2015年9月29日火曜日

月・水・金の昼休みに「昼読」を始めます。英語・日本語文学・第二外国語での読書会です。












あなたが使うことば ― これがあなたの人格を形成します。
あなたの人間関係も、あなたが生きる社会も形成します。

ことばを豊かに丁寧に使うことによって、あなたの平安がもたらされます。あなたの仲間の平安も、あなたの社会の平安も。

粗雑で無思慮なことばは、あなたをかき乱してしまいます。あなたの仲間も、あなたの社会も。


教育の大切な目的の一つは、ことばを適切に使えるようにすることです。

この意味で、2015年6月8日の文部科学大臣通知は、経団連すらからも批判されるように、短見浅慮の極みとしかいえません。教員養成系学部・大学院や人文社会科学系学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める」というこの方針は、社会や文化や人間に対する洞察を欠いたものです。



しかし現在の人文系・教育系・社会系などでは、十分にことばが育てられているでしょうか。


あやしいのではないかと私は思っています。



なるほど専門用語をふりまわすことは覚えるかもしれません。(教育界では専門用語というより業界用語と言うべきでしょうか)。しかし、それらの用語は空回りし、私たちの実感から乖離していないでしょうか。


そもそも教養を身につけるため ―人間の営みについて広く深い洞察を得るため― の読書という文化が廃れはじめています。


現代の私たちの多くが熱心に見ているのはスマホの画面です。


狭い世界だけで完結しているSNSの他愛のない話や、扇情的で一方的なウェブ記事などばかりが読まれます。

そこで使われていることばの多くは平板で惰性的です。単純化された感情が表明されても、微細な情感の深まりはありません。自己完結的な正義に終始する大声はあっても、矛盾を含んだこの世界を落ち着いて語る含羞のある声がありません。

人間が文字文明を始めて以来、思慮深く書かれた本を、静かな心で丁寧に理解する読書という文化は大切にされてきました。

しかしインターネットの普及で、ひょっとすると「悪貨は良貨を駆逐する」といわんばかりに、読書文化が廃れてしまうかもしれないという懸念があります。

あなたの生活でも、ラインやフェイスブックばかりに追われて、読書の時間がどんどんなくなってきていませんか?



そこで、みんなで集まって、静かに読書をする時間と場所を創ることにしました。

やることは単純で、自分が読みたい本を持ってきて読むだけです。


既に試行的に何度かやっていますが、複数の人間が集まって静かに読書に集中する時空を味わうことは、一人ではなかなかできないことです。

最後の五分ぐらいで、それぞれが読書から感じたことや考えたことを語り合う時間も設けます。

少々遅刻してきたり早退してもかまいません。お昼ごはんを食べながらの読書でもかまいません。どうぞ昼休みの読書 ― 「昼読」 ― にご参加ください。


とりあえず教英生を中心に呼びかけていますが、広大生なら誰でも歓迎です。



毎週月・水・金の12:05-12:45に、教育学研究棟K207教室で読書をします。(祝日や特別行事がある日は開催しません)。

追記: 11月より、水曜日だけはA212で開催しています。


月曜日は英語です。教科書・問題集・単語集など以外で、自分が自分の感性で選んだ英語の本を読んでゆきます。ペーパーバックでもGraded Readersでもかまいませんし、新聞や雑誌でもかまいません。要は、授業や資格試験に直結していない、自発的な英語読書なら何でも結構です。

水曜日は日本語文学です。思考の基盤になる第一言語の力を耕すために、もっとも創造的な言語使用をおこなっている文学作品を読みます。評論や自然科学書も大切ですが、この読書会では「無用の用」の文学作品を読んでゆきます。古典でも現代作品でも、純文学でも大衆文学でも、日本語に翻訳された外国文学作品でもかまいません。

金曜日は第二外国語です。第二外国語はまだ読書を楽しむ力がついていない場合が多いでしょうから、文法書などを読んだり問題集を解いたりしてもよいことにします。よくわからない箇所はお互いに質問しあいましょう。試行的にはドイツ語を学ぶメンバーで集まって昼読しましたが、ドイツ語以外の第二外国語を学びたい・読みたいメンバーも歓迎します。

と、月・水・金の原則を立てましたが、もしどうしても都合が合わない人は、異なる曜日の内容の読書をしてくださってもかまいません。読書の習慣を形成することを優先したいからです。


これまで人々が積み重ねてきた豊かなことばを継承し発展させて、自他共に豊かな人生を送れるような社会づくりを目指したいと思います。派手な集まりではありませんが、ぜひご参加ください。

本格的に開始するのは10月からです。月・水・金の昼休みにK207でお会いしましょう。



4 件のコメント:

さちこ さんのコメント...

こんばんは。
わあ、私も「水曜日に参加」したいです~!!
いまだ読んでいない気になる文学作品(小説)を読んでいく。それが一段落すれば古典移りたいですね、日本霊異記とか(岩波の日本古典文学体系でも持参しましょか)。

それから・・?

外国文学(翻訳したもの)いくつか、まだ決めてません (笑)

それから・・?

金曜日に行きます?
頭からっぽなので独語辞典と文法書持参で、グリム童話でも持っていきます。

ははは。

阿呆な妄想はここらへんでやめておきます。
このブログを真剣に見ておられる方々、すみません。


>経団連すらからも批判
笑いましたよ。

柳瀬陽介 さんのコメント...

さちこさん、
書き込みをありがとうございました。
私は英語はThe New York Review of Books、日本語文学は『雨月物語』、ドイツ語は参考書を読むつもりです(ドイツ語はいかんせん、まだ読解力がありませんから)。
10月から本格スタートですが、多くの人が来てくれたらと思います。
それでは!
2015/09/30
柳瀬陽介

さちこ さんのコメント...

こんばんは。

幾度も失礼します。

>日本語文学は『雨月物語』
これは、原文ということですか?
ワクワク。

by雨月物語大好きな人

柳瀬陽介 さんのコメント...

雨月物語は、ちくま学芸文庫版で、原文と注釈と現代語訳がそろったものです(原文だけではとても読めません 汗)。私は読むのははじめてなので、少しずつ読んでゆきます。