年が明けて二週間が過ぎてしまいましたが、今年の研究目標を立てたいと思います。
■2008年の総括
昨年2008年は、input目標、output目標ともに、7-8割は達成できましたが、集中した長時間を要する大切な目標のための仕事が後回しになってしまいました。タスク管理を徹底しなければと反省しています。
(1) input目標
2008年のinput目標のうち、critical applied linguisticsの勉強と実践者との対話はそれなりに実現することができましたが、ルーマンの読解(特にドイツ語原典を参照しながらの精読)は駄目でした。
(2) output目標
日本言語テスト学会研究集会での口頭発表、JALT北九州地区での英語講演、中国地区英語教育学会での口頭発表、全国英語教育学会での口頭発表、日本言語テスト学会全国大会での口頭発表などは予定通り行なうことができました。また、懸念だった英語教育実践者に関する本の刊行も目途がつきました。ですが肝心の「田尻科研」のまとめがまだです。(ただこれに関しては共同研究者の横溝紳一郎さん(佐賀大学が現在鋭意原稿執筆中ですので、横溝さんの原稿は一足早く出版されるかもしれません)。
■2009年のinput目標
(1) 基礎的な理論の勉強
ルーマンをきちんと読みたく思います。並行して、差異やシステム論においてルーマンと重なるところの多い理由から去年から読み始めたデリダとベイトソンの勉強も続けたいと思います。これらは数年後の具体的な考察のための基礎的な勉強とします。毎週一回定期的に時間を取ります。
(2) 海外応用言語学論文の読解
私はこれまで自分で哲学などの文献を読んでは日本の英語教育について考えるといったアプローチを主にして、海外の応用言語学論文を軽視していましたが、これは明らかな間違いでした。まったくもって不面目ですが、ここにこれまでの間違いを認めます。これまでの不勉強を取り返しつつ、最新論文をきちんと読む習慣をつけたく思います。読む論文の種類はやはりcritical applied linguistics, ecological linguistics, sociolinguistic approachを中心とします。これも毎週一回定期的に時間を取ります。
(3) 実践者との対話
これは従来通り続けます。私は広島市の小学校英語科のプロジェクト、および現職教員教育に関する広島県と広島大学の提携プロジェクトに関わっていますのでそれらをメインにします。その他は、昨年7月に体調を崩したこともありますから、無理しない範囲で行ないます。
■2009年のoutput目標
(1) 慶應義塾大学言語文化研究所の言語学コロキアムの成功
私には過分な機会を得ましたので、是が非でもこの講座だけはいい発表をしたいと思います。皆様、もしよろしければ2009年3月6日(金)に慶應義塾大学言語文化研究所までお越し下さい。10:00-18:00まで講義と質疑応答をする予定です。
(2) 過去の研究の英語論文化
昨年の日本言語テスト学会での発表(Indeterminacy in Communication)と、これまでさまざまな機会に日本語で書いてきて部分修正を重ねてきた「言語コミュニケーション力の三次元的理解」を再整理して英語でそれぞれ論文にしたく思います。これは4月を締切とします。
(3) 田尻科研の成果の出版
「田尻科研」を通じて考えたことを、もっと練り直して、もっともっと整理して読者の皆さんに読んでいただけるようなものにまとめたく思います。これは6月末を締切とします。
(4) 社会的コミュニケーションとしてのライティングに関する論文
ルーマンの読解から、直接に時空を共有しないままでの「社会的コミュニケーション」を、直接に時空を共有する「相互作用的コミュニケーション」と区別して考察しなければならないと思い至りました。
「社会的コミュニケーション」の典型例は書類や論文のライティングです。私は日頃(自分のことは棚に上げての話ですが)、日本語や英語ならそれなりに書ける学生さんに「こんな書き方ではわからない」と難癖をつけています(汗)。それは、知識や興味をかなり共有する仲間に伝える書き方と、知識や興味を必ずしも多くは共有しない他人に伝える書き方は自ずから異ならなければならないという考えから来ています。
恥ずかしながら最近知ったことですが、この社会的コミュニケーションとしてのライティングに関する考えは、techinical communicationあるいはtechnical writingという用語で語られているようです。日本語文献でも「テクニカルライティング」という表現は散見されます。
英語教育研究を行なう者として、私は理論研究ばかりするわけにもいきませんので、今年はこのtechinical communication / technical writingについて勉強し、それを論文にしたく思います。これは8月の全国英語教育学会での口頭発表を取りあえずの目標とします。
■終わりに
年末年始に少しずつ考えてきた今年の研究方針を、こうして恥をさらすようにして文章にすることによって、今更ながらにタスク管理の重要性を知りました。文章をまとめながら、ガントチャート形式のタスク管理表(月別)を作成することによって、いくつかのプロジェクトは少なくとも今年は断念しなければならないことがわかりました。
私は特に好奇心が強く、次々に興味が拡張しがちです。その悪いところは、目新しいものばかりを追って、本当に大切なことが後回しになってしまうことです。今年は好奇心という我欲をできるだけ抑えて、できるだけ丁寧な生き方をしたく思います。
「どれだけ多くの仕事をしたかでなく、どれだけ丁寧に仕事をしたかが大切だ」というマザー・テレサの言葉を今年こそ、わずかなりとも自分のものにしたく思います。
というわけで今年も様々な方々に不義理をしてしまうことになるかと思います。どうぞお許し下さい。
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