2015年3月11日水曜日

上山晋平 (2015) 『高校教師のための学級経営 365日のパーフェクトガイド』明治図書



  この本は急いで紹介する必要があると思いましたので、ここで簡単な紹介をさせていただきます(注)。この本のタイトルには『高校教師のための・・・』とありますが、中学校教師、そして大学教師にも有益な本です。大学教師の一人として私も学ぶこと大でした。これを4月になる前に読んでおいてよかったと思います。
 
  学校教育の要は、学習集団づくりです。個人学習でしたら、現在はさまざまなメディアで可能ですから、学習集団を単なる個人の集まりと考えると、学校教育などおよそ非効率とも考えられます。しかし多くの人が経験から知っているように、人は、よい仲間に恵まれたら、個人では考えられないような成果を出し得ます。そしてその成果はその仲間にもよい影響を与えます。
 
  学校は、学習者の立場からすれば、よい仲間に「恵まれる」かどうかという場所ですが、教師の立場からすれば、それぞれの学習者にとってのよい仲間を「作れる」かどうかという場所です。よい学習集団ができるためには、最初は教師の働きかけが必要です。そしていったんよい学習集団ができれば、後はその学習集団が一つの生命のように育ち、多様な成果を示し、教師を驚かせるということも、ベテラン教師なら熟知するところです。学習集団づくりは、農業なら土作りに相当するような非常に大切な仕事です。
 
  学習集団づくりのために大切なのは、もちろん4月当初です。学習集団をどのような方向に導きたいか、何が叱責の対象なのかなどといった所信表明で、学習者は教師の人間性をある程度見極めます。そして教師が、その所信を一貫して実行できるかどうかで、学習者は教師を信頼するかしないかを決めます。高邁な理想も、口先だけで実行できなかったら、学習者は教師をかえって軽蔑するかもしれません。有言実行が大切というのは、学校だけに限った話ではありませんが、若い人を導くためには特に大切かと思います。
 
  実行し続けるには、細かな工夫にみちた効果的なシステムが必要です。善意と良心だけでよい教育をしようとすれば、教師自身が疲労困憊するだけです。その点、この本は、教師としての理念と共に、教室現場に実に密着した工夫が多く紹介されています(私としてもも大変参考になりました)。忙しい教師も読めるように、うまく整理された本です。
 
  よいスタートは、その後の教師の苦労を激減させるだけでなく、その後の学習者の豊かな日々をもたらします。4月が始める前にぜひお読みください。
 
  詳しくは、明治図書のホームページを御覧ください。

 
  『高校教師のための学級経営 365日のパーフェクトガイド』


  この著者の上山晋平先生を私は10年以上にわたり存じ上げておりますが、どんどんと力をつけておられます。年齢は私よりずいぶんお若い方ですが、教育実践に関しては私の先生です。笑顔で担任教師・野球部部長・達セミ講師・家庭人などと多面的な活躍をされているところなど、本当にすごいと思っています。上山先生に限らず、優れた実践者はどなたも教育実践に関しての私の先生です。教育学部での私の重要な仕事の一つは、私がそういった先生方から学んだことを整理し分析し編集して学生に伝えることです。




 
 



(注)
   今年度私はたくさんのご著書を著者からご恵投いただきながら、そのどれに対してもこのブログで紹介できていません。誠に申し訳ございません。
   以前は、頂いた本にはそれなりの感想をブログに書くことを自分に対する義務、著者に対する礼儀としていたのですが、2012年晩秋のおたふく風邪以来、私はどうも体調が整わず以前のような調子で仕事ができないため、その義務と礼儀をはたしえていません。それどころか、今年度からは講座主任の仕事がさらに入ってきたので、日々の業務も遅れがちです。

  そういったわけで、ご著書をお送りいただいても、「これを読む前に、以前頂いたあの本を読まなければ・・・」と、感想どころか通読さえままならない状態です。既にご著書をお送りいただいた皆様には、ここで改めてお詫びします。また、もし今後私にご著書を送っていただくことをお考えの奇特な方がいらっしゃいましたら、残念なことに私は以前のようにブログでご著書のご紹介をすることができない可能性が高いことを予めご理解いただけたら幸いです。

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