時代の指針を示してくれる本というのがあります。知恵のかたまりのような書籍で、それを読むことで時代の潮流がわかり日々のさまざまなニュースに対して一つの有用な解釈枠を与えてくれるような本です。
私が高校生の時、化学の先生がアルビン・トフラーの『第三の波』を薦めてくれました。化学の授業内容の理解はおぼつかない私でしたが、その先生はいい先生だと思っていたのでそのことばを信じ、購入して読みました。よかった。時代を理解するための一つの参照枠としてきわめて有効でした。まとまった本を読むことの良さの一つはこのような知恵を得ることにあるでしょう。
ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるトマス・フリードマンには『レクサスとオリーブの木』や『フラット化する社会』という本があります。私もこれらの本をその時々に読み、時代を理解するための指針の一つとしました。
過去の紹介記事(スクロールしてください)
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/review2000.html
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/review2006.html
ここに紹介する『遅れてきてくれてありがとう』はそのフリードマン (https://twitter.com/tomfriedman) の近刊です。
彼のコラムはニューヨーク・タイムズ(月額20ドル払えば読み放題)でいつも読んでいますが、改めてこのように書籍というまとまった形で読むと非常に勉強になりました。(それに日本語翻訳ですと本当に速く読めます)。
その知恵を学生に伝えるため、原著もKindle版で購入し、授業用に英語を抜書きしていたら、その引用は1万語を超えました。そのエッセンスを学生に提示するためにパワポに再編集もしましたが、そのパワポも引用が多すぎて著作権上、ここに公開するわけにはいきませんから、ここではその本を薦めるだけにしておきます。
先日「広島大学訪問」で来てくれたある公立高校の一年生にも私はこの本を薦めましたが、高校生レベルの読解力でも十分読める本だと思います。
この激変する時代を読み解くためには、こういった一般書は重要だと思います。読んでいない皆様には、ぜひお薦めします。
しかしこの本も強調するように時代の変化はますます加速しています。この本とて、例えば2016年冬のGoogleのNeural Machine Translationの採択とその影響などはカバーできていません。
時代を追うためには「新聞を読め」というのが常套句でしたが、それなりに日本語での新聞報道と英語での新聞報道を読み比べている私としては、時代の変化に対する感度は、日本語報道が圧倒的に低いように思えます。一種の認識のギャップさえ感じます。英語での報道も読むべきだと考えます。
私が大学生であった頃は、松本道弘氏の影響もあり「TIMEを読め!」が英語学習者の間での一種の合言葉でしたが、今はスマホやタブレットのアプリなどでThe New York Timesを読むことが英語学習者の間で広く共有された習慣となるべきではないでしょうか。
英語学習者としては、とりあえずは信頼できる英語メディアをツイッターなどのSNSでフォローすること、そしてそこで学べた知恵を拡散することを習慣にすればよいのではないでしょうか。英語学習者の一人としての私の実感です。
ちなみに私は、資格試験の点数向上にしか興味がない英語教師や英語教育関係者にはまったく共感できません。資格試験対策を不動の前提とした英語教育や英語教育研究ばかりを推進する方々は「教育」をいったい何だと考えているのか、私には理解できません。