2013年5月22日水曜日

田地野先生(京都大学)による「あたらしい英語の教科書」、およびJACET国際大会(8/30-9/1)





私が研究者そして教育者としてもっとも敬愛する一人であり、また冗談をお互いに競い合うように言い合うお笑い仲間でもある田地野彰先生(京都大学)が、NHKラジオ基礎英語1の今年度テキストで「あたらしい英語の教科書」を連載しています。

下に掲載した本でも有名になった「意味順」を基盤とした英語入門です。

こうして改めて見ると、「意味順」というのは、単に語順を教えるのでなく、日本語話者に英語の「意味の枠組み」と「思考回路」を身につけさせる方法だとも思えてきます。

通常の会話だと「スポーツ好き?」「うん、野球が好き」と、英語のような主語を使わない日本語構造(注) に慣れきった日本語話者にとって、"Do you like sports?" "Yes. I like baseball."と、わざわざ"you"や"I"などの主語を入れること、さらに「野球が」は英語にとっての主語には通常ならないことなどを体得することはそれほど簡単でないように私は思います(英語を習得してしまった人間にとってこの困難を想起あるいは推測することは容易ではないかもしれませんが)。

この意味で、「意味順」は、英語とはかなり異なる日本語しか知らない学習者に、英語では何を重要な「意味の枠組み」の要素とし(例えば「主語」「動詞」「目的語」など)、さらにそれらの要素をどのような順番で並べて思考を紡いでいくのかという「思考回路」を明示的に示して生徒に英語の意味枠組みと思考回路を体得させる方法かと思えてきました。

「意味順」は、コロンブスの卵のようなあっけなさをもっていますが、実は深いですし、教育実践としてどんどんと発展できる考え方ではないかと思います。



(注) 私は三上章が言うように、西洋言語のような統語的に強力な「主語」は、日本語にはないと考える方が合理的だと思っています。(参考:文法・機能構造に関する日英語比較のための基礎的ノート ― 「は」の文法的・機能的転移を中心に ―



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田地野彰先生と田尻悟郎先生それぞれによる学習英文法書
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2011/07/blog-post_16.html

































追記

田地野先生がらみでもう一つだけ書いておきますと、8月30日(金)から9月1日(日)に開かれるJACET国際大会(会場:京都大学)は面白そうです。

テーマは「英語教育の連携と相対化」で、文学研究のProfessor Susan Bassnett (The University of Warwick)、ライティング研究のProfessor Ken Hyland (The University of Hong Kong)『ウェブで学ぶ ―オープンエデュケーションと知の革命』でも有名な飯吉透教授といった、日本の英語教育の学会ではあまり呼ばないような研究者を全体講演者として招き、まさに「英語教育の連携と相対化」を考える学会となるようです。田地野先生はこういった人選や招聘にも深く関わっていると聞きました。私はJACET会員ではありませんが、この大会には参加しようと思っています。





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