しかしコミュニケーションは言語以外の媒体も多く使うものであり、言語をまったく使用しないコミュニケーションも実際に存在する以上、言語の極からだけでコミュニケーションを考えるのは明らかに偏っていると言えましょう。その点、私などにとっては常識的な意味での言語の存在に根源的な疑いさえかけるデイヴィドソンのコミュニケーション論などは刺激的でした。
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/GlobalError.html
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/DComComp.html
しかし私のような英語教育関係者にとっての関心事は、あくまでも言語を主な手段として使ったコミュニケーション(以下、言語コミュニケーション)です。そうなりますと、言語コミュニケーションを、言語にも、(言語抜きの)コミュニケーションにも偏らずに捉える枠組みが欲しくなります。
末田清子先生と福田浩子先生によるこの『コミュニケーション学―その展望と視点』松柏社は、言語コミュニケーションをバランス良く概説した格好の教科書といえるでしょう。この本に書かれているようなことは、一応まんべんなく知っておくことが、言語コミュニケーションをきちんと考えるためには必須のことと言えるかもしれません。私はこの本を「言語コミュニケーション力論と英語授業」という授業、および私のゼミの副読本として指定しようかと今考えています。
この本は「コミュニケーションの四つの視点」として
機械論的視点
心理学的視点
相互作用的視点
システム論的視点
あげ、コミュニケーションを理論的にも包括的にとらえようとしています。
また「コミュニケーションの要素」としてこの本が掲げている枠組み(20ページ)を私なりに(少しだけ変えて)再掲しますと次のようになります。
1 Verbal messages
1.1 Verbal-vocal messages (spoken languages)
1.2 Verbal-nonvocal messages
1.2.1 Written languages
1.2.2 Sign languages
2 Nonverbal messages
2.1 Nonverbal-vocal messages (vocalics)
2.1.1 Prosodic features
2.1.2 Paralanguage
2.2 Nonverbal-nonvocal messages
2.2.1 Appearance (objectics)
2.2.2 Body touch (haptics)
2.2.3 Body movement (kinesics)
2.2.4 Smell (olfactics)
2.2.5 Space (proxemics)
2.2.6 Time (chromemics)
言語コミュニケーションといった非常に総合的な現象を考える際には、このような枠組みは非常にありがたい。これらの枠組みに即してコミュニケーションを概説する本書は、学部生・院生のみならず、言語コミュニケーションを考えようとする人は手元に置いておきたい本かと思います。
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追伸、
最近は忙しくてブログにも記事が書けませんが、2009年3月6日(金)の10:00-18:00に開催される慶應義塾大学言語文化研究所の言語学コロキアムでの講演だけは成功させなければと思っております。興味のある方はどうぞご参加ください。
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