しかし英語学習もダイエットもそんな単純なものではありません。専門家の役割は、そんな一般人のコンプレックスにつけこんだような商売に便乗することではなく、英語学習やダイエットの原理をわかりやすく解説することでしょう。そこでは厳密な科学者の目と、健全な常識人の感覚の両方が必要です。そしてその両者を兼ね備えた人はなかなかいません。
ですが、英語学習においてはこの良書があります。認知科学者でありながら、なみの英語教育の専門家とは比べ物にならないほど大きく、英語教育(特に小学校英語教育)に対して啓発的な活動を行っている大津由紀雄さん(慶應義塾大学)です。
この読みやすくコンパクトな新書は「しっかりとした英語を身につけたいと思っている方々、そして、将来のためにお子さんに英語を身につけさせたいと考えている方々を念頭において」(4ページ)書かれたものです。話の流れは、英語学習について、ダイエットと同じようにはびこっている誤解を、丁寧に解き明かすというものです。
その誤解とは
(1) 英語学習に英文法は不要である
(2) 英語学習は早く始めるほどよい
(3) 留学すれば英語は確実に身につく
(4) 英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である
(5) 英語はネイティブから習うのが効果的である
(6) 英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である
(7) 英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある
の7つです。どれもどこかで聞いたことのあるような見解ではないでしょうか。それらを大津さんは、認知科学の知見を引用したり、健全な常識を働かせたりして、これらの誤解に挑みます。
といってもこれは英語学習に関する知的探究だけに終わっている本ではありません。付録2では英語辞書と英文法書の親切なガイドがあります。付録1は、英語学習の根底にあることばの深さをわかりやすく語った名エッセイです。
「英語ってどうやったら身につくの?」この単純な疑問を持つ方、あるいはこの疑問をぶつけられる方はぜひ本書をお読みください。
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