2.2 システム合理性による目的合理性の再検討
(以下は、ルーマンの『目的概念とシステム合理性』からの抜き書き的なまとめである。( )の中の数字は邦訳のページ数を指しているが、このまとめには柳瀬の言葉もかなり混じっているので注意されたい。このまとめは同書の正確な要約では決してないない。またこの時点では柳瀬はドイツ語原典を参照していない)
■古典的組織科学について
・古典的組織科学では、組織は、特定の目的を実現するために整えられたシステムとして把握されてきた(37)
・古典的組織科学では、目的/手段図式とハイアラーキーの構想が結びつけられ、システムはあまりにも単純な環境のイメージを抱くようになる(50)
・しかし目的概念は今や、特殊な機能をもった変数として、組織された社会システムについてのより包括的な理論のなかに組み込まれるべきである(57)
■システム理論について
・システムとは、複雑で変動する環境の中で内/外の差異を安定化することにより自己を維持するような同一性である(123)
・世界は常に、世界のなかにあるどんなシステムよりも複雑である。世界のなかではシステムの内部におけるよりも多くの出来事が可能である(123)
・システムは世界より、自分自身に振り分けられる可能性をより強く制限しなければならない。複雑性を縮減し、わずかの可能性でもってより高度の秩序を確立しなければならない(123)
■目的概念とシステム合理性
・目的設定の機能もやはり複雑性と変動性の吸収にあると考えられる(126)
・目的思考は、複雑性と変動性の吸収という根本に関して機能的に等価な、いくつかのシステム戦略としてとらえることができる(127)
(a)主観化:客観的な状況のかわりに主観的な状況を用いることによってシステムは環境の状況を根本的に単純化する(128)
(b)制度化:主観化において、体験処理の特定の形式(知覚の習性、現実解釈、価値)を制度化し、システムの可動性を限定し、自律性を制限する(129)
(c)環境分化:環境に境界を形成し、環境の断片と関係をつくることにより、多くの環境変動から影響を受けないようにする(129)
(d)内的分化:内的にも分化し、環境から来る攪乱的効果をシステムの部分へと局所化し、他の部分への波及を押さえる。部分では学習能力が高まる(130)
(e)システム構造の無規定化:システムには定常的に保持された視点としての構造が必要だが、そこに未規定の側面を残しておき、環境において生じる複雑性と変動性を、構造を変動させることなく吸収させる(131)
・システム戦略としての目的を次のように言い換えることもできる
(a)目的は未来の結果についての主観的な観念である(131)
(b)目的は行為の基礎あるいは結果として制度化される(132)
(c)目的は環境分化に適合するように特殊化することも可能である(132)
(d)目的は内的分化の原理としても働く(132)
(e)目的がもつ規定性の程度は可変的である(132)
・これらのシステム戦略は常に組み合わせて用いられる(131)
・目的は、システムの環境における複雑性と変動性の吸収という問題に関して、多くの相を媒介する機能を担っている。それゆえに目的は調整する一般化と見なされうる(132)
・目的モデルと存続モデルを包括する複雑性縮減の手続きにおいては、存続モデルが出発点と基礎を形作り、その上で問題が特定の構造を獲得し、複雑性が大幅に吸収された場合に目的モデルが持ち出される(107)
・目的は変数である。目的の明確さ、および目的の抽象性の設定は変化しうる(154)
ルーマン著、馬場靖雄・上村隆広訳 (1990) 『目的概念とシステム合理性』勁草書房
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