2008年5月14日水曜日

Make Some Noise, Link and Vote.

私の愛読するブログ「英語教育にもの申す」を通じて、『週刊東洋経済』が「子ども格差」を特集していることを知りました。大学生協に在庫がなかったので現物確認ができず、今は目次をそのまま引用するだけですが、2008年5月17日特大号(2008年5月12日発売)は



OVER STORY
このままでは日本の未来が危ない!!
子ども格差
子育て家庭の貧困世帯率が14%にも達する日本。出産から育児、教育まで、子どもをめぐる格差の実態を追った。


として

* 【図解】学歴、職業、年収… 格差は親から子へ継承される
* 貧困の撲滅掲げた英国、いまだ手つかずの日本
* INTERVIEW
o 立教大学コミュニティ福祉学部教授/浅井春夫
o 中央大学法科大学院教授/森信茂樹

* PART 1
「子どもの貧困」最前線
* 虐待問題で疲弊、パンク状態の児童相談所
* COLUMN
o 声を上げ始めた児童養護施設出身者たち
* 母子の貧困、生活保護家庭の悲鳴
* 妊婦健診への公費助成で14倍の自治体間格差
* 外国籍児童の不就学をなぜ放置するのか
* 【海外編 1】イラクへ送られる米国の落ちこぼれ生徒たち

* PART 2
ここまで来た!! 教育熱
* 半年で350万円出費も! 私立小学校「お受験」の舞台裏
* 東大生も使い放題! セレブのぜいたく受験術
* いよいよ必修化! 小学校から始まる英語格差
* カウンセリングで見えた 「家族を追い詰める国」日本
* INTERVIEW
o NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事/安藤哲也

* PART 3
学校に通えない子どもたち
* 授業料滞納問題が噴出
* COLUMN
o 基準がまちまちの就学援助
* 大学進学を阻む学費の壁
* 【海外編 2】中国の仰天「教育格差」事情
* INTERVIEW | 子ども政策を問う(1)
o 厚生労働大臣/舛添要一

* PART 4
学び育つ場所が危ない
* 規制緩和を悪用、保育が「金儲け」の手段に
* 人手不足を派遣保育士で補う公立保育園
* 大規模施設に衣替えされる学童保育
* 特別支援教育で混乱する学校
* 取得率88%は幻 育児休業取得は至難の業
* INTERVIEW | 子ども政策を問う(2)
o 内閣府特命担当大臣(少子化対策)/上川陽子



といった記事を掲載しているようです。




教育における貧困の問題がもう無視できず、日本の国のあり方の根本を歪めようとしているという声は最近私の周りでも日増しに高まってきました。

研究者は冷静な分析をすることが必要です(そして私はそれができていないことを恥じます)。

しかし一方で、市民は(あるいは市民としては)声をあげる必要があると思います。何せ日本は、先進国の中では最も教育に冷たい政府を有しているのですから。

しかし声をあげてもむなしいだけだという悲観論もあるかと思います。

私は性情においてはペシミストですが、行動においてはペシミズムを捨てなければならないとも思っています。

といっても私が何か運動を組織するということなどはしません。ただ「マルチチュード」の一人(あるいは一節点)として、大なり小なり賛同してくださる方、あるいは反対でもいいから興味を示してくださる方に対しては、私なりの働きかけをしてゆきたいと思います。それぞれが自分の好きなやり方、得意なやり方で行動をし、多様で様々に異なりながら連なる連帯こそが、個人主義に基づく健全な民主主義の良さかとも思います。

ですから、個々人が個々人の判断で、最も適切なことをやるのがいいわけですが、しかしその際にも共有すべきシンプルな方法論はあるのかもしれません。私はそれを次の三つにまとめます。


1 Make Some Noise
2 Link
3 Vote



1のMake Some NoiseというのはあるCDのタイトルです(このCDはダルフールでの虐殺に対するプロテストのために作られました)。Make Some Noiseとは誰でもできることであり、ロックンロールの精神を表す言葉だとも思います(私はロックンロールを20世紀が生んだ大切な文化の一つだと思っています)。まずは声をあげること、大きな音を出すことが大切だと思います。

しかしただ騒ぐだけでは無視されるのがオチです。(別記事参照)。ですからどんどん関連する人々とつながりましょう。つながれば社会的にも無視しがたい力が、誰からの指示も支配も受けずに生じてきます。これこそウェブ時代の民主主義とは言えないでしょうか。2のLinkとはこういう意味です。

3のVoteとは文字通り投票しようということです。以前は「私の票なんてたかだか一票に過ぎない」といった言説が横行していましたが、これほどに格差が拡大し、社会的な意味での「弱者」が多くなったら、その「弱者」が、社会的な「強者」と、一票という同じ力を持っているという普通選挙の制度は、驚くべきものだと思えてきます。不適切な言い方にならなければいいのですが、歩くのも困難な老人でさえ、職を失い苦しみ続ける中年でさえ、希望をほとんど失った若者でさえ、富裕層の人と同じ政治的力を持っているというのはすごいことではないでしょうか。人類史の遺産である選挙を投票で最大限に活かすべきだと思います。

また「誰を選んでいいかわからない。どの党も駄目だ」という声も聞こえますが、私は投票では「ベストの人間・党」を選ぶ必要はないと思います。とりあえず現状が駄目ならその現政権を選挙で引きずり落とす。そうして新しい政権を生み出させる。そしてその政権も下手ばかりをするようなら、さらにそれを選挙で引きずり落とし、また新しい政権を作り出させる。そうしてそれも駄目なら、とにかく引きずり落とす。よくなるまで引きずり落とし続ける。

政治家が選挙を避けるようならまた1に戻る。
Make Some Noise.

そして個々人が自分の頭で考え判断し、Linkする。

それでも選挙が実施されないなら、さらにMake More Noise and Link.

誤解はないかと思いますが、私はMake Some Noiseということで、暴挙的なことをそそのかしているのではありません。ただ、人なら誰でもできることを、自分の考えと意志でまずはやろうと言っているだけです(自律的な思考と自発的な意志が人々から奪われた、あるいはそれらを人々が失った社会など考えたくもありません)。

さらにVote、あるいは「引きずり落とせ」と言うことで私は特定の政党を批判しているのでもなく、また応援しているのでもありません。現状の日本は、たとえ数回政権交代が行われてもなかなか良くならないだろうと私は思っています。政治家がよい政策を考え、認め、実行するまで、政治家を常に牽制する--私は民主主義の基本を実行しようと述べているだけです。


Make Some Noise,
Link
and Vote.



皆さんはどう考え、どう行動しますか?


追記1
同誌の特集は予想以上に充実したものでした。この問題が複合的で多面的にアプローチしなければならないことがよくわかりました。個人的には
【海外編 1】イラクへ送られる米国の落ちこぼれ生徒たち

カウンセリングで見えた 「家族を追い詰める国」日本
の記事を興味深く読みました。

特に前者では、教師だけが声をあげても駄目で、教師は親を敵に回すのではなく、味方につけて、親を通じて政治家(特に地方議員)に働きかけるべきだというアメリカの声になるほどと思わされました。

追記2
ブログ「英語教育の明日はどっちだ!」でもこの記事が取り上げられています。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080514

追記3
「女教師ブログ」もこの雑誌特集のことを取り上げています。
http://d.hatena.ne.jp/terracao/20080523/1211512698


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