2008年4月15日火曜日

梅田望夫『ウェブ時代 5つの定理』文藝春秋

買って良かったです。現在進行形の世界史的大変化を引き起こしている考え方への理解が深まるように思います。ウェブにより新しい「良い」世界を創り出そうとしている人々の、心にまっすぐ届くことばと、それをめぐる梅田さんのエピソードや考えが読めます。

この本のコンテンツの重要な部分である名言とその翻訳を大量に引用することは著作権上も控えるべきでしょう。しかしこの本で使われている梅田望夫さんと翻訳家の上杉隼人さんの翻訳ではなく、拙訳を少しここに掲載することは社会的に許容されることかと思います。

というわけで、私の個人的に印象に残ったことばの拙訳を以下に掲載します。


常に目指すことは、最高の倫理。そして開かれたやり方で物事の真実を追求すること。隠し事はしない。 スティーブ・ウォズニアック (本文59ページ)


一流の人間は一流の人間と共に働くことを望む。二流の人間は、とかく三流の人間を部下におこうとする。 シリコンバレーの格言 (本文93ページ)

すごいと言われるだけで満足などしない。人々の期待以上の成果を常に出せ。グーグルにとって、世界一であることは目的ではない。それは出発点だ。 グーグル10カ条の10 (本文194ページ) 参考サイト:グーグルの哲学

私たちは誰よりも速く、誰よりも創造的に仕事をやり遂げる。合意形成を大切にするが、それは莫大なデータを使って行う。 エリック・シュッミット (本文206ページ)



ただ梅田さんにしてもウェブ文化について手放しで楽観しているわけではありません。一つは日本にはびこる匿名投稿文化です。


この「匿名性の方向に偏った」日本語圏ネット空間に特有の文化が、ネットの持つ豊穣な可能性を限定し、さまざまな「良きもの」が英語圏ネット空間では開花しても日本語圏では開花しないのではないかと、最近はそんな危惧を、強く抱いています。(本文223ページ)


私も同意します。匿名でしか言えないことというのは、社会では確かにありますが、ネットでの匿名発言の全てがそのように社会的に厳しい状況からの発言とはとても思えません。ネットの匿名発言は、よく言って怯懦、悪く言うなら狡猾、最悪の場合卑怯だと言えるのではないかと私は思っています。他愛もないことの発言ならともかくも、きちんとしたことを発言するときには、実名を使う文化が日本でももっと普及することを私は望んでいます。

最後に、私の懸念を述べます。梅田望夫さんの著作や、この本の最後にも取り上げられているスティーブ・ジョブスの演説はまさにinspiringで、私はそれらにたいしてシニカルな態度は取りたくありません。

しかし、最近の若い人のうち、自分の限界まで勉強したこともなければ、スポーツや音楽などに寝食を忘れるぐらいに熱中したこともない、「オレ」や「ボク」あるいは「ワタシ」が、「夢」ばかり追って、目の前にあることをきちんとしないのはとても怖ろしいことだと思います。「夢」を追求したいのなら、梅田さんの次のことばは噛み締めておくべきでしょう。


優れたアントレプレナーに共通する特徴は、人生のある時期に、たいへんな集中力と気迫で、新しい知識を確実に習得している、ということです。貪欲なまでに強烈な意志を持って、自ら道を切り開いていく。好奇心旺盛なアントレプレナーたちは、不確実な未来にいかようにも対応できるよう、徹底して「学び続ける意志」を持っているのです。(本文23ページ)


若い人に強くお薦めします。もっともっと勉強して、ワクワクするような人生を送りましょう。

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