(岩波ブックレット922)』(2015年、岩波書店)が出版されました。今回はこの重要なブックレットの共著者のお二人をお迎えし、本法人代表理事の大津由紀雄とともに、小学校英語について話し合います。参加者の皆さんとの議論の時間もとってあります。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

■ 日程: 7月4日(土曜日)

■ 場所:郁文館夢学園 (東京都文京区向丘2-19-1) 220番教室
http://www.ikubunkan.ed.jp/utility/access.html

■ 進行予定:
14:30 開場
15:00 - 15:10 開会
15:10 - 15:40 小泉氏講演
15:40 - 16:10 柳瀬氏講演
16:10 - 16:40 大津講演
16:40 - 17:00 休憩
17:00 - 17:30 3人談義
17:30 - 18:00 フロアとのやりとり
なお、休憩後の進行状況により多少の延長があるかもしれません。
終了後、学内食堂にて懇親会



事前申し込み(必要)
https://goo.gl/GydJLf



■ 参加費:一般1000円(一般社団法人ことばの教育会員・学生・大学院生は入場無料)
■ 懇親会費:3000円程度

参加希望の方は、事前に、柳瀬陽介・小泉清裕『小学校からの英語教育をどうするか(岩波ブックレット922)』(2015年、岩波書店)を読んでおかれることをお勧めいたします。



■各講師の演題と概要

小泉氏

● 演題:小学校英語と出合って20年―その間に考えたこととやってきたこと

● 概要:1994年度から、私個人の意志ではなく、学校の都合で小学校英語教育に足を踏み入れ、それから20年以上が経ちました。この20年間に、小学校英語教育の波は日本中に広がり、2020年度からの新しい展開に向けて急速に動いています。しかし、今進もうとしている道は、20年前に私が実践し始めた時に歩んだ、「間違った道」と同じ道のように思えてなりません。恐ろしいことに、どんな道でも皆で歩めば「間違った道」とは感じなくなってしまいます。全国の680万人の小学生にとって、彼らの20年後に活きる小学校英語教育にするために、大人たちが何をして、何をすべきでないかについて私の考えをお伝えします。



柳瀬氏 

● 演題:意味論の比較から考える小学校英語教育のあり方 ―子どもの未分化の統合的な力を分断してはいけない―

● 概要:初等教育では教科担任制をとらず一人の担任教師がほぼすべての時間を担当することの背景には、子どもの知性・感性がまだ大人のように分化していないことがあります。子どもの力は、未分化のまま統合的である方が、その後の人生での成長のためには重要であると考えられます。しかし、外国語としての英語教育では、言語学の伝統的な意味論の考え方が強すぎて、英語の意味はもっぱら指示(reference)の問題として授業が展開されがちです。今回の講演では、ダマシオ、デューイ、ルーマンの意味論を提示し、子どもが英語を「あたま」で覚えるのではなく、「こころ」と「からだ」で丸ごと経験できるような授業を行うための基礎理論を提示します。岩波ブックレット『小学校からの英語教育をどうするか』の第一章の議論の発展編です。



大津氏 

● 演題:やはり、小学校英語はやらないに越したことはない。しかし、そうは言っていられない小学校の先生がたへの応援歌

● 概要:わたくしは小学校英語に関して、それが活動型であれ、教科型であれ、その導入に一貫して反対してきました。いまでも、その考えに変わりはありません。実際、英語狂想曲はその騒々しさを増す一方です。同時に、《災い転じて福となす》をスローガンに、現実的な対処方法を探るとともに、小学校英語導入を年来の主張である言語教育の実現へ向けた第一歩とする方策を模索してきました。今回の講演では、柳瀬・小泉『小学校からの英語教育をどうするか』に触発されたところをもとに、「ことばへの気づき」育成のために英語をどう利用することができるのかを考えてみたいと思います













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