2011年7月16日土曜日

田地野彰先生と田尻悟郎先生それぞれによる学習英文法書

慶應義塾大学の9.10学習英文法シンポジウムの準備のために、以下の2冊の本を読み、シンポのための論旨をある程度ここにまとめましたが、この2冊はやっぱり良かったです。



は、『<意味順>英作文のすすめで提示された考えが、非常に見やすいレイアウトで提示されたもので、英語のやりなおしのためにいい本かと思います。学習文法書は、読むこともさることながら、使ってナンボだと思えます。





は、本もさることながら付属のCD三枚での田尻先生の講義を聞けるだけで、もう即買いです(これで1200円とは信じがたい価格設定です)。田尻先生の話を一度でも聞いたことがある人は誰でも知っていますように、田尻先生の語りは絶妙で、田尻先生という一人の人間から様々な声が飛び出してきます。それでいて地の語りはプロのアナウンサーのように落ち着いて聞きやすい声ですから、このCDなら何度も聞けます。学習者なら何度も聞いているうちに英文法の内容が頭に入るでしょうし、教師なら何度も聞くうちに田尻先生の巧みな語りを少しは自分のものにできるでしょう(教師の基本の一つは話芸です)。


ともあれ、2冊ともお勧めです。

私としては2冊の本に触発されて、学習文法についていろいろと考えることができました。これからも考え続けて9月のシンポに備えたいと思います。


追記(2011/07/17)

この記事を掲載してある方からメールをいただきましたが、この2冊を読んで益する層の一つは、小学校で英語教育に携わる方々かなとも思え始めました。小学校で英文法を明示的に教えることはないでしょうが、小学校の先生方がこのような英文法の発想を知っておくと、授業に深みがでてくると思います。

『英語教育』2011年8月号特集「夏休みは洋書三昧」

私は英語教育界というところで職を得ている者だが、時にこの業界の閉鎖性が嫌になることがある。何だかいつも同じような人々が、相も変わらぬ同じような事を言って、同じように懇親会で「やぁ、やぁ、やぁ」とビールをつぎあっている。そんな息苦しさを察知し、若い人や新しい人の多くはいわゆる「英語教育界」に深く関わろうとしないのではないかとすら私は考えている。無論、人の寄るところ、頭目となる人も出ようし、その取り巻きも出来てこようし、愛想や追従も必要だろう。人間界に社交という偽善は必要だ。だがそれも鼻につくようになってはいけない。

海外の学会に行くとそのあたりはすっきりしており、いわゆる「偉い人」の仕事は若い人・新しい人の才能を発掘し育てることだという共通認識があるようにも思える(もちろん学会によっては閉鎖性が強いところもあるのだが)。日本の「偉い人」はやたらとスーツに紅白のリボンをつけたがり、長い挨拶をしたがるが、私はそういう日本的な「偉い人」、あるいはその人達を引き立てることを自らの最重要任務と考えているような人はどうも苦手だ。

大修館書店の『英語教育』最新号である2011年8月号は、そのような日本の英語教育界の通弊から免れているように思える。特集の「夏休みは洋書三昧」では、(すべて敬称略で通すが)池内了、柏木博、小森陽一、福岡伸一、三浦雅士、村上陽一郎などの識者が原稿を寄せている。もちろん(広い意味での)英語教育関連の人々も寄稿しているが、それが黒田龍之助、斎藤兆史、柴田元幸など、おざなりのことを書かない人選であることも嬉しい。私の無知で名前は知らなかったが幅允孝、大原千晴の原稿は滅法面白い。拙稿が掲載されているのはご愛嬌として許して欲しいが、私も私なりに「英語の本を読むのは難しい」と最初に身も蓋もないような言い方で原稿を始めて、紋切り型の文章にならないように努めたつもりだ。まあ、私のことはさておき、執筆者一覧はここで見ることができる。

執筆者の一人の鳥飼玖美子が言うように、

「夏休みこそ、日々の仕事から少し離れ、専門を超えた洋書を読むことで、世界を拡げたい」。

人間関係をできるだけ狭く、しかし濃いものにして、がっちりと相互利権体制を確保しようとする「やぁ、やぁ、やぁ」の人を苦手としていることは上に書いた通りだが、実は「夏休みに少し時間が取れますから、TOEICの対策に励みます!」と顔を紅潮させる英語教師善男善女も私は正直苦手だ。その「真面目さ」が狭隘なものに思えて仕方ないからだ。

英語教育という分野から、もっと豊かで深いものを引き出すためにも、夏休みぐらいじっくり好きな洋書を読みたい。




⇒『英語教育 2011年 08月号』(アマゾン)

近江誠先生の「近江アカデミー」

私が大学生の時、一番共感した英語教育の本の一冊が近江誠先生の『頭と心と体を使う英語の学び方』だ。以来、私は近江先生の言動を注目しているが、近江先生の主張は、英語教育の「表面化」というか「浅薄化」が目立つ昨今、ますます重要性を増しているように思う。

近江実践は何よりも英語が使えるようになることを目指しているが、その場合の英語力とは深いところで人間的交流を築けるものである。いわゆる「英会話」のような決まりきったことをペラペラいくら流暢に話そうが、深い信頼関係など培えるわけはないではないか。内容のないことを、ベラベラと喋り続け、書きまくる人間は、私からすれば「うるさい」。それだけだ。

その近江先生は、少し前から


近江アカデミー
http://omi-academy.com/



を始められている。ツイッターでは何度かご紹介させて頂いたが、この前、音読について研究している院生が近江先生のことを知らなかったので驚くやら危機感を覚えるやらでここで紹介することにした。ご興味のある方はどうぞご覧ください。

ついでながら、自分勝手で無責任な自称「近江ファン」からすれば、『頭と心と体を使う英語の学び方』は、ぜひ増補改訂版を出していただければと思っている。近江先生の基本的な考えが凝縮されていると思うからだ。一時期は中古市場で2万円ぐらいの値がついたこともあるこの名著が、さきほどアマゾンの中古市場では300円で出ていた。早い者勝ちでどうぞ。

キンドル3(Kindle3)のWi-Fi接続ができない! - しかし解決はあっけなかった(笑)




iPad2の素晴らしさはもう予想以上で、私の知的生活はがらりと変わってしまった。電子書籍もこんなに快適で便利なものだとは思っていなかった(書籍はやはり手にとって読めるということが重要だ)。

そうなると電子書籍を長時間読みたくなる。iPad2の数少ない欠点の一つはバッテリーだ。出張の新幹線でiPad2で読書をすれば、下手をすれば出張先でiPad2がバッテリー不足になりかねない。そうなるとiPad2とはまったく異なる電気の使い方で、2,3週間は充電の必要がなく、しかもiPad2よりはるかに軽いKindle3が欲しくなった。出張が続く夏をKindleで少しでも快適なものにしたくなった。

iPad2では、少なくも私の生活圏では非常に電波の入りが悪いSoftbankを嫌って、私は3Gタイプでなく、別の無線Wi-Fiルーターを使うWi-Fiタイプを買った。ルーターはドコモ/バッファローの製品で、実はiPad2の時も最初の接続にえらく苦労したのだが、このルーターがあるのだからとKindleも若干価格が安いWi-Fiタイプを買った。

だが、今回も接続に苦労した。自分でネットを検索して情報を得ながら数時間かけて試みたがダメで、ついに情報の先生に泣きを入れて助けを求めてようやく接続できた。

KindleのWi-Fiの設定に関しては、結果的には以下のサイトの情報でなんとかできると思う。


キンドル(kindle)購入とWi-Fiの設定方法・奮闘記録
http://0948779.blog18.fc2.com/blog-entry-359.html

Kindle 3 Wi-Fi 設定の問題
http://token.sakura.ne.jp/wp/?p=1013

Amazon Kindle3のwifi設定の仕方
http://d.hatena.ne.jp/daysleeeper/20100903/T



私が苦労したことを、上記サイトとの重複も恐れず書くならば以下のようになる。

(1) キンドルそのもののキーボード操作への不慣れ:
すぐに操作方法はわかるが私のように気の短い人間には、キンドルのキーボード入力方法はイライラくる。長時間の作業ではこれが結構こたえた。
特に、
(1.1)数字入力への移行(Symボタン)が面倒であること
や、
(1.2)IPアドレス(後述)の桁移動の場合は一端数字入力から離れなければならないこと、
などがイライラの原因になった。


(2)キンドルは初期設定のDHCPではなく、Static(固定IP)で設定しなければならない:
これは上記サイトが真っ先に指摘していることだが、作業の仕方によってはIPアドレスの
(2.1)再入力が必要となり、そのたびにまたイライラしたり、
(2.2)Security Typeが WEP, WPA, WPA2のどれを選んでいいかわからず、しらみ潰しに作業しなければならなかった、ことなどで時間がかかった。


(3)Wi-Fi無線ルーターの諸設定情報で混乱:
iPadの場合はWindowsマシンのように面倒なことをしなくてもこの情報がすぐにわかるが、
(3.1)IP Addressの最後の桁の値を、適当な数字に変えなければならない、という指示で、まず「適当な数字」がわからないし、そもそも変えなければならないのかがわからないので、混乱した(結果的に私の場合は変える必要はなかった)
(3.2)ルーターにキンドルのMACアドレスを登録しなければならない(かもしれない)という指示があったので、MACアドレスをドコモのサイトで新規登録したが、このような作業に不慣れな私はこれで滅法時間をとった。(情報の先生は、「こんなことまでしなくてもよかったと思いますけどね」とおっしゃっていた)。
(3.3)「ルーターの暗号化キー(password)」が何なのかわかりにくかった。私は上記(3.2)の作業からドコモで使用したパスワードがここでの「ルーターの暗号化キー(password)」だと思い込んでいた(ドコモには他にももう一つパスワードがあるので、最初は2つのパスワードのどちらを使うのかでも迷った)。結局はここで必要とされているのは、ドコモ/バッファローの13桁の記号列だった(12桁の記号列の方ではだめ)。この私の間違いが判明するや、接続はすぐにできた。(ただし(1)と(2)はきちんとやらなくてはならない)。


結果的には、私の知識不足で情報の先生の貴重な時間を奪って(さすがに些少のお礼はさせていただきました)Kindle接続はできたが、iPad2にせよKindleにせよこのような問題は多いと思う。

今回の問題は、私がドコモのパスワード(MACアドレスのために必要)とバッファローのパスワード(紙の書類には書いておらず、自分で機械を開けて確認しなくてはならない - しかもその表記は小さいので私は視力のいい人に頼んで読み上げてもらわなければならなかった)を間違えたことが最大の原因だった。

Amazonは比較的カスタマー対応のよい企業だと思うが、どうも米国ではこのようなトラブルはあまりないらしく、Amazon.comのページには私の問題にとって有益な情報はなかった。ドコモ/バッファローのカスタマー対応に関してはコメントは控える(May the illocutionary force be with you)。Wi-Fiについてある程度の知識があれば問題解決は可能だろうが、私が助けを求めた先生でも作業を進めながら原因を特定するのに20分ぐらいはかかってしまった。

このようなトラブルが生じかねないこと、およびいちいちルーターを出さなくてもKindleの全機能が問題なく使えることからすれば、私としてはKinldeは3Gモデルを買うことをお薦めしたい。3Gといっても通信料はAmazonもちだから、こちらとしては通信料を払うことは一切無い。最初はちょっと高いが、3Gモデルの方が快適だと思う(数時間かけて接続ができなかった時、私は真剣に3Gモデルを新たに買うことすら考えた)。



とはいえ、私の場合は何とか接続に成功し、Kidle3がいつでも使えるようになった。結果オーライで言うなら、これからの読書生活が楽しみだ。


追記

Webで長い記事を見つけたら、その記事はChromeブラウザーならワンクリックで自分のKindleに送れる。記事に印刷モードが用意されているなら、それをそのまま送ればいい。これは便利、というか快適。

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