広島大学教育学部は8/10(金)にJR博多シティ会議室で下記のセミナーを開催します。
2012年度高等学校教員のための指導力向上セミナー
http://www.hiroshima-u.ac.jp/news/show/id/14356/dir_id/23
http://www.hiroshima-u.ac.jp/news/show/id/14356/dir_id/23
主な内容は以下のとおりです。
第1部 講演 (10:00-12:30)
○「生きる力」を育む教育課程
文部科学省初等中等教育局視学官 長尾篤志
○教員の資質能力向上を目指した人事評価制度の活用とその留意点
広島大学大学院教育学研究科教授 古賀一博
第2部 (14:00-16:30)
教科教育の最先端-これからの高校教育はどう変わるか-
第1分科会 『授業は英語』での現状と課題
発表1 井ノ森高詩 (明治学園高校)
発表2 小橋雅彦 (広島大学附属中高等学校)
発表3 柳瀬陽介 (広島大学教育学部)
第2分科会 高校音楽科教育の新しい方向性を考える
発表1 津田正之 (文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官)
発表2 東正生 (熊本ミュージックテクノロジー教育研究サークルNEW WINGの会)
発表3 徳永崇 (広島大学教育学部)
第3分科会 教科の枠をこえた授業研究のあり方を探る
発表1 石村秀一 (熊本県立第二高等学校)
発表2 鶴田英二・越智隆伸 (佐賀県立佐賀西高等学校)
発表3 小河原薫 (福岡県立小倉東高等学校)
お近くの方はぜひお越しください。なお定員100名で、7/20締切ですので、上記URLからできるだけお早めにお申込みください。
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下記は、第一分科会の発表要旨です。
『授業は英語』での現状と課題
企画の趣旨説明
企画の趣旨説明
柳瀬陽介(広島大学)
学習指導要領は、高校では2013(平成25)年度の入学生から「授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする」(第8節外国語第3款の4)と定めています。
学習指導要領の方針・趣旨は、いたずらにいわゆる「オール・イングリッシュ」を求めるものではなく、文法説明など日本語の説明が必要な場合には日本語使用を認めるものです。ですが、そのような方針・趣旨はよくわかるものの、教育現場では「進学対策がおろそかになるのでは」、「教員が長年の授業スタイルを変えるのは容易ではない」、「そもそも授業のポイントは使用言語にあるのではない」等々といった意見も聞かれるようです。
こういった中、現状分析を抜きにして「学習指導要領が変わったのだから、とにかく『授業は英語で』にしなさい」として、教師が不承不承、外見だけ使用言語を英語にしただけ授業を取り繕うことは避けるべきでしょう。教育において最も大切にされるべきなのは、生徒の学びだからです。かといって現状にあぐらをかいて、改革を一切拒否することは許されません。必要なのは冷静な現状分析に基づく、現実的な授業改善が必要かと考えます。
そこで午後の「これからの高校教育はどう変わるか」の総合テーマのもと、この第一分科会では「『授業は英語で』の現状と課題」をテーマとして討論します。会場のコミュニケーションをできるだけ促す形式で行います。現状の全面的否定(高圧的な改革の押し付け)と全面的肯定(開き直りの改革拒否)の両極端を避け、高校英語教育の現実的な改善の途を探ります。会場で、正直で多様な声をお互いに聴き合うことを大切にした会にしたいと考えています。ぜひご参加ください。
英語で授業の考え方、捉え方
~英語・日本語の使い分けと授業の準備~
井ノ森 高詩(明治学園中学高等学校)
1. 英語で授業の前提として
(1) なぜ「英語で授業」なのか
「授業を目標言語によるコミュニケーションの場にする」、「言語材料の音声による提示」と同時に「成功した英語学習者としてのモデルの提示」を
(2) 英語教師はどんな英語を身につけるべきか
「モデル」となりうる英語とは・・・文法、発音、プレゼン力
2.いつ英語を使うのか
(1)英語と日本語の使い分け
評価に関する説明、文法(型)の説明、活動の説明・指示、ダメだしは日本語で
(2)教材の導入と説明
オーラルイントロダクション、キーワードでパラフレーズ
(3) Visual Aid の活用(目から入る「英語で授業」)
パワーポイントを使いこなすために教室のハード面の整備を
3.生徒に英語を使わせるために
(1)十分なインプットを与える
ルーティーン化された表現、長くない表現、生徒の背景知識に配慮した表現、そして実際に授業がコミュニケーションの場となる表現を与え続ける
(2)活動の目的を明確化する
教師が実演して見せる、飲み込みのはやい生徒ペアに実演させる、過年度生のビデオを見せる、などしながら、日本語でしっかり活動の目的を明確化した上で、生徒に英語を使わせる
4.準備段階での心がけ
(1)慣れるまでは指導案を作る
よく使う表現はセリフをしっかりと台本に書き込み、タイミングも授業前に確認
(2)イメージトレーニングを行う
実際に声に出して、パワーポイントを操作しながらリハーサル
「授業は英語で行うこと」の意味
―説明中心の指導からコミュニケーションに活用させるための文法指導へ―
―説明中心の指導からコミュニケーションに活用させるための文法指導へ―
小橋 雅彦(広島大学附属中・高等学校)
1. はじめに
「授業は英語で」行うのか,「英語で授業を」行うのか。学習指導要領においては「授業は英語で」である。しかしながら,「英語で」の部分が世間で注目を浴び,「英語で」というフレーズがさまざまなコンテクストの中で使用され,「どこまで英語で」の議論の中で落としどころが見つからない。発表者にとって,「英語で」が文頭であろうと「授業は」が文頭であろうと構わない。「生徒を授業に英語で参加させる」方法を考えることが先決である。
2. Form - Meaning - Use
生徒が文法事項を習得してゆくとき,それらに関する説明を読んだり聞いたりし,ドリルによる演習を行い,意味を伴った英文を産出するときには「形式の正確さ」が求められる。しかしながら,産出される英文が正確であるだけでなく,文法がコミュニケーションを支えるためには,「適切さ」を兼ね備える必要があることは,論を俟たない。本提言では,「適切さ」の指導を「活用」と捉え,コミュニケーションを支えるための文法指導とは何かを考える。そして,生徒が口をそろえて「おもしろい!」と言った指導事例を紹介する。
3. Psychologically Authentic Way
これまで文法指導をしてきた中で,生徒が「おもしろい」と感想を述べたことは一度もなかった。さして,言語活動に工夫があったわけでもない。思い当たるのは二点,「教師の説明から入るのではなく,Useを意識させ授業の主導権を生徒に預けたこと」と「すぐに教師は正解を言わず,生徒には協同的に正解を求め続けさせ,意味を実感するまで待ったこと」である。学習指導要領解説は,文法事項の扱いについて次のように述べている。『この項目は,「コミュニケーションを行うために必要となる」程度が特に高い言語材料について,詳細な説明は必要最小限にとどめ,語句や文構造,文法事項などを,表現しようとしている意味や使い方として理解し,適切に活用することができるよう,…』生徒の反応が腑に落ちた瞬間である。
4. おわりに
教師が滔々とオーラル・イントロダクションを続け,教科書本文の要約を語ってしまうことが,英語を使い,知の森の中を散策する楽しみやその機会を奪うことにならないか。また,教師は同じオーラル・イントロダクションを複数回異なる教室で行える機会を得るため,教師の英語によるプレゼンテーション能力のみがどんどん上達してゆくことは,生徒の側に立てば不公平であるとは言えないか。
当日は,「生徒を授業に英語で参加させる」ことができる授業デザインの工夫を参加者の方々と語り合えたら幸いである。
コミュニケーションの6側面から検討する「英語での授業」
柳瀬陽介 (広島大学)
授業も一つのコミュニケーションです。もちろん授業過程のうち、一部には「知識の情報伝達」および「機械的な身体訓練」とも総括できる側面もあるでしょう。しかしやる気満々の生徒ならともかく、生徒の心が動かなければ、いくら大量の知識が情報伝達されても、生徒の身に入ってはゆきません。またいくら機械的訓練を重ねて一定の英文を正確かつ高速に再生できるようになっても、さまざまに変化する諸関係の中で適切に発話を重ねてゆくコミュニケーション能力は身につきません。私たち英語教師は、少なくとも「授業というコミュニケーション」と「授業を契機にして生徒に身につけさせたい英語コミュニケーション能力」といった観点から、コミュニケーションについて深く理解しておく必要があります。
さて、指導要領により「授業は英語で行なうことを基本とする」こととなりました。この方針で、授業というコミュニケーションはどう変わる、あるいは変わりうるのでしょう。本発表ではJakobson (1960)のコミュニケーション・モデルを基盤として、コミュニケーションの6つの側面から、授業というコミュニケーション、および生徒が目的にしている英語コミュニケーションについて検討します。そのモデルの概要は以下の図で表現できます。
参考:
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2009/01/blog-post_14.html
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2012/05/6.html
http://yanaseyosuke.blogspot.jp/2012/06/blog-post_26.html
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この分科会で講師をお願いした井ノ森先生と小橋先生には、大変にお忙しい中にご無理を申し上げました。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
なお井ノ森先生の上記の内容は、以下の本で詳しく読むことができます。合わせてご参照下さい。(この他の意味でも、下記の書はお薦めです)。
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