今年も幸運なことに大修館書店『英語教育増刊号』の年間書評を執筆させていただく機会を得ました。先ほどその第一稿を完成させましたが、その際、ページ数の関係で泣く泣く割愛しなければならなかったのが、この本の紹介部分です。このまま没にするのは惜しいので(←貧乏根性)、このブログに掲載します。
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頭のいい方の書いた本を読むことは本当に楽しい。頭のいい方は深い。一つのことに関して、詳しくデータを取り、文献も調べて、かつ自分の頭で考えているから、伝えられる知識が確かだ。
そして広い。周辺分野のみならず視野広く日頃から物事を考えているから、論述のバランスがいい。さらには新しい。一つのスタイルを確立してもそれに安住することなく常に自己進化を図っている。またセンスがいい。だから著作も見て楽しいものに仕上がる。加えて現実的だ。理論を語ってもそれはしっかりと現実に根ざしている。最後に親切だ。著者自身の事情ではなく、読者の関心を的確に捉えて本が書かれている。こんな本に出会えることは読書の喜びだ。
本書はまさにこのような本だ。英語の優れた学習者の学習についての深く確かな知識は本文でわかりやすく解説され、詳細は通読を妨げないようにコンパクトに脚注でまとめられている。広くてバランスの取れた思考は数々の引用句に表れている。新しい自己進化は、学習者研究に社会的視点やネガティブな感情といった新しい研究対象を開拓した。センスの良さは、写真・図表・レイアウトなどで一目瞭然だ。現実性は、学習者へのアドバイスの具体性に明らかだ。親切さは本全体のわかりやすさに具現化している。深く、広く、新しいのにわかりやすい。良書だ。一流の研究者による良質の啓蒙書といえよう。
英語教師なら他の職業人に「英語の勉強ってどうやればいいのですか」と聞かれることも多々あろう。その人が友人ならこの本をプレゼントすればどうだろう。いや、永遠の学習者である英語教師は、自分自身へのプレゼントとしてこの本を自分自身に贈ってみればどうだろう。
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