2016年11月7日月曜日

実践者はどうすれば自分の成功体験から脱却できるか(全英連での西巌弘先生の発表)



今度の11月12日(土曜)に全英連(全国英語教育研究団体連合会)第66回研究大会(全英連山口大会)で、広島市立舟入高等学校の西巌弘先生が発表をなさいます。そのタイトルと要旨は下に書かれている通りですが、私なりにこの研究を説明するなら、実践者はどうすれば自分の成功体験から脱却できるかということになるかと思います。

 西先生は、2007年3月に東京ビッグサイトで行われた「『英語が使える日本人』の育成のためのフォーラム2007」における模擬授業で高い評価を受け、平成19年度文部科学大臣優秀教員表彰を受賞し、明治図書からも『即興で話す英語力を鍛える!  ワードカウンターを活用した驚異のスピーキング活動22』も発刊しました。西先生はその後、確実に成果を残してはいたのですが、どこか違和感を感じ始めていました。今回の研究ではその現状を分析し打開を目指すにいたった過程を明らかにするものです。創意工夫と努力で世間からの注目の光を浴びながらも、そこに安住することを拒んだ実践者が、真摯に自分の実践を振り返り次の発展を目指すにいたった様子を皆さんにご報告する研究ともいえましょうか。

 私は嬉しいことに西先生の「指導助言者」に指定していただきましたので、少なくとも3回の会合(合計6~7時間程度)をもち、徹底的に「面白い研究」を創り上げるための話し合いをしました。少なくとも私たちの感覚ではそれなりに面白い研究 --聴衆の皆さんに共感と発見の喜びをわずかながらでももたらすことができる研究-- ができたのではないかと思っています。しかしもちろんそれは当事者であるがゆえの思い込みかもしれません。ですから当日、聴衆の皆さんからの忌憚のないご意見をお聞きしたいと思うと同時に、ここでも研究の要旨と発表スライドを公表し、より多くの皆さまのご批判を仰ぐ次第です。

 優れた実践者 --実践に長けるだけでなく、自分をごまかすことなく直視する勇気と知性を持ち合わせた方-- との共同研究は本当に面白いものだと私も改めて痛感しました。後の記事で私なりの解説も追加しますが、この記事では西先生の研究についてご紹介する次第です。



持続可能な英語コミュニケーション能力育成への提言
-ワードカウンター法を用いた指導と評価10年間の歩みから-

西 巌弘(広島市立舟入高等学校)

英語の指導者として長年の実践に「違和感」を感じたとき、あなたはどうするだろうか。これまでうまくいっていた授業や指導の中で、「いままでと何か違う。うまくいっていないのではないか。」という感覚を持ったとき、どう振る舞うだろうか。

 発表者は、かつて「ワードカウンター法」を発案し、成果を上げたことによって、スピーキング力をはじめとする生徒のコミュニケーション能力をどこまでも伸ばせると感じていた。しかし、近年になって、長年生徒の力を伸ばしてきたはずの授業場面における生徒の様子に、前述のような「違和感」を持ち始めた。本研究は、この「違和感」を問いに変え、量的・質的な分析と考察を加えることによって、その「違和感」についての合理的な解釈を試みる。そして、発表者の経験と考察に基づいて、英語コミュニケーション能力育成の実践を持続・発展させるための提言と問題提起を行う。






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