2015年4月4日土曜日

新入生への挨拶

本日、私の所属講座での入学オリエンテーションがありました。教師として気持ちが新たになる日です。以下は、大学院と学部のそれぞれの新入生に対して私がした挨拶です。





大学院新入生への挨拶 

新入生の皆さん、教育学研究科英語文化教育学講座、略して「教英」の大学院へようこそ。 私は最近写真を趣味にしており、今朝も出勤途中に何枚か写真を撮りました。主な被写体は植物ですが、撮影するたびに自然の美しさそして偉大さを感じます。 私も近代人として各種のテクノロジーを利用し、大規模組織の恩恵を受けている者ですが、自然はどんな人工物にも優るというのが私の正直な思いです。

ただ、こういった見解を述べる時に、私たちは「自然と人間」を対立したもののように考えがちです。しかし、人間も自然の一部です。"Human nature" ― 「人間の自然」あるいは「人間性」は自然の一部です。

ですが、人間という動物は言語を高度に操り、さらには文字言語までも発達させたので、古くはピラミッドや王国から、 現在では原子力発電所や官僚組織あるいは高度な資本主義システムまで、巨大な人工物を作りあげるまでになりました。そしてそれらの人工物は、環境というい わば「外なる自然」だけでなく、心という「内なる自然」も損なうことがあるというのは周知の通りです。

言語というのは、人工物を作り管理するために必須の媒体ですが、同時に人間の内なる自然 ― human nature ― をも表現できる媒体でもあります。言語によって、私たちは自然と人間 ―言い換えるなら外なる自然と内なる自然― の間をつなぎ、そこに調和を見出すことができます。また、それを決定的に損なうこともできます。

英語は、近年ますます強力な言語、地球最大の権力的な言語であるという認識が広まり、また、実際、多くの場所で使われるようになってきています。私たちは、その英語という言語を教えるということについて研究をします。

その研究は、外なる自然と内なる自然を損なうことにつながるのでしょうか。それともそれらをつなぎそこに調和を見出 すことにつながるのでしょうか。権力者をますます富ませ、弱者をさらに弱体化させるために使われるのでしょうか。それとも人間がもつ権力という力を、人権 思想と民主主義の理念に基づき、すべての人に与え、内なる自然と外なる自然を豊かにするために使われるのでしょうか。もう少し具体的な言い方をします。英 語教育はエリートとそうでない者の選別に使われ、その過程で両者の心を荒廃させ、結果、社会と自然環境を損なうことにつながるのでしょうか。それともすべ ての人々の心を豊かにし、人間と自然の調和をもたらすことにつながるのでしょうか。

大学院の具体的な指導では、細かなことを言うことが多いと思います。しかし、研究とは何のために行うのか ― この理念について考えることを忘れないでください。

一緒に学びましょう。ご入学おめでとうございます。











学部新入生への挨拶

新入生の皆さん、教育学部英語文化系コース、略して「教英」へようこそ。 皆さんは大学で、教育学部で、そして教英で何を学ぶのだろうと、期待と不安を胸に思案しているかもしれません。「何を」という学びの対象に興味が行くのは当然ですが、教育学部で皆さんをお迎えするにあたっては、興味の焦点を「何を」ではなく「学ぶ」の方へと移すことをお勧めします。

これまで皆さんの「学び」、あるいは「勉強」は、先生が言われたことを怠けずに忠実にやることだったかもしれません。しかし残念ながらそれは十分な意味での「学び」とはいえません。

それでは深い意味での「学び」とは何か?それはなぜ行うものなのか?私はここで皆さんに安直な答えを申し上げるつもりはありません。考え始めてください。しかし、より深い学びを体得する時、皆さんは自分自身と周りの人々を確実に幸せにできる人間になること、これだけは今、確言しておきます。

と、最初から抽象的なお話をしてしまいました。皆さんの中にはこのスキンヘッドは、ひょっとしたらお坊さんかと疑い始めた人もいるかもしれません(違いますけど)。ですから、わかりやすいことを付け加えます。

私は一教員として、また今年度の講座主任として、皆さんの個性を見出すこと、そしてそれを伸ばすことを心がけます。皆さんのよいところをできるだけ引き出すつもりです。 ですが、時には皆さんに注意や叱責をしなければならない時もあるかもしれません。注意や叱責は最小限に抑えたいので、今ここで私は私なりの原則を明示しておきます。


「自分を含めた人を大切にする」― これが原則です。


ですから、もし皆さんが、他人を大切にしなかったり、自分自身を大切にしない言動をしたりした場合は、注意や叱責をします。そうでない限り、できるだけ皆さんのよいところを伸ばすよう心がけます。

「学ぶことそのものを学んでほしい」ということ、そして、「自分を含めた人を大切にする」ということ、この二つが皆さんの入学にあたり、私が述べたいことです。皆さんの「学び」を変えてください。そして自分も他人も大切にしてください。改めて入学おめでとうございます。







2015年3月24日火曜日

JOPT科研シンポでの講演のスライドと配布資料



以前の記事でも予告しましたように、3月26日(木)に筑波大学東京キャンパス(丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩2分)で開催される(科研(基盤研究A:日本語会話能力テストの研究と開発)に基づくJOPT (Japanese Oral Proficiency Test)シンポジウムで90分の講演をさせていただきます。


さきほどようやく講演のスライドと配布資料を完成させることができましたので、ここに掲載します。






ご参加の方は、講演前か公演中にスライドのファイルをダウンロードしていただければと思います。このスライドの印刷媒体は会場でお配りしませんが、配布資料に関しては、私が会場でお配りします。

岩波ブックレット『小学校からの英語教育をどうするか』でごく簡単にしか述べることができなかったことも、多少詳しくお話できるかと思います。この講演スライド・配布資料と合わせてブックレットをお読みいただければ、ブックレットで書ききれなかったことも多少はご理解いただけるのではないかと思います。

若干でしたら空席もあると聞いておりますので、もし参加ご希望の方があれば、JOPTサイトからお申込みの上、ご参加ください。










2015年3月11日水曜日

上山晋平 (2015) 『高校教師のための学級経営 365日のパーフェクトガイド』明治図書



  この本は急いで紹介する必要があると思いましたので、ここで簡単な紹介をさせていただきます(注)。この本のタイトルには『高校教師のための・・・』とありますが、中学校教師、そして大学教師にも有益な本です。大学教師の一人として私も学ぶこと大でした。これを4月になる前に読んでおいてよかったと思います。
 
  学校教育の要は、学習集団づくりです。個人学習でしたら、現在はさまざまなメディアで可能ですから、学習集団を単なる個人の集まりと考えると、学校教育などおよそ非効率とも考えられます。しかし多くの人が経験から知っているように、人は、よい仲間に恵まれたら、個人では考えられないような成果を出し得ます。そしてその成果はその仲間にもよい影響を与えます。
 
  学校は、学習者の立場からすれば、よい仲間に「恵まれる」かどうかという場所ですが、教師の立場からすれば、それぞれの学習者にとってのよい仲間を「作れる」かどうかという場所です。よい学習集団ができるためには、最初は教師の働きかけが必要です。そしていったんよい学習集団ができれば、後はその学習集団が一つの生命のように育ち、多様な成果を示し、教師を驚かせるということも、ベテラン教師なら熟知するところです。学習集団づくりは、農業なら土作りに相当するような非常に大切な仕事です。
 
  学習集団づくりのために大切なのは、もちろん4月当初です。学習集団をどのような方向に導きたいか、何が叱責の対象なのかなどといった所信表明で、学習者は教師の人間性をある程度見極めます。そして教師が、その所信を一貫して実行できるかどうかで、学習者は教師を信頼するかしないかを決めます。高邁な理想も、口先だけで実行できなかったら、学習者は教師をかえって軽蔑するかもしれません。有言実行が大切というのは、学校だけに限った話ではありませんが、若い人を導くためには特に大切かと思います。
 
  実行し続けるには、細かな工夫にみちた効果的なシステムが必要です。善意と良心だけでよい教育をしようとすれば、教師自身が疲労困憊するだけです。その点、この本は、教師としての理念と共に、教室現場に実に密着した工夫が多く紹介されています(私としてもも大変参考になりました)。忙しい教師も読めるように、うまく整理された本です。
 
  よいスタートは、その後の教師の苦労を激減させるだけでなく、その後の学習者の豊かな日々をもたらします。4月が始める前にぜひお読みください。
 
  詳しくは、明治図書のホームページを御覧ください。

 
  『高校教師のための学級経営 365日のパーフェクトガイド』


  この著者の上山晋平先生を私は10年以上にわたり存じ上げておりますが、どんどんと力をつけておられます。年齢は私よりずいぶんお若い方ですが、教育実践に関しては私の先生です。笑顔で担任教師・野球部部長・達セミ講師・家庭人などと多面的な活躍をされているところなど、本当にすごいと思っています。上山先生に限らず、優れた実践者はどなたも教育実践に関しての私の先生です。教育学部での私の重要な仕事の一つは、私がそういった先生方から学んだことを整理し分析し編集して学生に伝えることです。




 
 



(注)
   今年度私はたくさんのご著書を著者からご恵投いただきながら、そのどれに対してもこのブログで紹介できていません。誠に申し訳ございません。
   以前は、頂いた本にはそれなりの感想をブログに書くことを自分に対する義務、著者に対する礼儀としていたのですが、2012年晩秋のおたふく風邪以来、私はどうも体調が整わず以前のような調子で仕事ができないため、その義務と礼儀をはたしえていません。それどころか、今年度からは講座主任の仕事がさらに入ってきたので、日々の業務も遅れがちです。

  そういったわけで、ご著書をお送りいただいても、「これを読む前に、以前頂いたあの本を読まなければ・・・」と、感想どころか通読さえままならない状態です。既にご著書をお送りいただいた皆様には、ここで改めてお詫びします。また、もし今後私にご著書を送っていただくことをお考えの奇特な方がいらっしゃいましたら、残念なことに私は以前のようにブログでご著書のご紹介をすることができない可能性が高いことを予めご理解いただけたら幸いです。