2013年11月20日水曜日

小林雅一 (2013) 『クラウドからAIへ』 朝日新書

[この記事は、「英語教師のためのコンピュータ入門」の授業資料の一つとして書かれたものです]

AI (Artificial Intelligence 人工知能)という概念には、当初過大な期待が寄せられたので、その後の失望感が大きく、むしろ着実な技術的発展を遂げるIA (Intelligence amplification 知識増幅) のアプローチの方が優勢でした。しかし、最近はIAの方が伸び悩み、AIのアプローチの方が急速に(しかし一般大衆がそれとは気がつかない形で)進化していると本書の著者はまとめます(104ページ)

最近のAIの例として挙げられているのは、IBMのWatsonAppleのSiri、Googleのセマンティック検索ロボットカーなどですが、日本ではロボットは東大に入れるかのプロジェクトがあります。
















これらのAIの動きが、人間の歴史を大きく変えていることは、以下のTED動画でもよくわかります(この動画はNHKのスーパープレゼンテーションで知りましたが、どうぞ、ぜひ御覧ください)。ある意味で、恐怖を感じるような内容です。










そもそもこのように機械が人間を凌駕する可能性についてはシンギュラリティ(技術的特異点)singularity)として語られ続け、研究も続けられています。この概念を胡散臭いものとして批判する向きもありますが、現実は私たちの認識を超えつつあるのかもしれません。



本書で著者は次のようにまとめます。

今や最先端の科学技術は一般大衆の理解が遠く及ばない世界で展開し、科学者の知的探究心に駆られた研究開発は常に暴走の危険性を孕みながら、ごく一部の政治家や完了だけが、その手綱を握っています。しかし往々にして専門的な知識と真の洞察力を欠き、様々な利権と既得権にまみれた彼らが、本当に正しい決定を下してくれるのでしょうか。「むしろ並外れた知力と中立性を兼ね備えた、AIマシンに判断を仰いだ方がマシではないか」という意見が、悪い冗談では済まなくなってきています。

今、まさにこの時代にAIが本格的な実用化に入ったことは、それを示唆しているのでしょうか。あるいは、それは単なる偶然に過ぎず、私たち人類は自力で危機を回避できるのでしょうか。答えは私達自身が今後、科学技術とどう向き合っていくかにかかっています。 (247ページ)




人文系といえど科学技術の進展に注目をしなければなりません。いや、むしろ、これからはAIなどの発展により、「人間とは何か」、「人権とは何か」といった問題が、具体的な争点になるでしょうから、人文系こそ科学技術のあり方に広く関心をもたなければならないと言えるかもしれません。








追記 (2013/11/26)

NHKニュースは11/23に、人工知能が大手予備校のセンター試験模試を受験し、900満点中387点(偏差値45相当)を取ったことを報道しました。以下は、その一部です。

東京大学合格を目標に、国立情報学研究所などが中心となって開発を進めている人工知能「東ロボくん」が、大手予備校のセンター試験の模試を初めて受験し、全国およそ400の大学でA判定を獲得する成績を収めました。 「東ロボくん」は国立情報学研究所や大手電機メーカーなどが共同で開発を進めている人工知能で、9年後の2022年春までに、東京大学の入学試験を突破できる知能の開発が目標です。 23日は都内の大手予備校で東ロボくんが受けた初のセンター試験の模試の結果を講評するイベントが開かれ、900点満点中387点を獲得したことが発表されました。 この得点は偏差値で見ると45ですが、「数学I・数学A」と「世界史B」、「日本史B」の3科目では平均点を上回り、国公立の大学1校を含む全国404の大学で、8割以上の確率で合格できるA判定を獲得しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131123/k10013287631000.html






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