明日(2007/11/24)の「田尻科研シンポ」の柳瀬口頭発表のための参考資料です。当日、柳瀬はパワーポイントプレゼンテーションで説明するだけですので、以下の資料は、そのプレゼンテーションを補うものです。
ルーマンのシステム理論を援用しましたので、一言。ルーマンについては10年以上前に少し読んだだけですが、自らの身につくことはありませんでした。しかしその後、私は、コミュニケーションについて考え、関連性理論を通じてその考えを洗練させ、ルーマンの影響を受けているハートとネグリの<帝国>概念に親しんだりしていました。さらに田尻先生の実践をどうまとめようと悩んでいた時ふと読んだ西垣通先生の本がルーマン的考えに基づいていたので、「そうか、ルーマンの理論でまとめられるかもしれない!」と直感的に思い、ルーマンを読み始めました。
『ルーマン 社会システム理論 』や『ルーマンの社会理論』はわかりやすい入門書でしたし、ルーマン自身による『システム理論入門 (ニクラス・ルーマン講義録 1)』や『ポストヒューマンの人間論―後期ルーマン論集』や『社会の教育システム』も比較的わかりやすい本でした(もちろん「比較的」です!)。しかし何と言っても勉強になったのは『ルーマン/社会の理論の革命』の詳細な説明です。この本はあと何度か読み返して、ルーマンの全体像を私なりにもう少しきちんと理解したいです。これらの本(特に『ルーマン/社会の理論の革命』)があったからこそ、ルーマンの主著の一つである『社会システム理論(上)』、『社会システム理論(下)』を何とか読みこなすことができました。
今回の私の発表は、その『社会システム理論(上)(下)』の(浅薄な)理解に基づくものです。ですから後年ルーマンがあまり使わなくなったような用語も私の論の中では使われています。また私はこの本を日本語訳で読んだだけで、ドイツ語の原文は読んでいません(第一私のドイツ語力は、翻訳書と辞書と文法書を横にならべて、部分的に解読するのが精一杯の拙いものです)。英訳された本もまだ読んでいません。このような理由で、私は自分がルーマンを学術的レベルできちんと理解しているとは残念ながらとても主張できません。私が試みたことは、私が私なりにルーマンに創造的刺激を得た限りにおいて、ルーマンの理論(と私が信じる)枠組みを使って、英語教育について、何か新しいこと、少しだけ深いことを言おうとしたことだけです。
翻訳の話がでましたのでついでながら一つだけ書いておきますと、俗説の「英語が読めれば世界中の情報を手に入れることができる」というのは間違いであるということを今回も強く感じました。私が見た限りでは、ルーマンの受容は英語圏より日本語圏の方がはるかに進んでいるようです(同じことはハイデガーでも言えると思います)。日本のルーマン研究者も何人か「後書き」などで、若い研究者が外国語として英語しか使わない・学ばないことを憂いていましたが、私もその憂いを共有します。私のドイツ語は上述のように、はなはだ中途半端なものですが、それでも多少は学んだわけですから、少なくともドイツ語原典を読もうとすることだけはできます。でもフランス語はまったく勉強しなかったので(これは後悔しています)、フランス語で書かれた文献を日本語訳で読んで、興味をそそられても(例えばメルロ=ポンティ、レヴィナス、ラカンなど)、翻訳を通じてだけの理解ですから、自分の研究にきちんと取り込むことができません。お若い人文・社会系の研究者の卵の方々は、どうぞ英語以外の外国語もきちんと勉強された方がいいと私は思います。
閑話休題。
以下は、田尻先生の実践を、私が関連性理論とルーマンの理論を通じて、どのように読み説いたかについての草稿です。ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』よろしく、桁番号システムをとって、より多い桁数の番号で、それより少ない桁数の命題をより詳しく説明しようとしていますが、それも表面だけの真似に終わっただけかもしれません。
ご興味があれば、以下、お読みください。
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